言い訳の日常
第65話 ~誘拐犯?~
とある日のこと。
僕は、使いたくない言い訳を使い先輩を追い払うことが出来た。
「じゃあ、私は今日も車の前で待っているから。」
「すみません先輩。今日は塾なんです。」
「あら、そうなの。鈴木くん塾になんか通っていたの?やめたほうがいいわよ。」
「根本からへし折るの辞めてもらっていいですか。」
「塾に通う意味なんてないわよ。」
「先輩は1番塾に通わなければならないのでは•••ってもう手遅れですね。」
「その言い方、ちょっと腹立たしいわ。」
「そうですか。ですが今日は無理なんで。それじゃあ先輩さようなら。」
「ちょっと、待ちなさいよ。」
僕は手を大きく振り笑顔で先輩から離れた。
今日は運がいい日だ。
先輩という縛りがなくなった。
なんと清々しかろう!
不慣れなスキップで車に行くと、
「お、かえり、なさいませ。」
宮條さんが精神的に死んでいた。
今日は本当に塾がある日。
何があって最上さんが嫌なのかはサッパリわからないが、あからさまに嫌そうな顔、やつれた髪。
本当に最上さんになんの恨みがあるんだ?
「その、大丈夫ですか?」
「大丈夫、だと思いますか?」
「思いませんね。」
「じゃあ今日は病欠ってことにして帰りませんか?」
「それは辞めておいたほうがいいです。」
今は車は停止しているが窓を見ると先輩がジッとこの車を見ている。
「早く行ったほうがいいですね。」
宮條さんにとって最上さんよりも先輩の方が厄介らしい。
幸いにも塾の方向は家とは反対なので嘘とは思われないだろう。
「じゃあ行きますよ。」
「はい。」
徐行して校内から出るといつもとは反対方向の車線を車は走った。
ポツンと佇む一軒家『最上塾』
街の郊外に位置しているこの塾は、権力によって僕専用の塾と化してしまった。
周りが畑しかなくこの時期は何も植えられてなくてただ殺風景な景色が続く。
そこに一軒の家が見えてくる。
それが最上塾。
目の前まで車で送ってもらうが、宮條さんは中には入らない。
「どうぞ、いってらっしゃいませ。」
心のこもっていない挨拶をして僕を送り出す。
「行ってきます。」
僕も適当にそう言い、目の前の扉を開ける。
「やぁ、元気だったかい?」
スラッとした体格で高身長のイケてるメンズことここの塾長の最上 悟さん。これでも35歳だそうだが、全くそうは思わない。
「はい、元気でした。」
「そっか。テスト以来だね。じゃあ早速テストの復習からしていこうか。」
「はい。」
以前は仕切られた個別のスペースがあったところには何もなくダンボールがたくさん乗せられておりホワイトボードがあるところに1つだけ机と椅子が置かれていた。
前回もテストの復習はしたが、もう一度、こんどは些細な部分までしっかり復習&予習をしていると授業の時間の2時間をオーバーしていた。
「で、ここがこうだからこの公式に当てはめると•••」
ホワイトボードで説明を受けている最中、
『バンッ‼︎』
「「⁉︎」」
入口の扉が尋常じゃないくらいのスピードで開いた。
「この、誘拐犯めーーーー!」
この声は宮條さん。
宮條さんは指を最上さんに指していた。
「えっー!な、何の用ですか?」
「何って、もうとっくに授業時間終わっていますよ!何を勝手に授業時間をオーバーしているんですか!それでもあなたは東京大学の出身なんですか!」
東京大学とは日本で1番偏差値が高いとされる大学のことだ。
「えっ、最上さん東京大学出身なんですか!」
「まぁ、はい。」
「えっー!すごい。」
僕が関心していると、
「どこがですか!時間配分もできない東大生がどこにいるんですか!きっとこいつの魂胆は稜駿を誘拐するつもりだったのよ!」
いつになく感情的な宮條さん。
「落ち着いてください。誘拐なんてするわけないじゃないですか。ちょっと授業が長引いただけですよ。」
「ちょっとですか?30分ってちょっとなのですか?」
たしかに時計は8時(20時)を過ぎていた。
「確かにそうですけど、あと少しでわかる問題があるんです。」
「そうですか。じゃあここで待たせてもらいます。」
そう言って宮條さんは僕の隣から離れない。
困ったな。という表情をしている最上さん。
だが授業は再開して10分もしないうちに切り上げて授業は終了した。
「今日はよく頑張ったね鈴木くん。」
「えっ、はい。ありがとうございました。」
「そんな社交辞令はどうでもいいですから早く行きますよ!」
そう言われて宮條さんは僕の腕を引っ張り強制的に車に乗せられた。
宮條さんが最上さんに対する態度が何故ああなのか全く理解できない。
考えられる要因は、生理的に受け付けない。
過去に何かあった。そもそも塾が嫌い。
ん?
なんで宮條さんは最上さんが東京大学卒業って知っているんだ?
これは、何かの因縁なのだろうか?
もしくは最上さんについて調べたのか?
僕はスマホを取り出し『最上塾』を検索してみる。
だが、最上塾という塾は存在していなかった。
ホームページから塾長の情報を集めたと思ったが、最上塾という塾すらない。つまり可能性は1つ過去に何かがあったって事で間違い無いのだろう。
だがどんな過去なんだ?
最上さんを毛嫌いする時点で何か相当なことが起こったのだろうか?
調べる材料が無く何もすることができないが、確実に過去の因縁が原因なのだろう。
この2人の関係は、ちょっとずつわかっていく感じですかね?
たまにこうした回がありちょっとずつ前進していくような後退していくような。
ですが真実は•••
次回は再び文芸部です。
小説ラストスパートです!(作中のコンクールのことですよ!この本はまだまだ続くと思います。)
それでは読んで頂きありがとうございました。




