表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第1話-英雄-


──西暦455年


 かつてセントラル大陸にはアビス教団と呼ばれる小さな教団が存在した。

 彼らは教祖ルシード・ザ・バッハを崇拝し、教団の目指す『法も秩序もない混沌の世界』を具現可させる為に暗躍を始める。


 そして教団は急速に拡大し、ルシード・ザ・バッハは『黒の書』と言うあらゆる黒魔術の禁忌が綴られた本を作成した。

 黒の書「第六章三節深淵からの侵蝕」を使い大規模魔術を展開すると、善良な市民は悪人へ変貌し悪人は悪魔へと姿を変貌させる。


 世界が闇へとのまれかった時、五人の英雄が現れ、アビス教団を壊滅させ激しい激闘の末にルシード・ザ・バッハを打ち倒した。


 そして230年経った今、アビス教は長い年月をかけ復活を果たし教祖ルシード・ザ・バッハを蘇らせようとアビス教団は動き始める。


 



* * * *





 私の名前はガディナ。

 何て言ったらいいのか、私は今おかしな場所にいる。そこには私一人だけしかいないみたいだし、例えるなら……まるで天国みたいな場所。



 そもそも私は何でこんな所にいるのだろう。

 ここへ来る前の事は覚えてないけど、もしかして私は死んだのかな? 



 目が開けられないくらい眩しい光に満ち溢れ果てのない空間である。

 無数に存在する光の粒子が螺旋状に渦巻きながら柱を形成し、空から底のない地へと落ちて見えなくなっていく。

 幻想的な光景に思わず見惚れていると、はっと我に返る。


 幻想的な光景に見惚れすぎて自分が宙に浮いている事を忘れていた。物理法則を無視して浮いているが特にこれと言って感想はない。



 



 強いて言うならば幽霊になった気分に近いと思う。



──私死んだのかな……




 ぼんやりと辺りを見回していると、目の前に鏡の様な板が現れ自分の姿が映し出される。


 腰まで伸びた極めて薄い桃色の髪が揺れ頭部から生えた獣耳がピクピクと動く。

 ピンク色の袖無しのワンピースを着て華奢な体で、見た目が幼いせいかよく子供扱いされ正直得した事はなく損する事が多かった。

 


 鏡の表面に波紋が広がると写っていた自分の姿は歪み、違う人物の姿が映し出された。



 黒いローブを羽織りフードで覆って顔半分は見えない。しかし口元に無精髭を生やしていることや貫禄が滲み出ているから男性だとわかった。



──この人は……只者じゃない……物凄い威圧感とよくわからないけど、凄まじい力をもってる。



 するとフードを被った男は重く引きずるような低い声で私に語りかけてきた。



「選ばれし者よ、これから数々の困難が待ち受けているであろう。しかし屈するな、己の信じる事ができれば道が開くであろう」

 

「あなたは誰なの?」



 私は恐る恐るローブを羽織った男に問いかけると、ローブを羽織った男の口元が僅かに綻んだような気がする。




「我が名はウィスプ……」




 ローブを羽織った男がガディナの問いかけに答えると同時に、螺旋状に流れ落ちる光の粒子が共鳴する様に光輝く。



 その最中微かに男の声が聞える。

 


「英雄リリーの意志を継ぎし者よ……我はそなたを祝福せん」


「貴方は……時の賢者……ウィル・オ・ウィスプなの……」



 そして空間全てを飲み込むかのように白く染め上げ私を飲み込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ