社長の日常
第15話 ~新しい我が家~
母親と一緒に、車に乗り込みその引っ越し先を目指す。
「ねぇ。」
そう僕が母親に言う。
「何?」
運転しながらなので前を向きながら言ってくる。
「仕事ってコールセンターの仕事じゃなくて鈴の音イグディス?」
そう聞くと、母親は笑い出し、
「そうよ。私は常務取締役だったけど、稜駿が社長になったら私は、専務取締役よ。」
専務取締役えっ?
「専務取締役って既に橘さんがいるじゃん。」
「そうよ。でも代表会議で、今までは副社長っていう役職がなかったけど、稜駿が社長になることで社長の代わりに色々仕事をしてくれるのが橘さん。」
へぇー、橘さんって父親とどういう関係なんだ?
橘さんは20代で父親が39歳。
ちょっと離れていないか?
同僚とかそう言う関係じゃないことはわかるけど、じゃあ後輩か何かなのか?
疑問が膨らんでいく。
そして、車がたどり着いたところは、巷で噂の超お金持ちが住んでいると言われる、この辺りで有名な大豪邸だった。
この辺りは何度も言うが、山が削られてできた土地なので広い。そして、その土地の1/5をこの豪邸の土地らしい。
はじめに大きなメルヘンの門があり
母親が持っていたボタンを押す。
するとその門はゆっくり扉が開く。
そして、ゆっくり車を走らせすぐ側には、駐車場があり、車を止める。既に10台くらい駐車できそうなスペースはもう後2、3台ほどしか入らなそうだった。
そして、さっき来た道を今度は歩いて戻り、門とは反対の方向に歩き出す。
歩いてすぐ目の前に丸い形をした噴水があり、周りを花や低木で囲ってある。
こう言ったものが“優雅”というものなのだろう。
その噴水を越えると今度は、広葉樹が道のように両サイドにあり、それもきっちり手入れされている。
そしてその木々を越えてようやく建物が見えてきた。
近づくにつれ大きくなる建物は白を基調とした、3階建の洋館で、左右対称に作られてなんとも豪華な屋敷だなと思った。
その屋敷の扉を開けると、ワンルームくらいの広さの玄関があり、そこには靴箱や傘立て観葉植物などと言ったものが沢山ある。
そして、もう一枚扉を開けると、
目の前には大階段と呼ばれるものがあり、シャンデリアが
「「「「「ようこそ」」」」」
男性女性の声が混じって聞こえてくるその声は、スーツを着ている人やいかにも調理師と思わせる服を着ている人、農夫の格好をした人(庭師だろう)などの人が10名程の人たちの声だった。
その一斉に言う言葉に僕は動揺し、恥ずかしかった。
だが、母親は動じることなく「はい。もう仕事に戻って」と言う。
その言葉に先ほどまでいた人たちは皆人それぞれどこかへ行く。
「さぁーこっち。」
母親が僕を誘導していく。
目の前の大階段を上り2階の目の前の扉に入る。
その扉の中は、いかにも社長室まさに部屋だった。
広い部屋の中には、商談用の椅子と机の奥にはいかにも社長が使う机が置かれていて壁には、さまざまな表彰状が掛けられていた。
そして、母親が
「この椅子に座って待っててね。」
そう言い部屋を出て行った。
第16話 ~社長就任~
しばらく待っていると、橘さんともう1人若い女の人を母親が連れてきた。
そして、橘さんは商談用の椅子に僕と対面するように座り話し始めた。
「失礼します。それでは、経営、運営権の継承の手続きを行いたいと思います。」
「はい。」
僕がそういうと、橘さんは鞄からクリアファイルとボールペンを僕に差し出し、よく読んでサインするように促した。
僕は、そのクリアファイルの中身を見た。
《経営及び運営権の継承》
のタイトルがあり下には幾多もの項目に長々しい文章が書かれており全く分からなかった。
「ねぇ、本当にサインしていいの?」
僕は母親の方を向いてそう聞く。
「稜駿がいいと思うならサインしなさい。」
なんて不親切な。
僕は読んでもわからないので、なんとなく見てサインした。
「はい。これで手続きは完了です。これが、受理されればあなたは社長です。」
そして橘さんはまた鞄から今度は冊子を取り出した。
「こちらは、鈴の音イグディスのパンフレットになります。一応社長なんですから。」
「はい。」
そう言ってパンフレットを受け取る。
《全ての人に合ったデザインを鈴の音international global design company
この会社は、服のデザインやグローバルデザインの設置、考案 慈善活動 工業製品制作 病院経営などさまざまな分野で広く活動しています。•••》
パンフレットを読んでいると、母親が
「はい。次はあなた。」
そう言って若い女の人の手を掴んだ。
第17話 ~秘書~
「私は、宮條 佳奈です。これから社長のお世話やお手伝いをします。何卒よろしくお願いします。」
宮條さんは、スーツを着ていて眼鏡はかけておらず、秘書らしい少し低めの声ではなく普段通りの声の高さで内心秘書ってこんなものなんだー。と思った。
「こちらこそ宜しくお願いします。」
そんなことも言えるはずもなく、模範的な返答をする。
「それじゃあ私は、専務取締役としてやることたくさんあるからわからないことがあったら宮條さんに聞いてね。」
そう言って母親は出て行った。
やはり、初対面の人と会うのは気まずい雰囲気にはなるものだ。それを打破するため僕は、
「あのーすみません。この屋敷の道案内ってしていただけるのですか?」
僕がそう聞くと、
「はい。ですが、今からは予定がありまして、まずはそこに向かいましょう。」
そう行って、社長室を後にし大階段を降り新たに回る。
裏は丘のように屋敷が高いところにあり、下がいくつもの建物があった。
そして僕たちは、清楚な建物に入り絵裏手に回る。
そこにいたのは、ボイスレコーダーを持った人、カメラを構えて待っている人、メモ帳とペンをも出た人までいた。そう記者だ。
そして僕は、
「なんですかあれ?」
「すみません。言ってませんでした。今日このことをどこからか嗅ぎつけて記者の人が押しかけてきたのでもうどうしたのです。どういたしましょうか?」
即答で、
「僕は記者の前に出たくない。誰かかわりにでてくれないの?」
面倒臭そうにそう言う僕。
宮條さんは何かひらめいたように、表情が明るくなり、
「そうです。第三者を通しましょう。弁護士です。弁護士の口から話すのです。そうすれば、真実だと証明できます。」
「それにしましょう。」
今度も即答で答えた。
数十分後、
「遅れてすみません。」
この人は、この会社の専属弁護士の樹原さんだ。
そして、すぐに会見が始まった。
樹原さんが舞台に出て一礼する。
すると1人の記者が、
「あのー社長は未成年って聞いてのですけど。」
「私は専属弁護士の樹原と申します。名乗るのが遅くてすいません。」
そして、記者の質疑応答に樹原さんは丁寧に答え、記者会見が終了した。
記者会見は、あまり触れていませんが、これが次につながります。それに、自分的には随分と長くなってしまったような気がします。
次回は、崩壊した日常の日常です。
今回も読んで頂きありがとうございました。