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第4話-襲来-

更新日外の更新、やっとバトルですよー。

 揺れが収まり非常灯の赤い光は鮮血で全面を塗りたくったような不気味な雰囲気を醸し出している。


 ガディナや子供達は突如起こった自体にしどろもどろしているが、冷静を状況を考えている子供がいた。



「ガディナ急いで全員入り口の方へ誘導して」



 それはノートンであった。彼はガディナに全員入り口へ向かうように助言するとその場にとどまり、出入り口と反対の壁を見据えている。


「何か来る……みんな急いで出入り口へ走って!!」


 ガディナは声を張り上げ子供達へ向かって叫ぶが、子供達は混乱している事もあり判断がおくれてしまう。そしてその場に留まったノートンの方へと振り向いた瞬間それは現れた。



 ノートンの見据える分厚い壁が勢いよく弾き飛び、その時に飛び散った壁片が弾丸の如く混乱する子供達を襲う。

 言葉を発する間もなく、数人の子供が飛んできた壁を片に潰され絶命する。



「ノートン大丈夫?」


「あぁ……僕なら平気だよ。それよりあれを何とかしないと逃げ場がないぞ」



 突き破られた壁を身ると、そこから現れたのは体長五メートルはあろうか、異形のモンスターであった。


「なんなのこの生き物……」


「キメラだよ。これも軍の兵器だけど合成に失敗して制御出来なくなったんだ」



 巨大昆虫のキメラは上半身が若草色をした昆虫であり、六本の手に当たる部分が鎌状となっている。おそらく獲物を捕まえる時に鎌で挟み捕食するのであろう。

 もし人間が捕まったら小枝を掴むようにたやすく真っ二つにされる。

 



「自分達で制御出来なくて暴走させるなんて粗末すぎるよね……目が無いみたいだけど頭の上の触覚で感知してるのかな?」



 二人は一歩ずつ後退りをしながらも、巨大昆虫キメラを監察し弱点を必死に探していた。

 距離は二十五メートルくらい離れているが攻撃範囲は五メートル程と予測する。


「恐らくそうだと思う、昆虫特有の口も飢えたように口を動かし続けているところをみると、相当腹ペコなわじゃないかな」


「嫌よ! 私怖なとこであんな気持ち悪い生き物なんかに食べられたくないわよ!」



 胴から下半身にかけては芋虫の様な形をしてゆっくりと蠢き這い寄ってくる。

 出入り口へと振り返り他の子供達の安否を確認すると、閉ざされた巨大な扉を泣き叫びながら扉を叩いて助けを呼んでいる。

 

「それで何か分かったのかい?」


「攻撃するなら柔らかそうな胴体だけど、腕が多いから接近するのは危険……特にあの鎌はやばい。」


「確かにそうだよ。武器になりそうな物はあちこちに転がってるよ」


 ノートンはその場に座り込み親指を噛み切り、傷口から染み出た血液で親指で床に文字や図形を描き始めた。

 巨大昆虫キメラが現れる前もそうだが、現れてからもノートンは一切取り乱さず、風のない水面を思わせるほど冷静でいる。

 私は何処かその様子に違和感を感じた。



──こうなる事を想定していた? それに能力を使って調べたとしても、その割には知りすぎている……一体この子はなんなの……


 

「ガディナ悪いけど少しの間あのキメラをひきつけてくれないか?」


──考えれば考えるほど分からなくなる。もしかするとこの言葉も何か裏があるかも知れない……信頼していいのか……



「こいつを倒さないと僕らだけじゃなくてあの子達も助からないよ。」


「わかってる……何か策はあるの?」


 雲がった表情を浮かべるガディナはノートンに問うが、変わらずノートンは冷静沈着に即答する。


「あるよ。ただし少し時間かが掛かるから、その間はガディナが時間を稼いでくれ」


──化物が開けた大穴を通れば部屋を出れるけど、正面突破はあいつがふさいでるから無理ね。出入り口扉は閉ざされているし、もうノートンを信じじて戦うしか残された道はないの……


「わかった……出来るだけ頑張ってみる」



 時間を稼げと言っても肉弾戦が通じる訳でもなく、血眼になり辺りを見回すが武器になるものもないし、大きすぎるので例え剣や槍があったとしても歯が立たない。

 


──あの巨大化物に対抗できる武器は……あっ! 



 ガディナは赤く長い鉄骨が床に落ちているのを発見する。

 先程、壁を巨大昆虫キメラが破壊した時に分厚い壁片だけではなく、骨組みである鉄骨も破壊され飛んできたのである。


 鉄鋼は長さ二メートルくらいあり大の大人でも持ち上げる事できないくらい重い。


 しかしガディナは違う。



片手で鉄骨を軽々と持ち上げると這い寄る巨大昆虫キメラへ向かって疾走を始めた。

 風を切り距離が近くなるにつれ、千切れるほど暴れる心臓の高鳴りを感じる。



──何故だろう不思議と怖くない。まるで攻撃が当たらない事が分かっているような……

 

 そして距離が五メートルを切った時、巨大昆虫キメラの鋭い鎌がガディナに襲い掛かっくる。



「来る……」



 同時にガディナも上方へ飛がり間一髪躱すと、その先には既に鎌の突きがガディナの首元目掛けて迫っていた。

 反射的に片手に持った鉄骨を鎌にぶつけ軌道を逸らす。



──鎌は強靭でもそれを繋ぐ関節は脆いはず!




 鎌と手の関節部目掛けて鉄骨を振り下ろした。すると淡い色をした繋ぎ目である関節は予想通り柔らかく、鉄骨により引き裂かれ鎌と腕が分断される。


「やった! まず一本!」


 そして巨大昆虫キメラは千切れた腕の先から、緑色の体液を吹き出し耳を割くような奇声を放った。




 その奇声に私は耐えられず鉄骨を捨て頭部の耳を両手で塞ぎ一瞬の隙を生んでしまう。

 


 失策であった。


 

「ねぇちゃん早くそこから離れろ!」



 遠くの方で戦いを見ていたホセが叫び声が聞こえ、我れに返った私は絶望した。


 ガディナの腹部に鎌が水平に接近しており、急いで上方に飛んでも間に合わなく、鉄骨を捨てしまったので盾に使うこともできないのだ。

 

 私は回避不能な巨大昆虫キメラの攻撃を前にして強く目をつぶる。



──もうだめ……ごめんねお父さん……お母さん。


 

 



「荒れ狂う風よ刃を成して切り刻め『ウィンドスキャッタ』」

 



 ノートンが唱え終わると同時に、虫型モンスターの空けた壁穴へ物凄い風が吹き荒れ、風の見えない刃が巨大虫型キメラの鎌三本と片側の脚を全て切り落とした。


 片側の脚を全て失った事によってその巨体はバランスを崩し傾く。

 しかし倒れる寸前、残りの鎌を床に刺し固定する事で転倒をま逃れた。


 私は目を開け胴体が分断されてない事を確認すると、手放した鉄骨を急いで拾い上げる。




「ノートン助かったありがと!」




 巨大昆虫キメラが床から一本鎌を引き抜き、ガディナ目掛けて串刺しにしようと鎌を振り下ろしてきた。



──よし! そう来るなら……



 勢いよく振り下ろされた鎌は床を破壊しながら勢いよく刺さり、ガディナは鎌に貫かれ死んだかと思った。

 しかしギリギリで躱すと左手で鎌にしがみつく。


 そして鎌を引き抜く反動を利用し宙へ舞い上がったガディナは、巨大昆虫キメラの頭より高く上昇すると右手に持った鉄骨を巨大昆虫キメラの頭部目掛けて思いっきり投げつけた。



「いっけええぇぇぇ!!!」



 巨大昆虫キメラへ投げた鉄骨は勢いをつけ巨大昆虫キメラの頭部を真っ二つにし、裂けた頭部から緑色の体液を噴水の如く吹き出しながら胴体奥深くまで突き刺した。


「やった!」


 床に刺した巨大昆虫キメラの鎌は力を入れ失い地響きを立てながら倒れるとそのままピクピクと痙攣している。

 どうやら危機的状況は打開したようだが、ベースが昆虫である以上また襲ってくる可能性も無くはない。



「見事だガディナ」



「そんなことないよ。ノートンが助けてくれなかったら私死んでたし。それにあんな凄い魔術使えたんだね」


「いや……あれは……」



 言葉が浮かばないのかノートンが視線を反らして苦笑すると、いつの間にかノートンの側へ来ていたマーテルがボソリと呟いた。



「ウィンドスキャッターって軍用魔術だよね。学校の先生がエスカルト軍の魔術士は軍事用の魔術を使うって言ってた」

 


「えっ……ノートンどういうこと?」



 マーテルの指摘にノートンは反論せず黙って俯く。


 ガディナはそんなノートンを燻る火種のように疑惑の目で見ていた。

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