見学の日常
第78話 ~社会見学~
僕はとりあえずこの会社を一階から見回すことにした。
勿論、容疑者探しのためだ。
会議室からは殆どの人が退出して、残るは僕と宮條さんだけになった。
「あのー、これからどうしますか?」
宮條さんが2人になったことですることが無くなりあたふたしている。
「それなら、この会社の案内をしてもらえませんか?屋敷を案内してもらったときのように。」
宮條さんは少し俯いて、
「その、私も本社に来ることは滅多になくていつもあなたのお母様に連れられて来ていたので私もよくわからないのです。」
「そ、そうなんですか。」
「すみません。」
宮條さんは頭を下げた。
「別に大丈夫ですよ。適当に一階からフラフラするんで。」
このビルは高いうえに広い。
だが僕は社長だ。
立入禁止なんてところがあったとしても僕なら大丈夫だろう。
「ですが、私はこれからここでお母様と業務連絡をしなくてはならなくてついていくことができないのですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、もし何かあれば電話してください。」
僕はポケットからスマホを取り出す。
「わかりました。それでは行ってらっしゃいませ。」
「はい。」
僕は会議室を出てエレベーターに乗り込んだ。
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稜駿がエレベーターに乗り込みすぐに扉が閉まった。
そのあと数分間、宮條は稜駿が座っていた席に腰掛け専務取締役が来るのを待った。
専務取締役が来た時、宮條は立ち上がった。
何故なら専務取締役は•••
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『一階です』
機械的なその声とともにエレベーターの扉が開く。
1階は2階と吹き抜けで、2階はカフェなどの社員の休憩スペースになっている。
そして、1階はほぼ何もない。
鈴の音イグディスと大きく書かれた壁の下に受付嬢2人が何か作業をしている。
その近くには座席がいくつかありここで人を待たせるのだろう。
そしてその奥に僕のいるエレベーターホールだ。
そしてそのさらに奥には階段がある。
これを上るのはかなり苦労しそうだ。
それ以外に目立ったものはなくスタスタと歩く社員がエレベーターホールに来る。
そして、その社員は何気なく僕が降りたエレベーターに乗り込みボタンを押して扉が閉まった。
あれ?
僕が想像していたのと違う。
ここは、あの社員が『えっなんでここに社長が•••』的になるんじゃないかと思ったが違った。
いや、別に期待していた訳じゃない。寧ろスルーされてよかった。そう、もうウンザリした。社長という言葉が出るとみんな驚き寄ってくる。
マジでそんなのあり得ない。
学校がその良い例だろう。
僕が社長だと分かるとみんな態度をガラッと変えて寄ってたかる。
そして、堀田先生の依怙贔屓。
もし僕が社長になってなかったら今僕は数人の友達とで穏やかに暮らしていたのだろう。
この差は一体なんなのか。
その疑問が一瞬でも抜けたことはなかった。
次に2階に行ってみた。
2階は全面、社員の休憩スペースでここには女性社員が多い。
みんなノートパソコンで作業しながら飲み食いしている。
つまり、ここでも仕事をして良いのだろう。
なんというか思ったより堅苦しくない会社だった。毎日毎日、家畜のように扱われる社畜•••とか想像していたのは昔のことだ。
ここでも僕が目立つことは•••あった。
とある女性社員が同僚らしき人と話している声が聞こえた。
「ねぇ、どうしてここに子供がいるのよ?」
「多分誰かの子供だって。」
「誰のよ?」
「知らないわよ。近くにいるあの人じゃない?」
「でも、わざわざ連れてこなくて良くない?だってあの子背伸びした小学生に見えるけど。」
「確かにそうねぇー。」
お前らの目は節穴か!
どう見ても中学生だろ。
ってかなんで相手に聞こえるように話すんだよ。
陰口なら陰口らしく相手のいないところで言うのが礼儀じゃないのか?
って、何言ってんだろ。そもそも陰口に礼儀など存在する訳ない。
僕はもうこのフロアには居たくなくなったので、エレベーターで次の階に行った。
『•••階です』
機械的な声が階数を言えていなかった。故障だろうか。
3階。ここは何をする場所なのかわからない。
3階のエレベーターホールから人気がなくなんだが放置されているみたいだ。
何故だろうか、美智香和中学校の旧校舎を思い出す。
こういうところには行かない方がいい、と何度もヤバイ体験をしてきた自分の危機センサーが反応している。
だが、
『ガシャン』『ガシャン』
いきなり電気が消えた。
どういうことだ!
するとその直後放送が流れた。
『現在、前に告知した電気系統のチェックのため一時的に全てのフロアの電気をオフにしています。復旧するまで少々お待ち下さい。』
そこで放送が終わった。
少々って言ってたからすぐに復旧するはずだ。
だからここで待っておこう。
僕はスマホのライト機能を使って周りを照らした。
やっぱり特に何もない。
と思っていたが、
『カタカタカタカタカタカタ』
エレベーターホールの廊下の先からキーボードを高速で叩いている音が聞こえた。
今って停電でコンピュータって使えないんじゃなかったのか?
ノートパソコンでこんなにカタカタ言う?
どうしよう。
余計なことには首を突っ込まない。だがこれって正直株の横領事件と関係してるんじゃないのか?
だってここは美智香和中学校の旧校舎でもないし、先輩もいない。
僕はビビリすぎだ。
だからと言って前に進める訳じゃない。
だけど、かなり長い時間待っていると思うけどなかなか電気が復旧しない。
あっ、そうだ。階段。
僕はエレベーターホールの奥にある階段は通じる扉を開けたが、
『ガタッ』
は?
誰だよこんなところに段ボールの山を積んだのは?しかも何が入っていたらこんなにも重かなるんだよ。
つまり電気が復旧するまで、暫くは身動きできない。
これ以上待ったところで電気が復旧するかもわからないし、若しかすると別の廊下から外階段に繋がっているかも。こんなおっきなビルに外階段がないと火災の時に全員が真っ黒焦げになっているかもしれない。だから多分外階段があるはずだ。
僕は恐る恐る前に進むことにした。
廊下にはいくつもの扉があって全て鍵がかかっていた。
だが、1つだげ扉が開いている。そしてそこから光が漏れ出している。これは何の光なのか。
僕はそれが何かわかった。
パソコンだ。
何故なら、この扉の近くに行くと
『カタカタ』という音が強くなっているからだ。
ここは今、仕事しているのかも。
僕はゆっくり通り過ぎようとした。
だけど、
『プルルルル、プルルルル』
僕のスマホが音を出した。相手は宮條さんからだ。
どうして今このタイミングなんだよ!
急いで消したが相手に聞こえていない訳ない。
今どうなってるのかわからないが、こんな人気のない場所で停電中なのにパソコンカタカタしていられるのは、かなり怪しい。
僕は口とスマホを押さえて息を潜めた。
数日、スランプに陥っていました。
だけど復帰しました。
以上です。
休日だから多分投稿できると思います。
楽しみにしてくれている方読んでくださりありがとうございました。
因みに次回は、犯人(かまだわかりませんけど怪しい人)との接触です。




