再会する五人
陣のテントの中で一人の青年がうろうろと動き回っていた。
「ああ、もう将軍達も兄さん達もここの重要性がわかってない! ここにもっと兵がいなきゃいけないのに」
「ターラー様、少し落ち着いて下さい」
ターラー付きの将軍の一人がそう言うとターラーも一旦深呼吸した。
陣幕の中央にある机の上にある地図の前に立ってターラーはジッと地図を見つめた。
「駄目だな。兵力が足りない。どうすればいい……」
ターラーがブツブツと言いながら地図と睨めっこしていると一人の伝令が入ってくる。
「伝令、ヒロ家次男サンド様が部隊を率いて参陣いたしました」
その言葉にターラーはがばりと顔を上げて笑顔を溢す。
「サンド殿が、ああ、そうか、よかった」
ターラーの笑顔に目付けの将軍が不思議そうな顔をした。
「この陣に参戦とは……もしかしてお知り合いですか?」
「ああ、古い知り合いだ。よし会いに出迎えよう。うれしいうれしい援軍だ」
ターラーは陣幕を飛び出し供の者を連れて陣の前まで行った。
「サンド殿、変わら、でけぇなお前」
「ターラー様、そりゃ七年も経てば身長も伸びますよ」
「そっか、そうだよな……。六フィー六イン(約三十センチと三センチ、約百九十八センチ)は無いか?」
見上げるほどの身長に成長し、美丈夫となったサンドにターラーも少し驚いていた。
「まぁ、それくらいです」
頼もしい体に成長した昔の親友の登場に笑顔を見せるターラーとその事をしらない困惑する供の者達なのだった。
「それとモーリーが今私の家に仕えています。彼が彼らを呼んで来ました」
サンドの言葉にターラーはさらに目を輝かせる。
サンドの言葉通りモーリーがやって来て三人を前に出した。
「先生!」
「ははは、皆に言われたが、私はターラー様の先生じゃないさ」
「先生、やっぱり来てくれたんですね」
バッシの否定も無視してターラーは体を大きく使って喜ぶのだった。
サンドに対してした大きくなったな会話をサキともしてイーグがサキにしばかれた後、彼らは陣幕の中へ招待された。
地図の前で将軍達と共に作戦を練るターラーを優しくバッシが見守っていた。
「ここ、ここしか勝てる見込みが無い。どうすれば」
ターラーが地図の一箇所を指差し叫ぶのを誰しもが納得した。
「じゃあ、私が協力しましょう」
バッシが名乗り出たのを弟子達とターラーは頼もしく思い、ターラー付きの将軍達は怪しげな目で見た。
「わかりました先生」
「じゃあ、この部隊でも選りすぐりの暴れ者を集めて下さい。あなたの策の為に指揮しましょう」
「おねがいします先生」
その日の作戦会議はその場で解散となるのだった。
翌日、部隊の命知らずの暴れん坊達百人が集められバッシの元へ連れて来られた。
「ああん、こんな男が俺達の隊長だと」
「そうだ、何か?」
バッシは笑顔を崩さず、恐怖を感じる魔力を百人全員に施した。
そこにいた全員がバッシに敵わないという感覚に陥った。だが、命知らず達だ。それを認める事が出来ない。
「ま、まぁ、わかったよ。だが、変な命令したぶっ殺すぞ」
「そうだそうだ」
命知らず達の強気の発言にバッシは笑顔で何も言わずに返し彼らにスタミナの向上と早足の魔法をかけて進軍するのだった。
男達も自分達がいつもより早く、そして疲れずに走れる事に驚いていた。
彼らは命知らずなだけではなく戦慣れした男達だった。
なんとなくで敵が近い事も気がついていた。
「おい、隊長さんよ。近いぜ」
「ええ、もうすぐ見えます」
丘を越えて見れば千を越える兵達が進軍している最中だった。
「あいつ等とあたるってか? この人数で? どう数えても千以上はいるぜ」
「ええ、そうですね。みなさん、あの豪華な鎧を着ている人があそこにいますね?」
バッシが指差した方向には遠くだが豪華な鎧を着けたいかにも将軍といった男がいた。
「隊長さんよ、つまり奇襲してあの将軍の首を取ってさっさと逃げるって算段だな。まかせと」
命知らずの一人が言い切る前にバッシは頭の上に魔力を槍状にした魔法を唱えていた。
そして手を前に出すと真っ直ぐ魔法が飛んでその将軍の胸に突き刺さった。
「じゃあ、行きましょうか、将軍が死んで混乱している間に相手を崩して一旦引きますよ」
バッシの笑顔に百人全員が恐怖するのだった。
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