校外学習での日常〜エピローグ〜
第36話 ~最後の課題~
ヘリコプターが駐車場のあたりに着陸し、僕たちや瀬尾、宮條さんも建物の中に入り、最初いたあのホールへと向かった。
「ガチャ」
ホールの扉を開けると、学年主任の緑川先生や、担任の源先生などがいた。
「君たちが1番だよ。おめでとう。」
緑川先生がゆっくり拍手した。
「何が1番なんだよ。別に競ってもいないし。」
寺野がそう言う。
「おや?1人班員ではない人と関係のない人がいますね。」
緑川先生がそう言い困った顔をする。
「関係の無い人とは私のことですか?関係の無いとは言いにくいとは思いますがね。」
宮條さんは、少し苛立っているようだ。
「この校外学習には関係はありませんよ。親だろうが、何だろうが、あなたには関係性が無い。」
「•••」
緑川先生の反論に宮條さんは黙り込んだ。
「それに問題が山ほどありますよ。まずは、瀬尾くん。君です。」
緑川先生が指を指し言い瀬尾は疑問の顔を浮かべる。
「君たちは、気づいていないのか?なら説明しなくてはならないのか。
まずは、あの噂を知っているか?」
噂。
それは、1番に着いた班には科目の1つだけ五段階評価で五が付く特典のこと。
「はい。知っています。それは、噂に過ぎません。そんなことをして本当に教育委員会が許しているはずがありません。」
寺野がそう言うが、緑川先生が呆れた顔をして、
「わからないのか?臨機応変、協調性、それはどの科目でも測りきれないものだ。じゃあどうやって測り、どう評価するか。その解決策がこの校外学習だよ。班を強制的に組むのではなく、自らの力もしくは他人の力で班を組み、自ら選抜した班はうまく協力することができ、逆に他人の力で仕方なく入った班は、協力することができず、バラバラになってしまう。そこを測る。また五段階評価のうち1教科に5が付く。と噂すれば、気ままにしていたはずの校外学習がみんな必死になって1番を取るはずだ。その臨機応変さを測り1番に着いたものは、その評価を別の教科で補うだけのことだ。それの何が問題がある?」
こんなの筋が通るはずがないのに、抗えない。
「そこで瀬尾。君が問題だと言ったな。五段階評価での評価は、1班だけだ。だが、寺野の班ではない君が、同時にゴールしたとなると、またおかしなことになる。」
緑川先生が説明を終え、殆どの人が瀬尾を見た。だが、また緑川先生が話し出した。
「だから、このおかしな状況を打開する方法がある。それは、単なる話し合いだ。
どちらの班が、どのようにして決着をつけるのか。又は潰されるのか。それは、まだわからない。
瀬尾は確か柳が班長だったな。
だったら、寺野と柳が話し合ってくれ。
全ては君たちに委ねるよ。」
緑川先生がそう言うと寺野は、
「あの。緑川先生。僕たちの班は五段階評価•••」
「やります。」
寺野が、拒否しようとした時、突然柳が現れて、そう言った。
「なんで、柳がここに!」
寺野が困惑したように言った。
「あら。失礼。つい先程、到着したばかりでしたが話を聞いて、五段階評価で五が貰えるチャンスがあるなんて、取りに行かないわけないでしょ。」
緑川先生は少し驚いていたが、平然を装い、
「わかった。では後日また学校の会議室の方で審議を行ってもらう。では、皆を待つぞ。」
緑川先生は話を切ろうとしたが、
「ちょっと待ってください。自分は五段階評価は必要ありません。」
寺野がそう言うが、
「拒否することはできない。なぜならこれは、公平をきたしているからだ。
犯罪を犯した犯罪者が、裁判が行われるのは、警察もしくは、被害者が訴訟するからだ。訴訟なんてしなければ、裁判なんて執り行われないが、犯罪者が訴訟を拒否することは出来ない。
つまり君は今、犯罪者の立場なんだよ。
これを拒否することは出来ない。なぜなら公平であるから。
そうじゃないか?」
そして、寺野は何も反論できずに、ただ時間だけが過ぎた。
「それでは、これをもって校外学習を終了とする。続いて実行委員の神楽坂から話をしてもらう。」
全ての班が揃い、ホールで先生の話を聞いている。
「今回の校外学習は楽しかったですか?もしくは辛かったですか?まぁ人それぞれですね。
最後のお楽しみは、延期になってしまいましたが、実りある校外学習になったかと思います。
それでは話を終わります。」
神楽坂さんはこのことを全て知っていたのだろうか?
わからないことだらけで終えたこの校外学習だが、まだ続くなんて思いもしなかった。
結局、寺野はこの校外学習を潰しかけたができなかった。
あの時言った寺野の作戦は、1番最初に着いた班に五段階評価の特典が付けられることを想定しており、僕たちではない1番に着いた班がいたとして、僕たちが先生に賄賂を払うと言うものだった。
馬鹿な作戦だとは思ったが、手伝うことにした僕は、もし巨額の金を支払えと要求されても、対応できる僕が必要だったと言うことだ。
だが、僕たちが1番に着き、瀬尾が一緒に来たという問題から実行には移せなかった。
また面倒なことになる予感がした。
変わるのはこんなにもたいへんだというのだろうか?
「バスが来たぞー。」
先生がそう言い生徒はバスに乗った。
校外学習は終わったけどまだ続く校外学習。
なんと面倒なことなんでしょうか。
それに、殆どの人が人格が怪しくなってきています。
仕様ですので、ご安心下さい。
お金の力は偉大ですね。
次回は、休日です。
屋敷にないものを補充するというだけの話です。
たまには、のんびり日常を過ごしてもバチは当たりませんよね。
最後に今回読んでくれてありがとうございました。




