再構築した日常
第20話 ~偽りの日常~
つい先日まで、陰で陽の光なんて一切当たらない場所にいた自分が、何故か今、当たりたくもない陽の光に照らされている。
「すごいねー鈴木さん。まさか社長とはね。」
三佳月さんが、遠い目で僕を見ている。
周りには、普段なら居ない人だかりが僕の周りで出来ており、チラチラとたまに僕を見ている。
そんなところから、縮こまって話しかけてくる、三佳月さん。
「うん。なんかもう色々大変。」
父親が死んだというショックも多いが、何よりこの変化にショックしている。
「あー我の手から離れないでくれー友よー‼︎」
厨二病にでも目覚めたのか、三佳月さんは手を僕の方に差し出し、狭い空間の中、上手に恥ずかしい台詞を出す。
「なんか、いつもと違うね。」
僕が引き気味でそう言う。
「鈴木さんもいつもと違うし、“我”もいつもと変えてみたのだよ。」
そう言って手を挙げて決めのポーズ•••
正直に言って、この人と話すのが今とても恥ずかしい。
「大丈夫だよ。すぐにこういうのは冷めるものだから。」
僕は、三佳月さんの肩に手を置き、憐れみの顔を浮かべる。
「どうしたの、そんな顔で“我”を見て」
はぁー、もう嫌なんですけど。
数日過ごしたが、この後も、ほとぼりが冷めなかった。
こんなことを言う奴もいた。
「一緒に帰ろ!」
と顔の知らない誰かから言われた。
お前誰だよ。
勿論、口にはしないが僕の目は多分嘘をつかなかったと思う。
残念ながら車なので一緒に帰れない。のような言葉を適当に添えて帰った。
そして、これが1番びっくりしたことだが、
靴箱に手紙が入っていた。
中身を確認すると、
《ずっと前から好きでした。私と付き合って!》
そして、端の方に小さな字で、
《嘘だよ。私を一生養ってね。》
建前と本音、どっちも書いたら意味を成さないぞ!
そのゴミ屑は、もっと粉々に粉砕し、クズカゴに入れてやった。
そして、僕はその女子を見るたびに蔑んだ目で見て、その女子を避けた。
お金の力とは?
なんだこの人達は?
本当になんだろうか?
だけど、あの人は違った。
「よー。稜駿くん。社長だって?よかったじゃねーか。」
特に仲良くなかったが、気安く名前で呼ぶふざけた男、寺野。
こういうのはいつもはムカッと来るが今は、逆にホッとして
「そんないいことないよー。毎日大変だし。」
僕は愚痴を寺野にぶつけた。
寺野は少し以外という顔をしていたが、すぐに僕の調子に合わせて、
「マジ?仕事なんてしてないでしょ、何もしなくてもお金手に入るのに。」
「お金があっても、色々あるんだよー。その表面的なものではなく、内面的な問題。」
父親のことについて遠回しに言ったつもりだが、寺野にはわからなかったようで、
「まぁー内面を見つめるって難しいもんだよな。ドンマイ!」
世の中にはドンマイだけで済まないこともある。と教えてやりたい。
堀田先生は、変わった。
最近は、僕をほとんど当てなくなり、ちょっと贔屓してくれている気がする。
GOODです。
放課後。
黒板を見に行く。
《あり》
その文字を見るとうんざりする。
旧校舎に入り、旧図書室の扉を開けると、
既に全員いた。そして、みんな声を揃って
「「「「「「あっ鈴木さん『くん』」」」」」」
「••••••」
揃いも揃ってこっちを見てキョトンとする部員。
「さ、さあみんな揃ったし始めましょう。」
戸田先生が慌てて言い出した。
「さぁみんなこれを見て!」
梓川先輩が言い出した。
僕は、一応部長だが、リーダーは3年の梓川先輩だ。
僕はリーダーシップのかけらもない名ばかりの部長で業務に専念している。
主に部費の会計や計画表の作成、定例の部長会議に参加している。
「これなんだかわかる?」
台車に乗っているそのものは、布で覆われ隠している。
「せーの!」
「バサッ」
梓川先輩が布をめくり中から出てきたのは、原稿用紙だった。
「これはね、ちょーと部費が余ってたので、買いました。」
戸田先生がそう言う。
それは、嘘。
先日、戸田先生と梓川先輩が屋敷に訪ねてきた。
「「お願いします。」」
何をお願いしているのかと言うと、物乞い。
そう。原稿用紙だ。
先輩たちは引退しているが、最後の活動として、春に行われる角中文庫コンクールに参加するために、400字詰原稿用紙4000枚用意してほしい。と。
できるだけみんなには、このことを知られたくないから、お金持ちな部長に頼みにきたそうだ。
原稿用紙は、そんなに高くない。100枚入りで200円もしないだろう。
だが、角中文庫コンクールの原稿用紙は100枚入りで600円程するらしい。
先生は、今月の給料がヤバイらしく、梓川先輩も高校入試の色々な事情でお金がないらしい。
だから最後の砦として、僕の家に訪ねてきた。
断るに断れなく、屋敷の中にあげちゃって帰らそうにも帰らせない。という最悪な展開で2人は年下の僕に頭を下げている。
冷汗が垂れる。
正直、原稿用紙はそんなに高くない。
だが、本当にそれでいいのだろうか。
原稿用紙4000枚くらいで廃部にはならないだろうが、色々と怖い。
このことがバレたら次は先輩たちのことがバレる。
それはもう学校全体で大問題だろう。
しかも先生も加担しているというのも問題だ。
「わかりました。用意します。ですが注意して下さい。このことがバレたら大問題ですから。色々問題がある部活はよく生徒会に狙われていますから。」
僕が、小さな声でそう言う。
そして2人は、声を出さず頷いた。
この瞬間とても神楽坂さんに申し訳ないと思った。
「でこの原稿用紙で、400枚以下の長編小説を書いてもらいます。」
続けて梓川先輩がそう言う。
「そして、これを角中コンクールに出します。」
「「「えっー‼︎」」」
みんな驚いていた。
そりゃあそうだ。あの角中だから。超有名な出版社だから。
「ちなみに、ジャンルは今回はなんでもいいそうです。論説、物語、などなどいっぱいジャンルがあるけれど、私のオススメは物語かな?だって論説って色々調べなくちゃならないからね。」
戸田先生がそうアシストする。
「じゃあそうゆうことで、2ヶ月の間に仕上げて下さい。」
「「「えっ⁉︎」」」
疑問の声が飛び交った。
「ちょっと厳しいかもしれないけど頑張って!」
梓川先輩はサムズアップ(親指を立てた状態のこと。)をして、士気を高めた。
だがみんなはやる気がなさそうだ。
そうして、部活に燃える時が来た!
別に部活には燃えません。
最後あんなことを書いていますが、全然関係ありません。
ちょっと問題が多い部活で、やがてどうなるかは、なんとなく想像がつくと思いますが、そうなります。
次回は、あれです。第1章で出てきましたが、第2章でも再びやってきます。
それでは、今回も読んで頂きありがとうございます。