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Rubber SCrap  作者: オッコー勝森
2章 "Minotaur"
22/29

M.6「Maze②」

 短め。

 感想で指南を受けたので、主人公以外の視点が始まるサイン

[The Viewpoint of ◯◯]

の◯◯を日本名に変えます。

「すごいのじゃ! 廊下が、金ぴっかなのじゃぁ!」


 全員意識が覚醒したということで、スタート地点と思しき場所より延びる廊下に出た、俺たち。

 二十メートルほど先にある曲がり角までは、足場も含め天然の洞窟ばりに荒削りな通路だったが。


 曲がり角を越えてすぐに、続く道は金色(こんじき)となった。


 三つ子のうち一人、マイコちゃんが、興奮しながらスライディングを決め、頬を床に擦り付ける。

 早速、キャラ立てのためのセオリーを無視した行動である。


 先ほど田鴨が行った例えと合わせて、小学生の時の記憶が薄々とながら掘り起こされた。



 ゲームしてる際に偶に思ってたんだが、ダグト◯オを構成する三匹のうち、一匹離脱したらどうなるのだろうか。



 ダグデュアルになっちゃうのだろうか。


 あの頃は五文字までしかダメだったが、今の世代では六文字までOKならしいじゃないか。

 安心してトイレ離脱可能というものである。


 さて、一人がスタンドプレーをかます三つ子の残り二名は、金とはいえ床に頬ずりするマイコの姿を、蔑むような冷たい目で見つめていた。


「浅ましいのです」

「おバカなマイコ」


 ・・・四バカと同じく、仲の良さそうな彼女たちも、心の奥底でお互いどう思ってるなんて分かったもんじゃない。


 ダグ◯リオだって、三匹一緒に仲睦まじく行動しているように見えても、実際地中でどうなっているのかなんて誰にも分からないのだ。


 はあ、と溜息を一つ。

 考えなしに前に出たマイコちゃんの元へ行き、しゃがんで頭をポンポン叩く。


「こら、危機意識が足りていないぞ。ちゃんと周囲を警戒しろ」

「え、えへへなのじゃ」


 立ち上がり、恥ずかしそうに頭を掻く。

 この子、飛び級とかなしで普通に高校三年生らしいが、全くそうは見えない。


 口調と行動に加えて、身長が俺よりも五十センチほど小さいんだぜ?

 近所の子供に対する距離感が、一番適切のように感じる。


 つまり、コミュ障の俺でも喋りやすいのだ。


「う、羨ましいのです」

「マイコのくせに」


 なぜか僻み出す残りの二人。


「見ててほっこりする光景だよなぁ」


 ちょっと顔を赤くして微笑むマイコちゃんに対しての感想なのだろう、山西くんがニコニコしながら言う。


「なっ、山西お前、ロリコンだったのか!?」

「通報ものだな」


 寺田くんと松岡くんが、ニヤニヤしながらここぞとばかりに山西くんを揶揄(からか)った。


「ち、ちげぇし! ロリコンじゃねえし!」


 なんだか否定が弱々しい。


 しかし、仮にも高校三年生(先輩)な三つ子ちゃんたちに対してロリロリ言うのは失礼ではなかろうか。


「な、なんじゃと! 妾たちはもう十八歳じゃぞ! れでぃ(・・・)じゃ、れでぃ(・・・)!」

「ヒドイのです地獄に落ちろ」

「これだからモテない男子は」


 当然の如く反発する三つ子。


 特に地獄発言をしたリサコちゃんの目は完全に死んでおり、怖い。


 今のはさすがに失言だと思うので、視線で助けを求めてくる三人の男子には苦笑を浮かべ、逆に窘めることとする。


「若い女性を子供扱いしてやるな。背伸びしようとしてるのが分かっても、こっそり支えてやれるくらいの男であれ」


 シオンたんが似たようなことを言ってた。


「いやそれつまり子供あつか・・・」


「さっすがなのじゃおかよし(・・・・)!」

「いい男なのです!」

「これぞ王道のモテ男!」


「ちくしょうやっぱり顔なのかちくしょう!!」


 悔し泣きしながら俺を睨む山西くん。

 心が大きく傷ついた。


 しかしそんなことより、三つ子の一人ミチコちゃんが大きな勘違いをしていそうなので、訂正しておく。


「ミチコちゃん。俺はモテ男じゃないぞ。寧ろ、モテたことなど一度もない」


 どうしてか、一斉に嫌疑の目を向けられた。


「このイケメンは一体何を言っているのでしょうか? あなたに引っ付いている四匹の害虫が見えないのでしょうか? あと、多分あか・・・」

「ちょっ、杏奈さん!?」


 慌てて志崎さんの口を塞ぐ茜さん。

 何か言われたらマズイことでもあるのだろうか。


「「「「よ、四匹の害虫・・・?」」」」


 その横で、体をプルプル震わせる四匹の害虫。


「ああ、四バカは人間の女性枠じゃないからな。ノーカンだ」



 そう、だからこいつらが俺の眷属なんて絶対に認めない。



 ぐはぁっ! と呻きながら地に倒れ伏す四人。

 いい気味だ。


「という訳で、俺は彼女が出来たこともなければ、告白すらされたことがない。俗に言うフリーな状態だな」


 まあ今の俺はシオンたんに操を立てているから。

 ないと思うが告白されたところで、当分リアルの女性に靡くことはありえないが。


 しかし、一生独身を突き通すかと言われると、<弾鬼術>の伝承のこともある。

 俺の代で途絶えさせると考えれば、記憶の中の両親が悲しそうな顔をするのだ。


 悩ましい。

 養子でもとるか?


「てっきりあの茜とかいう女が彼女かと思って諦めていたのです・・・」

「これは、チャンスあるのじゃ・・・?」

「ロックオン・・・?」


 三つ子がものすごく小さい声で何事かを相談していたが、<弾鬼術>継承者のことで様々な対応策を真剣に考えていたため、珍しく聞き取れなかった。


「おっと、試練の途中なのにいつの間にか立ち止まってしまったな。先に行こう。おい四バカいつまで寝てる、起きろ」


 勇者選定という試練の特質上、立ち惚けて無駄話するというのも良くないだろう。

 注意してもまだ寝転がったままの四バカに業を煮やし、腹をゲシゲシ蹴りまくる。


「容赦ないですわね」

「喜ぶだけなのに・・・」


 無表情な志崎さんと、不満顔な茜さん。


「あ、あん♪」

「もっとや、もっと強くやってもうて・・・」

「そこ、そこアルゥ・・・あぁ・・・」

「刺激的〜」


 確かに茜さんの言う通り喜んで気持ち悪いが、それでも奴らはノロノロと立ち上がった。

 今はこれでいいことにしよう。


 俺たちはその場を離れ、第一フロアの入り口のように見える両開きの扉へ向かって進み始めた。


 その道中。


「三つ子さんたち、十八歳でこの体格とは。これは合法ロリですわね、じゅる」


 ほぼ0に近い音量でボソリと呟かれたその言葉が、清楚そうなイギリス人ハーフ志崎さんからのものだったことに、俺は内心度肝を抜かれた。

2018/08/12 茜さんのステータスが間違っていたので、S.14とS.15について修正。

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