成長した弟子達
サキが本の山を片しながら溜息を吐いた。
「バッシ様、もうちゃんと片付けてくださいといつも言っているでしょ」
サキは分厚い本を五冊いっぺんに持ち上げ運ぶ。
本の上には大きな塊が潰れて乗っかっている。
十七歳になって美しく、そして大きく、大きく成長したサキにバッシはいつものように怒られていた。
「先生。またサキちゃんに怒られてる」
イーグが子供達に算学を教えながら笑っていた。
「うるさいなぁ。もう十六なんだろう。こんな所にいないで仕官したらどうなんだ? サンドは実家で活躍しているみたいだし、モーリーと共にサンドの部下として働けるだろう」
「まぁね。でも、まぁ、うん、一応待ってるんだ?」
「待ってる?」
「いや、なんでもないです」
イーグが何か言いかけてすぐに言葉を濁した。
「バッシ様ぁ」
イーグが子供達に方に目線を戻すといきなりモーリーが私塾に駆け込んで来た。
「モーリー久しぶりだな。今ちょうど噂をしていた所だ」
「いえ、それどころじゃないです。これを見てください」
バッシがモーリーから紙を受け取るとそれをイーグと共に見た。
そこに書かれていたのは、隣国と戦争を行うので準備が必要という事だった。
紙をモーリーに返し互いに見合った。
「つまりこの戦いにターラーが初陣を迎えるという事だな」
「はい」
モーリーの頷きにバッシ達が互いに見合う。
「よーし、親友の初陣を手伝いに行きますか!」
わざとらしい言い方でイーグが体を曲げて解し始めた。
「じゃあ、私も弟子の成長を見に行きますか」
バッシも立ち上がって魔法珠の着いた腕輪をはめた。
「いや、ターラー様は師匠の弟子じゃないですけど……」
モーリーの鋭いツッコミがあったが、バッシはまったく気にしなかった。
「ターラーじゃなくてイーグ、モーリー、サンドの成長さ」
両手に腕輪を着け、体にローブを纏いバッシは準備を完了させた。
バッシは子供達にしばらく留守にすると継げて、サキに賃金を前渡しし、家の管理を任せた。
モーリーは一度サンドの所に戻ってから出陣し、バッシとイーグは二人でゆっくりと歩いてターラーの元へ向かうのだった。
「はっはっは、私は謎の槍使いの女助っ人。あなた達の為に参上した」
「何してんのサキちゃん?」
「私はサキちゃんではない!」
「いや、その二つのスイカでまるわか……いでぇぇ」
イーグが言い切る前に鞘のついた槍部分でサキがイーグの頭をシバく。
すでに引き返す距離ではなく彼女の槍の腕も二人は知っているので、連れて行くことにしたのだった。
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