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陰キャの日常  作者: 陰キャ代表
第6章 続 燃える日常
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会議の日常

第68話 ~違い~


「これで報告は以上です。」

「わかりました。」

『カタカタ』

書記がパソコンに何か打ち込んでいる。

「次に文芸部の報告をお願いします。」

司会の生徒会長神楽坂さんが言う。

定例の部活動活動報告会。

生徒会が中心となり各部活動の部長が会議室で部費の報告だったり活動の報告をしていく会。

月に1度開かれていつも通りの報告をするのだが、

「はい。文芸部では部員の読者への関心を持たせつつ今回はその培ってきた関心を実際に本を書く側として実践してみました。そしてそれを角中文庫のコンクールに応募して自分が現在どのような立場なのかを図る取り組みをしました。」

ただ、『文章を書いてコンクールに提出しました。』という内容を盛りに盛ってここまで進化させた。

これくらいしないといけないのかどうかは分からないが、とにかく報告っぽいことを言っておけばいいのだ。

『カタカタ』

そして、それを生徒会の書記がパソコンに打つ作業。

「では次、野球部の報告をお願いします。」

「野球しました。」

この会が終わったらすぐにグラウンドに出るためなのか既にユニホームを着ている日焼けした男子がそう言う。

『カタカタ』

書記の人も一瞬「えっ、」と言ったがまた打つ作業に戻る。

これで3回目の定例報告会なのだが、報告の内容に差がありすぎるところに問題がある。

特に文化部と運動部では尚更だ。

まぁ野球したというのも報告には変わりがないのだけれど少々違う。気がする。

だがスルーされ別の部活の報告に移った。

「•••以上で定例報告会を終わります。ありがとうございました。」

会長がそう言い今年度最後の定例報告会が終わった。

みんなゾロゾロと会議室から出て行く。

僕も鞄を持って家に帰ろうとした時、

「ちょっといいかな?」

僕は神楽坂さんに呼び止められた。

「ん?」

また問題なのか?

もしかして次は本当にマズイことなんじゃ•••

不安が頭をよぎる中神楽坂さんは、

「ちょっと反省会に付き合ってくれないかな?」

定例報告会で反省会なんて行われたことはなかったと思う。少なくとも僕は参加していなかった。

だが今回は参加しなければならないようだ。


どうやら今年度の反省をするらしい。

と言っても生徒会の反省会だ。

僕が必要な要素は一切ないのだけど何をするのだろうか?

因みに生徒会メンバーは5人で形成されており、会長、副会長、会計、書記、補佐の5人だ。

会長は、神楽坂 桜喜

副会長は、石川いしかわ 飛依ひより

会計は、沢村さわむら たつ

書記が、浅田あさだ かい

補佐が、大海原わたのはら 麗美れみ

この5人が美智香和中学校を回している生徒達だ。

「では、今年度の反省会を行いたいと思います。」

司会は神楽坂さん。

書記は浅田さんでその他の人は、意見を述べる人、因みに僕は一般生徒としての立場で反省会をするらしい。

「今年度では、校則改正の目標は達し得ませんでした。なのでまずはその問題点を上げていこうかなと思います。僕が掲げた宣言は、髪型の自由化です。男子はツーブロック禁止、女子はパーマをかけるのを禁止でした。その他にも禁止されている髪型はありますが代表的なものを自由にするために努力しました。ですがその努力は残念ながら実りませんでした。何故でしょうか?」

「はい。」

そう言って手を挙げたのは、石川さんだった。

「生徒1人1人の意識が低いからだと思います。」

「と言うと?」

「生徒は勝手に私たちが髪型を自由にしてくれるだろう。と期待していると思います。これは、生徒会だけの問題ではなく生徒全員の問題だと思います。生徒の意識が低いと改正したところで今後の見通しが取れていません。例えば、パーマをかけたいと思う女子が数人程度では改正しても数人しかパーマをかけなくて結局のところ意味がないことになっているからです。集団生活をしている以上、生徒個人の意見ではなく生徒全員の不満を解消する問題でなければ理にかなわないと思います。」

「なるほど、意識の低さによるものですか。改正による今後の見通しも意見にはありましたね。」

正直、こんな光景を見るのは教科書の中だけだと思っていた。

意見を言う人がしっかり意見の根拠を述べ、司会がそれを簡単にまとめる。こんなのが現実にあるとは。

「鈴木くんは、どうでしたか?髪型について意識していましたか?」

「いえ、僕は特にツーブロックにはしませんし関係のないこととして意識はしていませんでした。」

「やはりそうですか。では、他に意見がある方。」

次に手を挙げたのは、補佐の大海原さんだった。

「では大海原さんどうぞ。」

「はい、私が思うに、髪型を自由にしたところで結果不良が増えるなどの問題が起こり得るかもしれないからです。禁止されているのは、不良生徒がしそうな髪型です。つまり髪型を自由にして不良生徒が増えたのであれば校則を改正した意味がなくなります。校則改正は学校生活をより良くするためであって不良生徒を増やす目的ではありません。だがら学校生活をより良くする上での校則改正を的確にしなければならないと思います。」

「つまり、校則改正に伴うリスクと学校生活をより良くするための改正だと言うことですね。他に•••」

このような反省会が続き本当に真面目な集団であることを今一度確認した。

生徒会のメンバーは人の役に立ちたいと思っている人が大半だと思う。

特に神楽坂さんはその意思が強い。

僕にはその意思が理解し難いが、考え方の1つなのだから仕方がないことだ。

人の役に立つ、それで得るものは?

と言われればこう答えるだろう、

『なし。』

誰かの役に立ち感謝されても何も嬉しくない。

仕事をしているわけじゃない。対価を得るわけではない。それのどこが良いのだろうか?

そういえば、鈴の音イグディスは慈善活動もしていた気がする。何か見返りがあるわけではないのにする意味がわからない。

だがそこの社長が僕だなんて理解できない。

会社は勝手に誰かが回してくれていればいいのだけれど、そこの社長がそんな思想の持ち主と思われれば会社の株は大暴落間違いなしだな。

そして問題の件は、不満を解消することによるメリットとデメリットまでを計れていないのが今回校則改正に至らなかった原因だと言うことで終結した。


「途中まで一緒に帰ろうよ。」

反省会も終わり、帰り支度をしていたところ神楽坂さんに誘われた。

「うん、いいけど。」

「そう、じゃあちょっと待っててね。」

そう言って机に散乱している資料を整えてのそれを別室に持っていき直す。

それから、鞄に筆記用具やノートなどを詰め込み神楽坂さんの準備は完了。

ゆっくりと僕たちは歩き出した。

「今日は反省会まで付き合ってくれてありがとう。」

「全然大丈夫。すごかったよ。ちゃんと校則を改正できなかったことをみんなで考えて次に生かそうとしているのは尊敬するよ。」

「そ、尊敬って言い過ぎじゃないかな?」

「でも、校則って誰のためにあるんだろう?」

「生徒みんなのためだよ。」

「どうして、校則を変えることがそれほど重要なんだろう。生徒のためにあるのに。」

「それでも不満があるからだよ。ルールを作っても不満があるのなら新たにルールを作るか今あるルールを改正しなきゃダメだと思う。」

「それって誰のために?」

「みんなのため。」

刹那、無言の時間があった。

普通なら僕が何か応えるべきことなのだろうが、応えなかった。

異様な瞬間、僕はその間に思ったことがある。

“僕と神楽坂さんは違いすぎる”

立場、思想、みんなへの関心、その他殆どが僕と神楽坂さんは違う。

なのに何故一緒にいるのだろうか。

一年生の頃は、違うクラスだったが美和中ノートの提出の時に知り合ってよく一緒に提出していただけだが、(今もそうかもしれないが•••)こんなにも違いがあるのにどうして一緒にいるのだろうか?

「どうかした?」

神楽坂さんが、心配そうに僕の顔を覗く。

「大丈夫。ちょっと考え事してて。」

「そう。」

昇降口に着き靴を履き替えると、

「じゃあ僕はこっちだから。」

僕は車が出入りする校門の方を指差す。

「そっか。じゃあまた明日。」

「うん、また明日。」

僕は宮條さんが待つ車へと向かった。




次回は、また未定ではないです。

次回は、地震の初期微動の次に来る波が来ることですね。


それでは読んで頂きありがとうございました。

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