出戻り女
ユーイが近隣の商人達の会合から帰ってくると家の雰囲気がおかしい事に気づいた。
「ただいま、ん?」
そうやって家の中に入ると小柄なまだ少女と言っていいような女の子が椅子に座りながらブスッとしていた。
「姉さん、なんでいるんだよ」
「あっ」
チサはその見た目に似合わない声を出して、ユーイに対してギロリと睨みつけた。
「ごめんなさい」
見聞を広めるためと一人で冒険家業をしていろいろな所を旅して回って一応の腕が立つユーイもこの小柄な姉には叶わなかった。
「どうしたの? カキさんは?」
カキとはチサの二人目の旦那の事である。
「ああ、あいつね、何度言ってもギャンブルをやめないから三行半をたたきつけて出て行ってやった」
チサの言葉にユーイは頭をボリボリと掻いて困った顔をした。
「もう、姉さんったら、どうしてこう……」
「仕方ないじゃない働けって言っても店の金使ってのギャンブル三昧よ。むしろ向こうの家の大旦那様に喜ばれたもん」
チサの言葉にユーイはもう一度大きな溜息を吐く。
「あんたももうすぐ結婚するんでしょ? それなら私は邪魔よね。どうぞ好きに再婚相手を選んでください。どんな年寄りの後妻でもいいですよーだ」
ツンとそっぽを向きながら膨れる姉を見てユーイは乾いた笑いしかでなかった。
「でも、真面目で貯蓄があって私の事大事にしてくれる人じゃないと嫌だな」
(どんな相手でも良いって言ったじゃねぇか)
「なに? その顔」
「なんでもありません」
一生この姉には勝てないんだなぁと思うユーイなのだった。
(でも待てよ。真面目……。山の中で過ごしているからお金の使い道なんて無いだろうし、貯蓄があるだろう。あいつ初恋は姉さんだよな……)
「少し心当たりがあるかも」
ユーイの言葉にチサは椅子から飛び上がる。
「本当! どんな人? 何歳くらい上? いくらなんでもおじいちゃんはきついよ?」
「えっと、年下かな……」
ユーイは苦笑いしながらその話を切り上げ逃げるように店に戻るのだった。
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