燃える日常
第66話 ~燃えろ!~
「終わらなーい‼︎」
必死に原稿用紙に物語を書いている先輩。
小説の締め切りまであと1週間。
僕はすでに諦めているためゆっくりお茶を飲む。
卒業制作が小説を書き上げることと言っていたような気がするが、まぁ気にしないでおこう。
「お姉ちゃん、頑張って!」
僕の家でも少しずつ小説を書いていたシスコン妹は既に完成している。
僕の家でもお菓子と紅茶を食べていただけの先輩は、400枚以下なので16万字以内なら問題はないのだろうが小説が完成していない。
小説の4分の3は書き終えているらしい。後は4分の1だけなのだが、どうもうまくいかないらしい。
何がうまくいかないのかは謎だ。
「異世界はこうじゃないのよーーー!」
原稿用紙をクシャクシャと丸めて後ろに投げる。
「いてっ!もう、何すんのよ!」
原稿用紙が戸田先生に当たる。
「すみません、ですがそれどころではないんです!」
「ちょっと先輩、この原稿用紙高いの知ってますよね!」
「もう!あなたの財産でなんとかしなさいよ!」
「僕の財産は先輩のポケットマネーではありませんよ!それにお菓子を爆食いして紅茶を爆飲みしてお金がないんです!先輩、太りますよ。」
そういうと、さっきまでカタカタ動いていたシャープペンシルの音がなくなる。
先輩は、スッと席を立ち僕の方に近づいて、
「うぐっ!」
首を絞められた。
「乙女にそれは、NGワードなのよ!」
力強い!
本気だ!本気で殺す気だ!
「うぐ!」
足搔くが歯が立たない。
「鈴木くん。先生どうすることもできないよ。」
戸田先生は味方ではないらしい。
「うっ!くっ!ぐっは!」(見殺しにする気ですか!)
そんな言葉到底通じるはずもなく、
「•••」(死ぬーー!)
チーン、ポン、ポン、ポン、チーン、という葬儀の音が•••聞こえないが、瀕死状態だ。
「はぁー、はぁー。ほんぎでごろずぎだった!」
「何言ってるのかよくわからないわ。あっ小説書かないと!」
首を絞められていた時、他の女子からも軽蔑されていたような気がする。
『太った』は禁句だな。
「ほら確か松雄 修三が言ってたじゃない。『もっと燃えろよ!』って。」
「ただの危ない奴じゃないですか。」
数日後、再び文芸部に顔を出している•••どちらかというと強制的に。
「『いいぞ!いいぞ!そこだっ!ホームラン!』」
「あれっ?野球なんですか。てっきりテニスかと。」
「野球と小説は紙一重なのよ。」
「どこがですか?」
根本から運動系と文化系という大きな違いがある時点で先輩の持論は崩れ去った。
「野球は汗水垂らして、必死に努力する。作家も汗水垂らして、必死に努力する。」
「多分違うと思います。野球は実力ですけど、作家って才能がほとんどなんじゃないですか?」
「そうじゃなくて、あぁーもう!こんなことどうでもいいわ!執筆に専念しなくちゃ!」
あっ、逃げた。
「ここは、こうして!あっ、ここでヒロインのお色気シーン!」
結構、楽しそうだ。
「梓川さん。後1週間もないけれど、本当に書き上げられる?」
心配そうに言う戸田先生。
「はい。大丈夫です!超超短編にして頑張ってます!」
言ってる意味が理解できないが、まぁ放っておこう。
「鈴木くん!お茶お願い!」
「は、はいっ!」
僕はパシリ。
特にやることがなく座っていたら、『あなた、雑用係になりなさい。』なんて言われてこの有り様だ。
そして、お茶というのは僕の家で出した、紅茶のことだ。
随分とお気に召したらしい。
この紅茶だって無料な訳ないのに!あとで請求書を送りつけてみようかな?
「もっ、持ってきました!」
「遅い!一体いつまで待たせるつもりなの!喉がカラカラよ!」
「その、すみません。」
「そのって何?」
「えっと、その、は英語で言うとwellです。その『躊躇い』と言いますか•••」
「一々説明が長いわよ!」
何ですか?これ?
「すみません!」
「もういいわよ!あなたと話していたら時間の無駄だわ!」
あんたが話しかけてきたんじゃないのか!『ありがとう』くらいの会話で済むことが、どうしてあんなにも長々と喋るんだよ!絶対に喉がカラカラなんて嘘だ!
僕は結構押しに弱い気がする。
今までこれのおかげで散々苦労した気がする。
「やっと、やっと完成だわーー!」
分厚なった原稿用紙を持ち上げてみんなに披露する先輩。
自然と部員が手を合わせてパチパチと拍手する。
「お疲れ様。期限ギリギリだね。明日で締め切りだよ。」
戸田先生に原稿用紙を渡し先生がその原稿用紙をクリップに挟みながら言った。
「ところでどんな話なの?お姉ちゃん?」
「これはねー、ライトノベルよ!普通に高校に登校していた男の子が、車にはねられて死亡。すると次に目が覚めた時には何もない草原で近くにはでっかい川があって、目の前には登校していた時に持っていた鞄から教科書が散乱していて何が何だがわからない時、『ポチャン』とあの川から聞こえてきて近くに行ってみると裸で水浴びをしている女の子がいて、•••でオチが•••」
「って言わなくていいです!また次の機会に話してください。」
戸田先生が必死に止めた。
「お姉ちゃん、まだタイトル聞いてないけど。」
「そうだったわね。タイトルは、『異世界行ったら持ち物なし⁉︎〜教科書で世界を救い、ついでに世界も創っちゃえ〜』」
「タイトル長いですね。」
「お黙りなさい!下僕!」
下僕とは僕のことなのだろうか。
完全に女王様気取りじゃないか!腹が立つ!
「まぁ、いいわ。じゃあこれを角中文庫に応募するね。」
「はい!よろしくお願いします!」
「結果は確か5月くらいかな?」
「結構先ですね。でも結果報告にまたここにきたいと思います。」
「楽しみにしているわ。」
戸田先生がそう言う。
「お姉ちゃんと離れ離れになるの嫌だよ。」
シスコン妹がそう言う。正直、気持ち悪い。
「先輩もあと数週間で卒業ですね。」
僕がそう言う。
「そうね。でも安心して、高校に入ってもO Gとして毎日でも来るからね!」
「それは困ります。」
即答で僕が答えた。
「それじゃあ、さようなら。」
今日も1日の終わりが近づいてきた。
あの先輩の本のタイトルどこかで聞いたことありませんか?
どこで聞いたと思うけど、忘れてしまった人は、もしくは全く知らないと言う人は、『陰キャの日常if』の『想像する日常』を参考にしてください。
2章使ってこのためだけに、あんな怪談も踏まえたのかと言うとそれは違います。あれはオマケ程度なのでスルーして真の第5章は第6章で今ある第5章は第4.5章とでも思っておいてください。
(まぁ章の名前は変えませんけど。)
次回は、未定です!
こんなことがあるのかって?
あるのです!
ですが必ず投稿しますので楽しみにしておいてください。
決まったらまたTwitterで報告させて頂きます。
それでは読んで頂きありがとうございました。




