認める日常
第81話 ~犯人~
僕だけが犯人探しをしていた訳じゃない。
セキュリティー会社に樹原さん自身また副社長である橘さんなど沢山の人がこの事件の犯人を探していた。
そして、誰もが行き着いた人物こそが、湯浅 結衣だったのだ。
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「君たち、ちょっといいかな?」
橘はトボトボと出て行く受付嬢2人、智代と紗綾に話しかけた。
「はい、なんでしょうか?」
そのうちの智代が橘に話しかけた。
「君たちは総務課に行ってもらう。そこでちょっとやってほしいことがあるんだ。」
受付嬢は受け入れるしかなかった。
何故ならクビがかかっているから。
橘こ権力は絶大だ。社長が人事部に任せると言ってもその中でどうなるなんて若い社長である鈴木 稜駿が知る筈ない。
つまり、社長の次に権力がある橘がこの2人の運命を握っているということだ。
その中で1つ道を示した。
それが、
「君たちはスパイだ。」
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樹原は電話をかけた。
相手はセキュリティー会社のセキュリクター。
「もしもし」
「はい、セキュリクターです。どのようなご用件でしょうか。」
「担当の原田さんと話したいのですが。」
「すみません、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」
「はい、樹原 敦です。」
「はい、少々お待ち下さい。」
そして、保留音がその電話から流れ出した。
しばらくすると、樹原が聞き慣れた声が聞こえた。
「お待たせしました、原田です。」
「いえ、それで特定できましたか?」
「はい。犯人はなんらかのウィルスソフトを使ったと考えられます。その痕跡が残っています。
またそのウィルスでロックを解除して株を持ち出したようです。
その株は闇市のシークレットデバイスで裁かれて海外へ行ったようです。そこからは辿れませんでしたが、ウィルスソフトがダウンロードされたのはパソコン型番CO-37564です。」
「すみません、もう一度型番を言ってもらっていいですか?」
樹原はすぐそばにあったコピー用紙とペンを手に取る。
「C.O-3.7.5.6.4です。」
樹原はそれを書き留めると、
「ありがとうございます。また何かあれば連絡してください。」
「わかりました。こちらは引き続き海外でのルート探索をします。」
樹原はすぐに動き始めた。
このパソコンは社内で使われているパソコンの型番だと確信したからだ。
樹原は資料室に行った。
その中から社内の経費で購入したであろうパソコンの型番を探した。
膨大な時間がかかるのは承知だった。
それでも調べ上げた結果、総務課のパソコンで現在湯浅 結衣という人物が使っていることまで見つけた。
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結局のところ、1番怪しいのは湯浅さんだ。
1回目の株が盗まれた経路が湯浅さんの使っているパソコンから侵入していたこと。
2回目からの経路は不明だが1回目がこうなると一昨日の3階での行動は今日湯浅さんが盗んだ株のウィルスをダウンロードしていたのだろう。
「湯浅さん。一体どうして会社の株を盗んだのですか?」
「•••私は盗んでいません。」
樹原さんの問いに完全否定をする湯浅さん。
「ですが、あなたのパソコンからウィルスがダウンロードされているのですよ。」
「私じゃない誰かがしたんですよ。」
「どうしてそう思うのですか?」
「私がしていないからです。」
「誰かそれを証明してくれる人はいませんか?」
「•••いません。」
「それでは意見が食い違います。どちらかが嘘を言っていることになりますが、本当に違うのですよね。」
「•••はい。」
どう考えても犯人は湯浅さんだと思っているのは、会議室にいる全員だ。
湯浅さんが犯人じゃないと思っている人はこの会議室はいない。
そして、湯浅さんの否定で静まる会議室。
会社の重役も現在この会議室に集まっているが誰1人話そうとしない。
だけど、この会議室にいる湯浅さん以外は、『早く認めろ』そんなオーラが出ている。
だからなのかわからないが、湯浅さんが深呼吸をして言った。
「•••私がやりました。コンピュータウィルスを私のパソコンからダウンロードして株を盗みました。」
「やっと認めてくれましたか。では、盗んだ株はどうしたのですか?」
「全部売り払いました。」
「そうですか。湯浅さんあなたがこの会社に出した損害はクビだけじゃありません。賠償責任もあるかもしれません。それでも正直に言ってくれたことに免じて出来るだけ賠償額は減らしたいと思います。
わかりましたか。」
「•••はい、わかりました。」
「それでは、暫く休暇を取ってください。その間に色々とこちらで手続きをしておきますので。」
湯浅さんはその場に立ち上がり、僕たちがいる席を見る。そして、
「本当にすみませんでした。」
頭を下げて謝った。
そのあと、やはり株の行き着いた場所は特定できていないが、株が盗まれる被害はなくなった。
これで一件落着だ。
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『カタカタカタカタカタカタ』
藤間 元太はコンピュータウィルスを作成している。
ゲームは終わってなんかいない。
まだまだこれからなのだ。
待ってろよ。鈴木 稜駿。
そして、物語もまだまだ終わらない。
たまにこの小説を見返しているのですが、確か校外学習編のどこかの後書きで中盤の中盤とか言っていました。
だとしたら今のこのあたりは中盤の終盤なのですが、全然そんなことありません。
まだ中盤です。終盤がseason3あたりだとこの章の初めの後書きに書いており全然終盤はまだまだなのです。
あれが中盤の序盤みいな。
何がどうなっている変わらないという方。
終わりはまだまだだということです。
それでは読んで頂きありがとうございました。




