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陰キャの日常  作者: 陰キャ代表
最終章 春休みの日常
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修了式の日常

第73話 ~修了式~


三学期も今日でお終い。春休みを終えれば3年生で受験生だ。

正直、嫌だなとしか思わない。

勉強は難しくなる一方で1年生から3年生の勉強を一気にたった数時間のテストで行く高校が決まる入学試験。

その全てが憂鬱な気分にさせる。

だから今日も憂鬱。

他にも憂鬱になる原因は他にもある。

「おはようございます。」

いつもの宮條さんの声がドアの向こうから聞こえる。

これ自体に憂鬱とは感じないが、今日は特に感じる理由は、

「制服、クリーニングしておきましたので取りに来てください。」

そう、卒業式の日もこんなことされていた。

誰も頼んでいないし。そして、どうせシルクのハンカチ、ポケットティシュが常備されているんだろう。

始業式の時もこんな感じな気がする。

今更、服をシワクチャにしたって怒られて余計に体力を使うだけだから諦めてその服を着る。

食堂へ行くと、いい匂いがした。

この匂い、覚えている。

フレンチトーストの匂いだ。

そして、この後何が出てくるのかは予想がつく。

瓶詰めのキャビアだ。

数週間前にこれと同じもの食べた気がする。


車で送迎してもらい教室へ行った。

今日で2年5組とはさよならだ。

これでもう長い廊下を歩かなくて済むと思うと、少し嬉しい気持ちになったのも束の間、この服のせいでみんなの注目を集めていた。

「やっぱり金持ちのすることは違うなー。」

「あの服新品?」

などの声が聞こえてくる。

やっぱり憂鬱。

その会話、丸聞こえだし。陰口を言うなら聞こえないようにしろよ。

『キーンコーンカーンコーン』

始業時間を知らせるチャイム。なんだかこれも憂鬱と感じる。

もう、全てのものが憂鬱に感じているのだろう。

そして、その始業のチャイムと同時に源先生が教室に入ってきた。

そして、欠席者はいないかと確認すると源先生は口を開いた。

「今日でこのクラスも終わりでまた新しいクラスに変わる。長く感じた人もいるかもしれないし、逆に短く感じた人がいるかもしれない。だけどみんな同じように成長している。だからお礼を言わせて欲しい。今日ここまで成長して次のステップに踏み出せるのはみんなのおかげだ。」

先生がお礼の言葉を述べて、後は学級代表が司会進行して朝の連絡を終えた。


1時限目は修了式、2時限目は学活、そして2年生終了だ。

この1年を振り返ると激動だったことを思い出す。

まずは父親の死。

あれからまだ四十九日も過ぎていないことに驚きだ。

だが、後1週間で四十九日目がくる。

そして、宮條さんという秘書が付き添うことになり、塾にも通い始めた。

いつも宮條さんと最上さんは喧嘩していて馬が合わないのだろう。

その次に来たのは、鬼龍院の復讐。僕が社長になったことで恨みを買ってしまっていた。

実際あれは、鬼龍院の父親の問題のはずだ。

それに続き、校外学習。

あの校外学習は異常だった。騙されて、睡眠薬の混入、ヘリコプターで帰還、その全てがおかしかった。

それも全て成績のため。

異常すぎる。その元凶の緑川先生もおかしい。

結果的に成績は宮條さんに与えられることになり、何がどうなっているのか計画した僕が1番よくわかっていない。

そしてまたおかしなことに巻き込まれた。

僕が小説を書くのをサボったという理由で居残りさせられて、旧校舎に地下があることを発見した。

その後、色々あって旧校舎の掃除をしていると怪しい紙切れを見つけて同じクラスの部長の妹、梓川あずさがわ 美野里みのりと一緒に探検すると謎の空間“全ての狭間”というところに辿り着いた。

そこを探検すると狂気の先生?、輪島が襲い悪魔やらハンドガンで輪島を倒した?

何がどうなっているのかさっぱりわからない。

しかもそのことについては梓川妹も関わっている。

今は僕と先輩しか知らず、梓川妹は謎の記憶喪失で綺麗さっぱりあの日のことを忘れている。

その次も先輩がやらかした。

田鶴川高校に行きたいと先輩が前から思っていたらしいが、生憎学力が田鶴川より低いため何故か僕の専属になった最上さんが勉強を教えていた。

試験を受けて後は合否待ちだがもうすぐ合否が出るだろう。

だがあの勉強はほぼ一夜漬け同然なので受かっているのかどうか心配だ。

そして、迎えた3年生卒業式。最後は先輩を見届けて苦しめられた日々からさよならできた。

そういえば、あのハンカチ返してもらっていない。

だが、今日もシルクのハンカチを持っているのでストックはいくらでもあるみたいだ。


冬が去り、春が訪れる。

父親が亡くなってまだ四十九日も経っていないのに様々な出来事が巡り寄せた。

だけどそれも全部思い出となりたった数十秒の出来事に短縮されている。

実際に体験して感じたものが、今は感じない。

ただ憂鬱だとしか感じない。

そうやって人は成長していくのはわかっているけれども、父親の死というのは忘れたくない。

あの日感じた痛み、苦しみ。

それが全部、『痛かった•苦しかった』に変換されている。

それが何より僕を憂鬱にさせた。


廊下に並び、順に体育館に向かった。

全校生徒が集まる。

だがそこに3年生の枠はなかった。

全体が真ん中へ集まり1年生と3年生の間隔が広がった。

整列して挨拶をすると校長先生の“お話”がきた。

「皆さんは、この1年で何を学びましたか?

その“学び”をしっかりと理解しましたか?

皆さんが培った筈の知識、何処かで抜け落ちていませんか?

テストの時は勉強して習った筈の知識をもう一度学習しています。

それは何故か、人は賢いからです。

どんなことを覚えてもいつかは忘れています。

賢くなりたいと願ってもその願いすらいつか忘れていることでしょう。

ですが、一生忘れられないことだってあると思います。

校長先生も一生忘れ慣れないことがあります。

例えば、先生が小さいことによくやったメンコを返して遊ぶ遊びが未だに忘れられません。

でもその一方で50数歳の頃、先生のお父さんが亡くなった時のことも未だに鮮明に覚えています。

楽しいこと、悲しいこと、その全てを覚えているわけじゃありません。

ただ、記憶に鮮明なものは、自分に何か影響を与えたから記憶に残るのです。

だから人は賢いのです。

先生が子供の頃メンコを返すのが楽しかった。

それは何故?

それは、メンコを返して一緒に遊んだ友達の持っているメンコを貰うことができたからです。そのおかげで先生の趣味はフィギュアのコレクトなのです。」

その時、体育館が少し騒ついた。

「ですが一方で賢くなければ、

先生が子供の頃メンコを返すのが楽しかった。

それは何故?

わかりません。となってしまいます。」

人は必要なものを取捨選択しているのです。

先生のお父さんが亡くなった時に私は決意しました。

お父さんよりも長く生きようと。

その決意は後に思い出した頃、私のお父さんが亡くなったからこうなろうと決めた。と思い出せます。

だから必要か必要でないかわからない知識というのは、取捨選択によって捨てられてしまうのです。

その為勉強の知識は損なわれて、テスト前に復習をしているのです。

ですが皆さんは賢い。

だからこれからはもっと賢くなって取捨選択がちゃんとできる人になってもらいたい。

校長先生の話はこれで終わります。」

長過ぎる話に礼をして、後は特に何もなく終わりを迎えた。


教室に戻り、成績表を渡されてしばらくするとチャイムが鳴った。

これで2年生終了した。






最終章ですよ!

なんてのは嘘です。

一応最終章とありますが、残念ながらまだ続きます。

どういう意味かと言うと2年生が終わりちょうど節目じゃないですか。

この章は春休みなのでまだ2年生とカウントして次章から『season2』に生まれ変わります。

それに第10章と明記するのはちょっと嫌だったので。

まぁseason2でも変わらずストーリーは続いていきます。

エンディングが来るのは多分season3?

そのへんの計画はまだなので多分です。


では次回は下校です。

第1章の続きならば、part IIIですね。(違いますが)


それでは読んで頂きありがとうございました。



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