ござるの日常
第6話 ~ござる道~
2年生のときとあまり変わらないホームルームが終わり1時限目、数学。
前と変わらず話を耳から通して耳から出す。
ノートは適当に取り50分はあっという間に過ぎ去った。
2時限目、英語。
そう、あの堀田先生の授業だ。
面倒、以外他ない。
今まで僕が社長という地位を獲得して以来、堀田先生は僕をターゲットにするのをやめた。
僕をターゲットにするのをやめただけで他の人にその刃は向いたのだ。例えば、寺野。まぁ怒られるようなことをする時もあるが、根は真面目だ。だからそこまで強く当たらなくてもいい気がするのだが。堀田先生だから仕方ない。
そして、もう1人。
始業のチャイムが鳴る。
憂鬱。
そのフレーズが今この状況に最も相応しいものだろう。
少し遅れて、堀田先生が3年4組に入る。
「Please stand up.(立ってください)」
みんな一斉に立ち、
「Good morning everyone.(皆さんおはようございます)」
みんな嫌そうに
「「「Good morning Ms Hotta.(堀田先生おはようございます)」」」
「あまり元気がないようですね。
One more time please?(もう一度)」
そこでやらかした人が1人。
「「「Good morning Ms Hotta.(でござる)」」」
多分、始めも言っていたのだろうが“ござるの人”も声を小さくして言ったから聞こえなかったのだろう。
だけどみんな少し大きな声で言い、さらに追い討ちをかけるようにみんなの声が急になくなり歯止めが効かずに『でござる』を言ってしまったのだろう。
当然、堀田先生の逆鱗に触れて。
「誰ですか?『ござる』って言った人は?」
みんなの視線が1人に集まる。
このクラスで『ござる』なんて言う人はただ1人だからだ。
堀田先生は彼に近づいていく。
彼からしたら鬼がずっとこっちを睨んで今にも金棒を振りかざそうとしているように見えているのだろうか。
僕だったらそう見える。それ以上かも。
「また、あなたですか。2年生の時も注意しましたよね。」
「その、すみませんでした(ござる)。」
“ござる”の部分を口パクで言っていたが当然、鬼が凝視しているんだからすぐにバレて、
「ふざけてますよね。」
「ふざけてないです。」
今度は頭で唱えたのだろうか?
「じゃあなんで『でござる』なんて言ったのですか?」
「その、つい口癖で。」
「『ござる』が口癖って、苦しい言い訳ね。」
「ほ、本当なんです。」
三佳月は何故か、『ござる道』という何言っているのか理解不能な宗教団体のようなものを崇めている。
はっきり言って頭おかしいのだろうが、中二病がエスカレートしているのだろうと思ったが、三佳月はどうしても『ござる道』を辞めるつもりはないらしい。その信念はどこから出てくるのかは謎だ。
初めは全然普通だった三佳月が信じられない。
確か、三佳月がこんな口調になったのはいつからだっけ?
「信じられません。金輪際、その『ござる』っていうのをやめなさい。」
「それは酷すぎます。先生の前では、絶対に言いませんから。」
「あなた、それでみんなに引かれてるわよ。もう少しまともになりなさい。」
三佳月に矢が刺さったようだった。
表情が固まっている、そんなとでも言いたげな表情をして。
「わ、わかりました。」
「よろしい。」
そう言って堀田先生は教卓に戻る。
やっと尋問が終わったようだった。
そして堀田先生は言った。
「Open your textbook page three.(教科書の3ページを開けてください)」
2時限目が終わり、休み時間。
三佳月が僕のところへ来た。
「鈴木殿、任務は完了でござる!」
「えっ、堀田先生が2度と言うなって言ってたのに。」
「そんなものを守る義理なんてないでござる!」
「それに『任務完了』って何?」
「任務は《うざい先生から生還せよ》でござる。」
たしかに完了はしている。
「じゃあ鈴木殿、報酬のノート見せてくれでござる。」
「まぁ、いいけど。」
僕は英語のノートを三佳月に渡す。
「感謝するでござる。」
そう言って、三佳月はノートを受け取った。
台本:次回予告
軽快なBGM
鈴木:さーて、次回の『陰キャの日常』は?
寺野:寺野です。鈴木と俺の友情に新たな変化が!
俺としては昔のように2人で遊びたいのになー
さて次回は、『第6話 ~格差~』の一本です。
鈴木:次回もまた読んでくださいねー。
ジャンケン■■■■■■■■■■■■■■■■
読んで頂きありがとうございました。




