不老不死になった男
一人の魔法使いがいた。
山奥に居を構えるその男は麓の街では老賢者といわれ親しまれていた。
老賢者が五十三歳の時、ふと強大な魔力を感じた。
老賢者が、その魔力を探りながら進んでいくと、とある農村へ着くと一人の赤子に辿り着いた。
その赤子の親には、沢山の子供がいて、生活が豊かでないことが一目瞭然だった。
この親は、この赤子の魔力に気づいておらず、二束三文でこの赤子を老賢者に売り払ったのだった。
老賢者はその赤子にバッシと名付け育てた。
バッシの才能は老賢者の想像以上だった。
バッシは若干回復系統の魔法が苦手だが、それ以外の魔法は乾いた大地に水が吸収するが如くであった。
十五歳にして老賢者はバッシに対し教えるものは何も無いと太鼓判を捺すのだった。
バッシが十六歳の時、バッシは老賢者から今まで入室を許されていなかった部屋に入るように言われた。
バッシが部屋に入ると老賢者は椅子に座ってバッシを見ていた。
バッシが来た事を確認すると老賢者はその部屋の奥にある本棚から十冊の本を出した。
老賢者が机に本を置くとその本はドサリと重たそうな音と共に埃が舞った。
「けほけほ」
「すまんすまん」
老賢者が埃っぽい空気を綺麗にする魔法をかけようとした。だが、そう思った瞬間にすでにバッシにかけられていた。
バッシは無詠唱で老賢者に魔力の動きを悟らせないで魔法を使ったのだ。
老賢者はバッシの才能に期待とちょっとだけの嫉妬をしながら本を開いた。
「これは?」
その本に書かれた内容は、一つの魔法についての研究がびっしりと書かれていた。
「これは、血の繋がりは無いが、我が一族、十六代二百五十年かけて研究し、目標としたものだ」
バッシは、目を輝かせる。
バッシは、まだ自分の知らない研究が出来る。どんな魔法なのだろう。そう思ってどんどんページを捲る。
バッシが、今まで習った魔法、研究した魔法全てよりも難しい魔法。
それがバッシの情熱に火を点けた。
「これは何の呪文なのですか?」
「これは不老不死の魔法」
「不老不死……」
「私では完成させることは出来なかった。でも、お前なら、もしかしたお前なら出来るかもしれない。お前でも出来なければこの意志受け継ぐ者を見つけてくれ」
「わかったよ」
そう言ってバッシは不老不死を目指す一族の十七代目を襲名したのだった。
伝えることは全て伝えたと言い、老賢者はその一年後に眠るように亡くなった。
バッシは不老不死の研究を受け継いだ。
それまで二百五十年の天才達が一歩づつ進めていた研究を彼は四年の歳月を掛けて完成させるのだった。
バッシが不老不死になってから二年。二十三歳の時に物語は始まる。
誤字、脱字があれば報告おねがいします。
感想をいただけるとうれしいです。
批判もどんとこいです。