文官としての活躍
史記に元ネタ有り。
ターラーが世に名を出した戦いから三年間戦いという戦いは無かった。
その分ターラーは自分の領地の足場固めを存分にする事が出来た。
サンドが貴族として家から独立し、ターラーの元へ部下として仕官し爵位を得た。
モーリー、イーグ、もサンドと共にターラーの領地経営に参加すのだった。
モーリーはすでにサンドの家で、その書類処理能力を買われサンドと共にターラーの元へ行く時にサンドの実家から残るよう説得された程である。
代官から受け継ぎ人材不足のターラーの行政にほぼ孤軍奮闘の働きをしてターラーの領地経営を回していった。
モーリーの活躍でなんとか回っていった領地も一年で人材の確保も徐々に行われると、経験を積んだモーリーの独壇場ともいえる状態になった。
今までに出来なかったターラーの政策をモーリーが処理し、官僚がそれを支援する。
物、人、金の流れがスムーズになれば自然と領地は発展する。
人としては永いが、領地経営として短い三年という期間でターラーの領地は瞬く間に発展していくのだった。
モーリーは日々発展していく領地に関して食料の生産量が足りないという問題に直面していた。
ターラーの開墾指示を実行に移そうとしても上手くいかない。部下に調べさせてみると最初の灌漑工事から上手くいっていない状態だった。
モーリー自身がその現場に足を運んでみると水を引く大河の近くの村に問題があるのがすぐにわかった。
その村の信仰で大河への竜神信仰があったのだ。
つまりこの大河から水を引くという事は竜神を怒らせる事となるという事だという主張だ。
頭を悩ませたモーリーだが、この灌漑工事はターラーの領地経営上必要な事で住民や工事従事者を納得させなければ工事はさらに遅れると考えられたのだ。
モーリーが現場を訪れてから七日後、偶然竜神のお祭りが行われる日であった。
モーリーはその事を聞いて、竜神のお祭りの概要を調べさせた。
竜神に対し、祈り、巫女のオババが選んだ生贄を捧げ今年も氾濫が起きない事を願うのだ。
モーリーは一計を案じ過去の生贄となった者の父親と隠れて会うのだった。
モーリーも領主の関係者として祭りに招待され参加する。
巫女のオババが祈りを詠い踊る。そして着飾った生贄の若い娘がやってくる。
「待ちなさい」
生贄の娘が錘となる石を服に入れて船に乗ろうとしたところでモーリーが待ったをかける。
「モーリー様、何か?」
「そんな醜い娘では竜神様は怒ってしまわないか?」
モーリーの言葉に周りが動揺する。
決して生贄の娘は不細工ではなく。小さな村や集落では一番かわいいと言われてもおかしくない容姿だ。
「モーリー様決してそんなことは……」
「オババよ。竜神様の所へ行って生贄を待ってくれるように説得しに行ってくれないか? 美しい娘はこちらで用意しよう。誰か、オババを竜神様の元へ」
モーリーの言葉に誰もが黙っていたが一人の男が手を上げた。
「じゃあ、俺の船でオババを送り届けるよ」
その男は一昨年、娘を生贄にささげた父親だった。
「そうか、では頼む。そうだ、これは竜神の元へ行ける聖なる石だったのだな。さぁ」
そう言って兵士達にオババを抑えさせ、服の中へ錘となる石を入れる。
騒ぐオババの口に布を当て、騒がせないようにさせ、船に乗せる。
川の中流で船を出した男がオババを蹴り落とせばオババは二度と浮かんで来なかった。
船の男が帰ってきてから太陽が少し傾いたあたりでモーリーはもう一度立ち上がった。
「遅いな。おい、竜神の祭りを司っているのは?」
「はい、巫女達と三長老でございます」
近くの村の三人の長老がいて、それが三長老と呼ばれていた。
「そうか、巫女の帰りが遅い。多分竜神に篤く接待をされているのだろう。早く帰って来て結論を教えてくれと伝言してもらおうか」
モーリーの言葉に三長老は驚き震え上がった。
モーリーが連れて来た兵士達は三長老を捕まえ三人の服に聖なる石を詰めた。
「誰か竜神の元へ連れて行ってやれ」
モーリーの言葉に過去に生贄を出した家の父親達が手を上げて彼らを担いで船に乗せた。
「離せ、わしを誰だと思ってやがる」
「いやじゃ、嫌じゃ死にたくない」
「子供の頃生贄になったお姉さん。まだ竜神様の所にいるかなぁ?」
三者三様の叫びを上げて川の真ん中へ連れて行かれ三人は川に突き落とされ沈んでいくのだった。
モーリーはまた日が少し傾くまで待って立ち上がる。
「遅い! 本当に四人とも歓迎されてるんだな。よし明日まで帰ってくるのを待とう。皆、今日はここで解散にしよう」
本来なら巫女のオババや三長老が終了を宣言するのだが、その四人がおらず、領主の代理人がそう言うのならと村人は帰っていくのだった。
その夜、モーリーは残った巫女達を呼び出し、とある事を宣言するよう強要する。
望まなければ竜神の元へ行って四人を連れて帰ってくる仕事を頼むという脅しをつけて。
次の日に新たに巫女長となったオババが宣言した。
「昨晩、竜神様から信託がございました。竜神様は四人との宴会がとても楽しいようで、彼らを返すまで生贄はいらないそうです。そして、川の水は、川が干上がらないのなら自由に使ってもいいそうです」
新しい巫女長の言葉を聞いた村人達は納得してその場から解散していくのだった。
モーリーは改めて灌漑工事を始めた。
その地は年々収穫量が上がり、二年で広大な穀倉地に、十年で国で一番の穀倉地域へと変わるのだった。
イーグはその数字の強さから財政を見直し、商人を動かし、ターラーの領地を金で潤わすのだった。
イーグ「なんでモーリーの活躍はあんなに書いてるのに俺は一行だけなんだ!」
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