春休みも日常
第82話 ~完全燃焼~
ダラダラ過ごしていると時というのはあっという間に過ぎ去ってしまう。
そんな経験誰だってあると思う。
明日から頑張る。
その言い訳で結局長期休み前日に急いで宿題をする。
生憎、そんな状況には陥ったことはないが、ダラダラ過ごして気づいたら次の日になっていたなんてことはある。
それが、いまだ。
春休みが終わるまで後何日だろうか?
それよりも、明日は僕の父親の49日だ。
49日というのは、故人が亡くなってから三途の川を渡り妻の重さを測るなどのことを死後の世界45日かけて行うらしい。
これは仏教の教えなのだそうだが、そんなことどうでもよかった。
遺骨などは屋敷の社長室に大切に保管されている。
45日経てばその後はお墓で眠るらしい。
そして遺影は、社長室の壁に飾られている。
1代で築き上げた会社がもう誰かの手によって渡ってしまった。
それが身内である僕でもこの会社の成長を最後まで見届けて欲しかった。
だって、この会社は裏切り者がいたから。
僕が全て対処したわけじゃないし樹原さんや橘さんだって会社のために尽くしてくれた。
もちろん、僕はまだ子供で社会のことなんて知るわけがない。
それでも今、僕はちゃんと社長として模範通りなのか。父親の仕事ぶりなんてものは一切見たこともないし、この会社がどんなものなのかも実際あまりわかっていない。
やっぱり間違っている気がする。
それでも無情に時は進み今日は美智香和中学校に行く日だ。
それは何故か、春休みでも文芸部があるからだ。
「行ってきます。」
「はい。いってらっしゃい。」
宮條さんにいつも通り見送ってもらい本校舎には行かず旧校舎に向かっていく。
相変わらず旧校舎は隣の新校舎とは違う木造建築なので異様に目立つ。
旧校舎の扉は開いていて既に中に誰かがいるようだ。
旧校舎を歩き三階の図書室まで行くと、話し声が聞こえて来る。
図書室を除くと僕以外全員揃っているようだ。
なんだか遅刻したみたいだけれど多分まだ遅刻していないはずだし、少しくらい遅れたって問題ないはずだ。
僕は、堂々と図書室の中に入る。
すると、
「アハハ!部長がビリだ。」
そう言ったのは梓川 妹。
だけどもう先輩はいないから梓川 妹は梓川に昇進だ。
「お、おはよう。」
みんな朝からテンションが高いがこの後読書会しようと思ってるのにこのテンションで本は読めるのか?
「「おはようございます!」」
信じるしかないか。
戸田先生は疲れた表情でカウンターに突っ伏している。
多分、この人たちにやられたのだろう。
何をどんなふうにやられたのかは分からないが。
僕は鞄を適当に置き、椅子に座る。
それでも喋っている部員を抑えるにはどうすればいいのか。
•••どうするのだろう?
「し、静かに!」
ちょっと大きな声で言ってみた。
『–––––––』
反応なし。
じゃあ強行手段。
『ドンッ』
みんな会話を止めてどちらを見る。
机を叩く。それはどの教師も長い教師人生の中で一度くらいはするであろう行為。
そしてその威力は絶大だ。
「ちょっとうるさいです。」
ここで笑顔を使うことで、キレていることをさらに強調させる。
するとみんな縮こまり、突っ伏していた先生も起き上がる。
っていうか寝ていたようだ。
あんなにもうるさかったのによく寝れるな。
そんなことよりも、今日やることを言わなきゃ。
「じゃあ、今日は読書会します。」
僕がそう言い部員は持参した本や図書室にある本を取り出した。
「じゃあ1時間ぐらい読んで感想を言いあいましょう。じゃあ•••」
『バンッ!』
図書室の扉が勢いよく開いた。
そして、その扉を開けたのは先輩だった。
「はぁ、はぁ、うかった。」
「はい?」
「受かったの!」
「「「えっーーーーー!」」」
戸田先生、梓川 妹、僕がそんなはずないと驚愕表情をしていた。
「梓川さん、ほんと?」
「えぇほんとですよ。」
「そんなごめんなさい、あなたにキツイ言葉も言ってしまって。」
どうやらそもそもの学力ではダメだったらしい。
だがら最上さんに頼んだのか。
「お姉ちゃんすごい!でも私が田鶴川に行けるかどうか。」
「最上さんに教えて貰えば1発よ!」
「最上さん?」
「どうして、余計なことばっかり言うのですか?来てもらうのもタダじゃないんですけど。」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。」
「財政難に陥ったら先輩の所為ですからね。」
「私は自由人なの。」
「あぁ、そうですか。それと先輩おめでとうございます。」
「あら、礼儀正しいのね。」
「一応です。で、先輩それだけですか?」
「そんなわけないじゃん。1日部長として今日も元気にやってこー!」
「「おっー!」」
どうして僕だとこんなにまとまらないのか?
素質かな?
ちょっと泣いていいのか?
「鈴木くん。今日は何をする予定だったの?」
「•••読書会ですけど。」
「そっかー。じゃあみんなでカラオケに行こうー!」
「「「イェーイー‼︎」」」
「ちょっと待ってください!どうして、部活が先輩の合格祝いなんですか!それにみんなも今日はなんか変なんでけど。」
「そんなの知らないわよ。」
「そうよ!鈴木。堅いこと言わない。」
「僕が変なんですか?僕がですか?先生!なんとか言ってください。」
「えっ、まぁいいんじゃない。私、反省してます。」
戸田先生は受からないとずっと言っていたから罪悪感があるのだろう。
だからって。
それじゃあみんなで行こう!
先輩の歌唱力はなかなかなもので梓川 妹は個性的だった。決して下手というわけではない。決して下手ではない。大事なことは二回言わないといけないというのはお約束だ。
その他部員でも五十嵐くんが上手だったり。
僕は休憩している先輩に話しかけた。
「そういえば先輩。矢田先輩と佐藤先輩はどうしたのですか?」
「えっーと、佐藤くんは美智香和高等学校に行って、矢田さんは外国に行っちゃった。確かドイツとか?」
「えっ、そうなんですか?矢田さんが?」
「そうなの。だから連絡とか取りづらくて今はどうなってるかよくわからないわ。」
「へぇー。」
知らないところで世の中は動いているのは常識だ。
だけどいつのまにかウザくない先輩が海外に行ったというのは少し寂しい気がする。
「なんでそんなこと聞くの?」
「まぁ、気になって。」
「なんでよー?」
「逆にそれ以外の理由ってあります?」
「確かに、そうね。」
気がづいたら夕方になっていた。
別にダラダラしていたわけじゃないんだけど。
あぁ、そうか。今楽しかったんだ。
おひさー!
このフレーズで自分に対するイメージが壊れた方へ。
お久しぶりです。
1週間のはずが数日伸びました。
予定はちゃんと確認しないといけないことが学べました。
次回は、大切な日です。
それでは読んで頂きありがとうございました。