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~不老不死の業~  作者: 名はない
戦乱の二人
24/30

真実の愛を求める烏

 王国直轄地の一箇所に空白地帯が一箇所あった。

山に巣食う山賊達が付近の村々から食料などを徴収し、その代わりに付近に対し用心棒を行っている。

付近の村々も彼等の方を支持し、徴税に来る者達を追い払っていた。

山賊達の討伐は十年で二十回以上行われているが、全て山賊達が勝利していた。

二千に満たない規模であるが、一万の軍勢を追い返した事もあった。

彼らは特殊な繋がりで大陸中から集まった猛者達であった。

その討伐にサキとバッシは向かう。


「あらあらあらぁ、よく来たわねぇん」


ねっとりと甘い声を出す筋骨隆々の男がサキを見下ろしながら笑う。


「その風貌、噂どおりね」


「かわいいお嬢さん。どんな噂か知らないけど。あなた達は私達、真実の愛を求める烏団の考えに賛同して来たわけじゃないんでしょ?」


甘い声でサキに語りかける男は一瞬で雰囲気を変える。

今までは体をくねらせて気持ち悪い雰囲気をだしていたのが、一瞬で武人としての雰囲気をかもし出した。


「なら、帰れ! 小娘!」


普通の女性なら泣いて逃げ出す威圧を出しながらそう叫ぶ男にサキは不敵な笑みを浮かべて威圧を返すのだった。


 四千対千五百の戦い。

数の上ではサキの方が有利だが、相手も馬鹿じゃない。ましてや何度も王国の討伐隊を返り討ちにしてきた相手だ。

山の斜面を使った逆落とし、急斜面に溝を掘り進軍する者を一列に並べる仕掛けなどを駆使して侵攻を阻止していた。

そして鍛え抜かれたターラーの軍に負けないほど軍は精強であった。

互いが互いをフォローしあって一糸乱れぬ行動を心がけている。

男も女も相棒との連携に隙が無く、全員が必死の形相でターラー達の軍にあたる。

サキも前進命令だけで、突撃命令は出さずに初日は様子見だけで終わらせた。


「どう? 勝てそう? 私が出たほうがいい?」


バッシは、膝の上にサキを乗せながら後ろから手を回しておっぱいを揉む。


「んぅ、大丈夫です。相手の精強さはわかりました。ですから作戦を変更します。ケーマさんの作戦でいこうと思います」


「そっか、わかった」


バッシはサキから手を放し、サキも体を入れ替える。

互いに抱きしめ合いキスを交わし、夫婦の時間へと移るのだった。


 翌日になって真実の愛を求める烏団はサキ達から攻撃が来ない事に不思議に思っていた。

二日、三日と経っても攻撃が一切される事は無く張り詰めた時間だけが流れた。

戦いが動いたのは五日目の夕方だった。

真実の愛を求める烏団の団長が、今日も何もないと思いながらも油断は禁物と思い見張りを叱咤激励しながら自分の部屋に入った所で起きた。

少しの水を飲んで一服した瞬間十人を越える兵士が突入してきたのだ。


「なんだてめぇら!」


団長は、近場にあった剣を取ろうとしたが、すぐさま兵士に投げ飛ばされ丸腰で槍に囲まれしまった。


「ちっ、私もヤキが回ったわね」


団長が大人しく手を頭の後ろに置いて悪態をついた。


「ヒトミちゃん」


団員の一人が部屋に入ってきて団長であるヒトミの事を呼ぶ。


「サブ! これはどういう事!」


その人物が自分の恋人のサブである事に目を見開いて驚くヒトミにサブは悲しそうな目で応える。


「ターラー様は俺達の事を認めてくださった。だから、ターラー様に降伏しよう。ターラー様はここを俺達の領地にしてヒトミちゃんを領主に任じてくれるって」


「サブ、そんな甘言に騙されたの? あなたもう忘れたの? 私達がどれだけ気持ち悪がられ、追われ続けたか!」


彼らは同性愛者、自然のことわりから外れた者として追われ続けた過去がある。

ヒトミは彼ら、彼女等をまとめ上げ二十年以上戦い続けてきた。その自負があった。


「ちょっといいかな?」


今にも喧嘩を始めそうな二人の間にバッシが入ってくる。


「何よ! あなた、あの小娘の隣にいたハンサムさんね。恋人との喧嘩に入ってこないでくださる」


「はいはい、いいからいいから、ちょっと待って、ん、はいよ。サンド、今からターラーに繋げるから、いいな」


バッシが手から魔力で紋様を浮かび上がらせると、魔力は四角く形作られ砂嵐のような状態になる。

その後、徐々に人物と風景が浮かび上がってくる。


「えっと繋がりましたね」


「どちら様ですか?」


ヒトミは黙りサブが誰か尋ねた。


「どうも、現王のターラーです」


ターラーの自己紹介にヒトミは固まり、サブはその場で土下座した。

本来その言葉だけで信じるのは不思議に思えるが、これはバッシが二人の精神に魔力を飛ばして干渉し、ターラーを本物と強く確信させたのだ。


「私は王として約束しよう。君達の存在とあり方を認めその地を収める代官として認めます」


ターラーの言葉に嘘はない。最初にサキとバッシに討伐か懐柔のどちらか可能な方をするよう命令が出されていたのである。

そして、バッシの魔法によってターラーの言葉を強く信じさせる。


「わかりました。降伏いたします」


「そう、わかりました。では、一度就任式を行いましょう。武器を持たず王都にやって来てください。私はまだ仕事があるのでこれで」


そうターラーが言って魔法が切れるのだった。


 ヒトミの降伏宣言と武装解除命令によって戦いは集結した。

多くの者が不満を漏らしたが、今まで彼らを導いてきたヒトミの決定に逆らう者はいなかった。

ヒトミが王都に向かい受勲して帰ることで、今まで懐疑的だった者達の殆どがターラーに忠誠を誓った。

彼らのこの場所が安住の場所と認められ大陸中の同じ悩みを持った者達が集まりその地に根を下ろした。

普通の村は今まで通り、だが、同性愛者の村は他よりも多くの税を納める事として認めた形にした。

多少の不満も安住の地を得た事で帳消しと彼らは考えたのだ。


 真実の愛を求める烏隊

彼らは倒れない。倒れれば隣にいる恋人を失うから。

彼らは崩れない。崩れて後ろにいるターラーが倒れれば安住の地が無くなるから。

彼らはターラーの親衛部隊として活躍し、攻めのサキ隊、主軍のサンド隊と同じく三つの最強部隊として名を轟かせていくのだった。


 誰得おまけ


「サブ、ごめん、私、一番はサブ、二番はヤヘイって言ってたよね。ごめん、サブは二番目になっちゃった」


「気にしないでヒトミちゃん。ヒトミちゃんは恋多き漢だって知ってて好きになったから、でも誰? ヒトミちゃんの心を射止めたの?」


「ターラー様」


「え?」


「ターラー様、もう私あのバッシ様の魔法で見た瞬間体に何かが走ったのよ! 一目惚れよ。実際に会ってみたら本当に素敵な方だったの。この愛はターラー様は応えてくれないってわかってるの、でも自分の気持ちに嘘はつけないわ」


「そう、ヒトミちゃん綺麗よ。やっぱり恋をすると漢は綺麗になるのね。でもその恋、私認めるわ」


「ありがとうサブ」


二人は熱い抱擁をかわすのだった。

誤字、脱字があれば報告おねがいします。

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