お家のお宝
戦乱などどこ吹く風で穏やかな日々が続く。
「先生! 先生ぇ! 見て見て」
ターラーが古い巻物を掲げて端ってバッシの私塾へやって来た。
「どうした?」
奥からバッシがめんどくさそうな顔をしてやってくる。
「バッシ様! またそんな髪をぼさぼさにして! お髭もちゃんと剃ってください」
しばらく私塾を閉めてバッシは研究をしていた為、サキに身だしなみがなってないと怒られた。
「はいはい、えい!」
バッシのその一言で魔力がバッシの周りに集まり髭は剃られ髪は綺麗に纏められ、衣服は糊付けされたように纏まった。
「それで?」
バッシのその早業に二人が驚いた。
だが、そんなことどこ吹く風といった感じでバッシはターラーに向き直った。
「そうだ、これ、家の奥に眠っていたんだけど。古語で書かれていて誰も読めないんだ。先生ならわかると思って」
そう言われてバッシはターラーから巻物を受け取り中を確認した。
巻物部分は腐食や欠けが起きていたが、巻物の内部の紙部分は魔法による保護がなされていて無事だった。
「これは……千年以上前の言葉だね。少し待ってなさい」
バッシは巻物をターラーに返して私室に入った。部屋の隅に置いてある魔道具を起動させ魔力を注いだ。すると魔道具から淡い光の門が現れるのだった。
その門をくぐると自宅の書斎に繋がっていた。本棚に目を配り本を探しニ、三冊手に取った。
バッシが私塾に帰ってくると、巻物を広げ持って来た古語辞典も広げた。
「さて、この古語はもう魔法に使われていない。だから、みんなここで学んでいないが……。なるほどなるほど」
「先生なんて書いてあるんだ? 何の本なんだ?」
バッシはターラーの言葉を無視し、辞書を捲りながら最初の一文を翻訳していった。
「ショーリョ著、兵法書、かな?」
バッシがそう翻訳するとターラーの目がさらに輝く事となった。
「先生ショーリョって言ったら千二百年前の将軍ですよね?」
「多分、これが本物だったらね」
「すごいすごい」
ターラーが手を叩いて喜んでいる中でバッシがさらに翻訳を進めていった。
「これは第四巻らしい。平野での戦い、武器の選択についてと書いてあるな」
「四巻! 待ってじゃあ、他にも探してくる!」
そう言ってターラーが走って私塾を飛び出していった。
その次の日。
ターラーが八本の巻物を持って私塾にやってくるのだった。
「これだけあった。先生訳して」
サキはターラーの行動に呆れたが、バッシの目は輝いていた。
失われたといわれた本の復元翻訳。バッシの研究者として心がざわつかない筈が無かった。
バッシは全てを忘れて研究しようとしたが、サキに怒られてちゃんと授業は行い。モーリーとターラーと一緒に翻訳を進めるのだった。
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