お金持ちの日常とは
第14話 ~父の告げたこと~
あの電話から30分も経たないうちに母親が帰宅して来た。
そして、僕たちは椅子に座り話し始める。
「はぁーまあ、いつかは話さなければならないことだったからね。」
そう母親が言い鞄から手紙を差し出して来た。
「これを読んだらきっとわかると思うわ。」
そして、その手紙を僕に渡して来た。
それを受け取ると、《稜駿へ》と書かれた白い手紙に下に小さく、《鈴木 郁弥》と書かれていた。
そして、僕は手紙の封を開けて読み始めた。
《稜駿へ このことを隠していて本当にすまない。この手紙を今読んでいるのなら、私に何か起きたのだろう。何もできなくてすまない。
もうこの手紙を読んでいるのならわかると思うが私は『鈴の音IGDC のCEO及びCOO』の者だ。何故、父さんがこのことを隠していたのかというと、稜駿にはお金持ちの日常ではなく普通の日常を送って欲しかった。時折思ったりしなかったか?『お金持ちになりたい。』と。もし、お金持ちになれば、“欲”というものがなくなる。“欲”というのは、叶わないから存在するものだ。“欲”が叶ってしまったらどんどん自分の欲を満たしていくだろう。そうなったら一体どうなるか。“欲”のためにお金を散財しお金が尽きる。そうなった時に、人とういのは満たしたいという気持ちが上回り理性を失ってしまう。そんな日々は稜駿には送って欲しくなかった。だからこんな大きな嘘をついてしまった。本当に申し訳ない。
最後に、稜駿が何歳なのかはわからないが、時期CEO及びCOOになるだろう。だからお金もたくさん手に入る。だけどお金があるからってさっきも書いた通り“欲”を極力満たさないで欲しい。もちろん絶対というわけではないが仕方がない。
本来なら私が稜駿に直接話すべきだったのだがそういう訳にはいかないようだ。
本当に申し訳ない。これからも頑張って欲しい。
鈴木 郁弥》
父親の手紙は所々涙で滲んでいた。
そう。よく考えればおかしかった点もある。
長距離トラックの運転手で、そこそこ広い家なんて買えるだろうか。そして、長距離トラックの運転手だといえば、色々なところに行っていると言って泊まり込みで会社に行っていたら仕事に集中できる。
だがもっとおかしな点がある。
まずこの手紙。手際が良すぎないか?
死んだ前提の手紙。遺書のようなものだ。まるで死ぬとわかっていたかのように。
そして、訪ねて来た橘さんだ。
わざわざ専務取締役という重役の人が訪ねて来て、僕の顔を知らないというのは、おかしいのではないだろうか。この人が行くと決まっていたなら、僕の父親が顔くらい覚えさせるだろう。だが、あの時『鈴木 稜駿さんはどなたでしょうか。』と聞いて来た。
少し怪しい。
これは、誰かに仕組まれたことではないだろうか。
何だろうか、この違和感。
そして、今まで黙っていた母親が口を開いた。
「で、あのーお知らせなんだけど•••。この家からは引っ越すわよ。」
突然とんでもないことを言い出した。
だから僕は
「いや無理。」
反対した。
「ダメよ。これは、決定事項です。拒否することはできません。」
突然真面目な声で言ってきた。
「大丈夫よー。別に家を売るわけではないから。ここに残しておくわよ。たまに遊びに来たらどう。家具もそのままだし。それに、経営権を持ったのだから、書類のサインや方針の決定などはここでは行えないのよ。」
さっきとは裏腹に言った。
そして、
「あなたのお父さんの最後のお願いよ。」
僕は口を開き、
「どこ?」
そういうと母親は、
「この校区内よ。さぁ早く行きましょ。」
そう母親が言い僕たちは我が家を後にした。
おかしな点。根本的に言えば、働くことですね。
働きたくないですね。働きたいと思う人はいるんでしょか。ゴールデンウィークが終わるといつもやっていたことが苦痛に感じ、疲れが人一倍来てしまいます。
次回は、新しい我が家、新しい秘書、記者会見と盛りだくさんな内容です。
それでは今回も読んで頂きありがとうございました。




