見つける日常
第50話 ~暗号~
なんでこんなことになったのか。
誰かの好奇心のお陰で今、旧校舎の掃除をさせられている。
昇降口から始めて、今日は2階の職員室まで掃除をしなければならない。そして残った分は明日またするのだとか。
「先輩のおかげで掃除することができました。本当にありがとうございます!」
僕は嫌味を込めてそう言うが、
「ありがとう。鈴木くん。そんなに褒めてもらえるなんて光栄だわ。」
「どこをどう取ったら褒めてることになるんですか。」
「言葉の意味そのままよ。」
「心情を読み取ったらどうですか?」
「人の心情なんて読み取ったところで状況は変わらないわ。」
「だいぶ変わると思うのは僕だけですか。」
「今は、そうね。」
「もし、テストの問題で心情を読み取りなさいっていう問題が出されたらどうするんですか。」
「もちろん、答えるわよ。マス目に『本文に書いていないことを聞くなー!』って書くわよ。」
「先輩、よくそれで受験生になりましたね。もう手遅れですよ。」
「だからこうして文芸部にいるんじゃない。趣味じゃなくて、克服しようとしてわざわざ文系にいるんだから。」
「前に言ってた、シャーロック•ハウシーズはどうしたんですか。」
「適当に文字を並べて言った。」
「先輩は、あれを適当というんですか?」
「3年間も文芸部に所属しているのに成長しない訳ないじゃない。昔よりは成長したわよ。」
「昔の先輩がどんなに悲惨だったのか気になりますよ。」
「そんなことより手を動かして。あとはここだけなんだから。」
「だって、職員室って広いじゃないですか。嫌ですよ。最悪です。本当に先輩最低です。」
「ちょっと鈴木くん今何を言ったのかな?」
「だって先輩、心情を読み取らないのであれば本心を言えばわかってくれるかなー。って。ごめんなさい。」
先輩は話しているうちに、目を見開いてニコニコ笑顔とは別の笑顔になっていた。
「な、なんですか?」
「私が今考えていることがわかるよね。」
「その、わかりたくない場合はどうすればいいですか。」
「私が意地でもわからせてあげる。」
先輩は空のバケツを持ってこちらの顔にゆっくり当てる。
「このバケツがもう一度大きく素早く動く前に言うことがあるんじゃない?」
先輩はバケツを大きく持ち出した。
「ご、ごめんない。先輩は心情を読み取らなくていいと思います。」
「それじゃ足りないわ。例えばそうね。小説を書き上げるとか?」
「しょ、小説ちゃんと書きます。」
「よろしい。」
先輩は凶器を床に置いた。
「先輩、早く掃除して帰りたいです。」
「それは、私もよ。じゃあ早くして。」
「はい。」
僕たちは黙々と掃除をした。
「先輩!勝手に先生の引き出しを開けたりしたらダメですよ。」
「いいじゃない。どうせもうやめちゃった人達の机なんだから。」
僕だけが黙々と掃除をした。
そして、やっと半分というところで先輩が、
「この箱、何かな?」
先輩が僕のところへ持ってきたのは、謎の木箱でコピー用紙のA3ほどの大きさの木箱で3桁のダイヤル式の南京錠で閉ざされており中身がわからない。
「先輩、こういうのは見ない方がいいんですよ。だって南京錠をかけるくらいのものが中にあるんだと思いますし。」
「鈴木くんは好奇心がないなー。南京錠があるから開けたくなるんだよ。」
「まぁでも番号がわかりませんしね。0の桁がないから880通りの中からたった1通りを当てるなんて無謀ですね。諦めて早く掃除しましょう。」
「やる訳ないじゃない。特に先生に監視されている訳じゃないんだから。って思うと今まで真面目にやってきた私たちがバカね。」
「多分やらない方がバカだと思います。」
「じゃあ、カギを開けるヒントみたいなものを探しましょ。」
「先輩、掃除はどうしたのですか。」
先輩は掃除そっちのけでダイヤルの番号探しに勤しんでいる。
「先輩、頑張るなら掃除にしてください。」
「いやよ。つまらない事より楽しい方がいいじゃない。」
「それは、ダメなやつの考え方ですよ。」
「鈴木くんなにか言った?」
「いえ。特に。」
僕は先輩を放牧させて掃除に勤しんだ。
「あった!」
「何がですか?」
「いや、『輪島』って先生の机の引き出しに、意味深な3桁の数字があったわよ。」
「先輩今すぐにでもそれを焼却しても良いですか?」
「何言ってるのよ。ちょっと木箱を貸しなさいよ。」
僕は先輩に木箱を渡す。
「3、7、5」
すると、『ガチャ』と南京錠から音がしてカギが開いた。
先輩は木箱を開けた。
すると、
「ん?なにこれ?暗号?」
中には
『⇨6、⇦4
FF c e 嬰c f 変c g』
「何ですかこれ?」
「わからないわよ。でも怪しいのと暗号だというのは確実よ。」
「何ですかこの矢印と訳の分からないアルファベットと漢字は?」
「全くわからないわ。だからこれは、一度持って帰って調べてみるわ。」
「別に調べなくていいんですけど。」
「鈴木くんが掃除してくれたおかげでこんなにも早く終わったよ。ありがとう。」
「先輩なにも、いえいえ、全然大丈夫です。」
「じゃあ帰ろっか。」
「あっ、はい。」
そして、1日目の掃除が終わった
あの暗号は知っている人じゃないと中々わからない暗号だと思います。
特定の大学だとか行っている人ならすぐにわかってしまうような問題です。
ですがこれを読んでいる人にそのような方はいないと思います。
(いたらごめんなさい)
次回はその暗号についてです。
それでは読んで頂きありがとうございました。




