見知らぬ子供
いつも賑やかなバッシの私塾。その庭の木の上で私塾を覗く影があった。
「ここはいつも賑やかで楽しそうだなぁ」
小さなその影ががさがさと揺れるのをサキは見逃さず、革の鞘を着けた護身用の槍を持ってきて木を叩き付ける。
「あぎゃ!」
木が大きく揺れた事で木の上にいたモノが落ちてきた。
「痛たたた」
木から落ちてきたのはやや豪華な服を着た少年だった。
「誰? バッシ様の敵なら容赦しないよ」
足で革を踏んで引っ張り槍先をその少年に向ける。
「ちちちち違うんだ楽しそうな声が聞こえたから来ただけなの」
槍の先が目の前に来て少年が慌てふためきながら答えた。
サキの一撃の大音に気づいたバッシが家から出てきた。
「どうしたサキちゃん」
「木の上からバッシ様の家を覗く不届き者がいたので」
「ああ、何日か前からうちを覗いていた子ね。別に悪意があったわけじゃないからほっといたけど」
バッシは興味なさそうにそう言う。
「気づいてたの!」
「気づかれてたんですか?」
二人の声がハモる。
「うん、この私塾には魔法で結界を張ってあるからね。敵意があればその木にすら登れないよ」
バッシの規格外の魔法にサキは尊敬を強くし、少年は驚きを強くした。
「それで、何しに来たの?」
「え? なんだか楽し 魔法を覚えたくて」
少年の口調がいきなり変わる。
サキにとっては見慣れた光景だ。
バッシの本音の魔法で嘘をつこうとした人物が本当の事を言ってしまい。慌てて口を抑える。
「なんだ最初からそう言えばいいじゃないか」
そう言ってバッシが家の中に入ってきて一つの透明な球を持って来た。
「持ってみて」
そう言われて少年は両手で球を受け取るがなんの変化も無い。
「はい、もういいよ」
「え? これなんですか?」
「これ? これは自然に零れる魔力を吸って重くなる宝玉。つまり君の魔力を測ったんだよ。才能があればこれが重くて持てなくなるくらい重くなるはずだからね」
「え? じゃあ、なんで先生は普通に持ってるの?」
「魔術の最初の修行はこの自然に出る魔力を制御する所からなんだよ。君に魔法の才能は無い。二十年三十年使って魔力を増やす事は出来るけどおススメはしない」
「うー、わかった。でも、楽しそうだったのは本当なんだ。ここに遊びに来ていい?」
「ああ、いいとも、君、名は?」
「ターラー」
「ターラーね。今は休み時間でみんな遊んでいるから好きに遊んできな」
「うん」
ターラーは満面の笑顔で家に入っていった。
「いいのですか?」
「いいよ。別に」
バッシはサキの頭を撫でて家に入る。今日のお駄賃はターラーを見つけたお手柄代で少しだけ増やしておいた。
誤字、脱字があれば報告おねがいします。
感想をいただけるとうれしいです。
批判もどんとこいです。