M.5「Maze①」
Serious様は お盆休みで 英気を 養っている!
「またかよ、お前ら・・・」
右に続く通路との接合部を除き、周囲を岩に覆われているここは、第二の試練に挑むため転移してきた場所。
気絶している九人・・・じゃないな、三つ子もいるから十二人に囲まれる俺は、いきなり敵に襲われるなんてことはないよな、と警戒しながら呟く。
「まるで気絶と転移がセットみたい・・・と、そういや、あの食えなさそうな老執事が言ってたか」
驚きましたな、地球人が転移陣を通って意識を保つどころかとかなんとか、と。
・・・ったく、仕方のないことなのだろうが、グースカピースカ寝やがって。
俺はコース料理を食べた後の休息で、悪夢にうなされてあんまり寝れなかったというに。
一人一部屋、高級ホテルのような部屋を与えられて、あれは辛かった。
夢の内容を、朧げながら思い返すと。
青空に黒い大穴の空く世界で目を覚ました俺は、<弾鬼術>なんて身に付けてなくて。
ただの人見知りな高校生である俺に、当然黒い巨体に対抗する術はなく。
俺のために囮になってくれた、四バカの凄惨な死に様。
隠れて見過ごした、別のグループの巨体による蹂躙絵図。
逃亡先で出会った、ほぼ生気を失った茜さん。
飢餓に耐える三日間。
そして・・・・・・。
「妙にリアリティのある夢だったな・・・」
ブルリ、と寒気がする。
もし本当に、俺に<弾鬼術>が無かったら・・・。
親父とお袋に、「シオンたん」ストラップへの愛情と同等の感謝を捧げる。
はあっ、届け、俺の思い!
「・・・何やってんだか、俺。ああ、こいつらが起きるまで待機ということになるのか、暇だ・・・・・・」
意識の片隅で先ほどから警戒を続けているが、敵の気配すら感じないのだ。
さすがに、気絶した状態で現れるだろう始まりの部屋に、いきなり敵を配置するほど鬼畜仕様ではないってか?
おや?
そうすると、第一の試練は、巨体のうろつき回ってる中で全員、無意識晒してたってことになるぞ?
レベル1の状態で、だ。
お、恐ろしい・・・。
「あ、レベルと言えば、ステータス見るの忘れてたな」
ステータスオープン、か。
やっぱり高校生にもなってそんなこと言うのは恥ずかしいな。
だが幸い、周りは気絶し、誰も俺の言葉を聞いていない。
一人なら、俺はどんな妄言でも吐ける。
「我が深淵の情報よ、現世に顕現せよ。ステータスオープン」
なので、呪文風に言ってみた。
雰囲気が出るぜヒャッハー!
眼前に半透明のボードが出てきて、そこに俺という存在のデータが記載される。
「どれどれ・・・」
名前/Name: 岡吉和/Kazu Okayoshi
性別/Sexuality: 男/Male
レベル/Level: 63
体力/Hit Point: 74296(74296) ×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
マジックポイント/Magic Point: 193821(193821) ×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
攻撃/Power: 94528×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
防御/Protect: 34879×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
魔力/Magic Power: 78143×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
魔力防御/Magic Protect: 35185×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
速さ/Speed: 283176×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
スキル/Skill: 「弾鬼術/Dankizyutsu-Technic」上級/Senior
◯統合/Integration:
「体術/Physical Arts」
「棒術/Technic of Rod」
「剣術/Technic of Sword」
「槍術/Technic of Spear」
「盾術/Technic of Shield」
「縮地法/High Jet」
「オタク/Side of Geek」中級/Intermediate Level
特殊スキル/Special Skill: 「異言語/Utility of Another Language」
「*********」
称号/Title: 「************」
封印/Sealing: 「乾坤一擲/Betting My Life」
眷属/Kin Group: 田鴨伊予/Iyo Takamo
白百合麻里/Mari Shirayuri
其連友香/Yuka Sonotsure
韓子涵/Zeuhang Hang
・・・おっ、本当にゲームみたいだなぁ。
<弾鬼術>は英語でもそのままなのかぁ。
縮地法がHigh Jetはちょっと違う気がするなぁ。
オタクってスキルなのかよハハハ!
全く、伏字の特殊スキルや称号って、まさに定番じゃないかぁ!
・・・目をゴシゴシこする。
そしてもう一度、自らのステータスに、目を通した。
名前/Name: 岡吉和/Kazu Okayoshi
性別/Sexuality: 男/Male
レベル/Level: 63
体力/Hit Point: 74296(74296) ×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
マジックポイント/Magic Point: 193821(193821) ×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
攻撃/Power: 94528×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
防御/Protect: 34879×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
魔力/Magic Power: 78143×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
魔力防御/Magic Protect: 35185×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
速さ/Speed: 283176×(封/Sealed)×(封/Sealed)×(封/Sealed)
スキル/Skill: 「弾鬼術/Dankizyutsu-Technic」上級/Senior
◯統合/Integration:
「体術/Physical Arts」
「棒術/Technic of Rod」
「剣術/Technic of Sword」
「槍術/Technic of Spear」
「盾術/Technic of Shield」
「縮地法/High Jet」
「オタク/Side of Geek」中級/Intermediate Level
特殊スキル/Special Skill: 「異言語/Utility of Another Language」
「*********」
称号/Title: 「************」
封印/Sealing: 「乾坤一擲/Betting My Life」
眷属/Kin Group: 田鴨伊予/Iyo Takamo
白百合麻里/Mari Shirayuri
其連友香/Yuka Sonotsure
韓子涵/Zeuhang Hang
幻覚じゃ無かった。
ここのところ、現実逃避が仕事してくれない気がする。
仕事してくれ、月給三万払うから。
微妙にケチでごめん。
・・・うん、別にいいんだ、他のは。
レベルが他の人たちより異様に高いとか、オタクとか、封印とかは、ちゃんと身に覚えがあるからね。
伏字の特殊スキルや称号も別にいい。
わくわくするから。
でも最後ね、ちょっとおかしいっていうかね。
今は夏で、エイプリルフールでも何でもないっていうのにね、ホント困っちゃうよ。
松明の炎たなびく始まりの部屋。
気絶する、十二人の少年少女。
起こしてしまったら、すみません。
でも心が、叫ばずにはいられないんだ。
一、二の三、はいせーの!
「何で四バカが俺の眷属になってるんだああああああああああああああああああああああぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっっっっっっっっぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁあああああああああああああああああああああああぁぁぁ・・・」
魂を震わせる俺史上最大のクレームが。
薄暗い洞窟内で、グワングワンと、反響した。
×××××××××
[The Viewpoint of 神照茜]
「全く、何で気絶がデフォになっているんでしょうか。男の方には、自分の寝顔を見られたくなんてありませんのに」
顔を赤くしながらそんな風にぼやく志崎杏奈さんを最後に、全員起きた。
寝顔も長い睫毛が映えて、とてもかわいかったのに。
発言から女子力高いの伺えるよなぁ、この子。
岡吉君・・・私の将来の旦那様を取られないようにしないと。
その旦那様が、私に向かって暖かい目を向け、サムズアップ。
「大丈夫だ、白鳥のカメラは後で俺が壊しとく」
・・・?
よく分かんないけど、とりあえずサムズアップを返した。
「よし、じゃあ出発前に点呼とるわよ!」
「おっ、イヨちゃん、委員長みたいアル!」
旦那様のストーカーの一人、田鴨さんが遠足の引率者みたいなことを始めた。
「えー、白百合麻里さん!」
「はい〜」
「其連有香さん!」
「おう」
「韓子涵さん!」
「はいアル!」
「そして我らの・・・」
「「「「岡吉和さん!」」」」
「何それ新ネタ?」
流れるように四人で旦那様の名前を呼ぶストーカーどもだったけど、反応する岡吉君の声はただただ冷たい。
ざまぁ。
「う〜、岡吉くんの中で、私たちの存在が『四バカ』になってる〜」
「これは、どうにかして挽回せんと・・・ウチだけでも・・・」
ボソリ聞こえてくる其連さんの言葉に、ひょっとしてこいつら仲悪いんじゃないかなって思った。
ただ目的が同じってだけで集まっている盗賊のようだ。
いざ危機となれば、平気で仲間も売るんじゃない?
なるだけ早く罪を償ってほしいと、切に願う。
「さっさと残りの点呼も取れよ」
刺々しい感じで催促する旦那様。
ダメだよ、そいつ喜ぶだけだから。
「は、はい❤ えーと、志崎杏奈さん」
「はいですわ」
「”Shining Divine”茜さん」
「おいコラちょっと待て」
ねえ、そこでそのネタ引っ張る!?
田鴨さん・・・もう田鴨でいいや、田鴨の襟を引っ掴みそうになった。
そこで、視界の端で驚いたように目を点にする旦那様の姿が。
シュビッと手を引っ込め、顔に無理矢理愛想笑いを浮かべる。
「あ、えーっと、その・・・テヘペロ☆」
松岡君が鼻血吹いて倒れた。
どうしたんだろうか?
「へぇ、茜さんでもそんな言葉遣いすることあるんだな」
旦那様が、ニコッとイケメンスマイル。
鼻血吹いて倒れそうになりました。
お姉ちゃん、茜、幸せです・・・。
「じゃあ点呼続きねー。男子A、B、C」
名前を呼んでもらえない、私のクラスの男子。
「え、非道くない? え、非道くない?」
「委員長の鬼ぃ! 断固抗議する」
「(ドクドク・・・と血の流れる音)」
ブーブーと文句垂れる寺田君と山西君。
田鴨には期待しない方がいいよ?
どうせ男は岡吉君しか見えてないし。
幸せそうに鼻血を垂れ流す松岡君は、ちょっとキモかった。
「あとは、そこの三つ子ちゃんね! 名前教えてもらえない?」
食事の時から一緒にいた、小学生ぐらいのちんちくりんな三つ子の方へ、皆一斉に振り向いた。
「ま、マイコじゃ」
「リサコです!!」
「ミチコ!」
三人仲良くごあいさつ。
・・・・・・どうしよう、全然見分けがつかないよ・・・。
「へえ、よろしくね、マイコにリサコにミチコ!」
「よ、よろしくなのじゃ」
「よろしくです!!」
「よろしく!」
田鴨が、普通の女の子のような笑みを浮かべて、三つ子と馴れ合っていた。
ここだけ切り取られれば、ストーカーのようにはとてもじゃないが見えない。
このように脅威とは、普段は平穏な日常を演じているのかもしれない。
「早速質問なんだけど、いいかしら? あなたたちってバラバラに喋ること、出来るの? それともダグ◯リオみたいに三位一体形式?」
地面からニョキニョキ生えるマイコ・リサコ・ミチコの姿を想像し、ツボりかける。
でもそこんとこどうなのということで、皆三つ子が答えるのを待ち構えた。
「え、バラバラにも喋れるのです」
「でも、三人セットでお決まりパターンが、マスコットみたいな感じでいい!」
「キャラ立てなのじゃ!」
ただのキャラ立てかよ!?
しかも狙いはマスコット枠!
「ただのキャラ立てかよ!? しかも狙いはマスコット枠!」
岡吉君が、心の中の私と全く同じツッコミを入れる。
意識の奥底で通じ合った気がして、心臓がトクンとした。
えっ、これって・・・。
やっぱり運命の相手ってこと?
因みに、せいぜい小学五、六年生にしか見えない彼女たちは、なんと高校三年の受験生らしい。
先輩じゃねえか。
にもかかわらず、私よりも十センチは小さい身長に、すっからかんな寸胴体型。
憂げに自らの年齢を語る彼女たちの様子は。
何というか、姉妹揃ってご愁傷様ですとしか言いようがなかった。
心の中の口は相当悪い茜さん。