孤高の虎! 光極天六連星
リリスが目覚め、サイクロン魔法陣の結界も解除された。
それなのに、プリ様達は未だ帰れないでいた。六連星が後一泊して行けと、脅したり賺したりしていたからだ。
「せっかく、光極天の姫である私が降臨しているのよ。平民の義務として付き合いなさい。」
何が降臨だ。この女、天国に昇天させてやろうか。
紅葉は再び殺気を滾らせていた。
「リリスちゃん、ちょっと良いかい?」
乱橋に小声で呼ばれて、リリスは皆から少し離れた。
「何かしら?」
「んー、パジャマ姿のリリスちゃんもグッとセクシーだね。」
「…………。用が無いなら帰りますけど……。」
「あっ、いやいや違う。お嬢の事なんだけど……。」
その、取り敢えず口説こうとする姿勢はなんとかしろ。
「あいつ、リリスちゃんを笑いに来た、とか言ってんけど、実は、昴お嬢様の所在を掴んで、矢も盾もたまらず会いに来た、ってのが本当のとこなんだわ。」
「昴ちゃんは、胡蝶蘭叔母様から植え付けられた記憶で、やっと安定して来たのよ。あいつが、さっきみたいに『お姉様。お姉様。』連呼したら、また混乱するわ。」
「胡蝶蘭お嬢様か……。最近人妻の魅力が溢れて来ているよなあ……。」
「乱橋さん……。」
肉食獣か? こいつは。自分も胡蝶蘭も見境なしか。
リリスは思わず身構えた。
「あっ、いや、だからさ。俺とリリスちゃんで見張っていれば良いだろ? 一泊くらいさせてやってくれよ。」
そう言われると、六連星に対する憐憫の情が抑えきれないリリスであった。
彼女がお姉ちゃんっ子だったというのを、折にふれて聞いていたからだ。
「わかりました。ただし、監視は乱橋さんがやってね。私を巻き込まないで。」
「そりゃダメだ。風呂や寝る時はどうすんだよ。それに、さすがに俺は、お嬢の頭殴れんもん。」
私は殴って良いのか? お墨付きか?
リリスは深い溜息を吐いた。乱橋はそれを了承の意と受け取った。
気疲れするだろうな、と覚悟はしていたが、数分後、早くもリリスは後悔していた。空いている部屋に案内しようとしたら「私はお姉様と一緒が良い。」と言い出した六連星が、プリ様達の部屋について行ってしまったのだ。
「せ、せまいの。」
プリ様の呟きに『それはそうだろう。』と和臣は思った。八畳間に総勢七名を詰め込んでいるのだ。
「リリスが心配で残っていたけど、この女の言う事を聞く義理はないから、私達は帰るわよ。」
早々に紅葉が宣言した。
「アマリちゃんが心配で残っていた……。」
何故か、六連星は羨ましそうな顔をした。
「どうして? アマリちゃん、いつの間にお友達なんか作ったの? 私と同じ『孤高の虎』だと思っていたのに……。」
物凄いポジティブなボッチの表現方法だ。
プリ様は感心していた。
「私は貴女と違って、何処に行っても友達くらい出来るのよ。というか、私をアマリと呼ぶな。」
リリスがピシャッと言い放った。言外に「一緒にするな。」と言っていた。
「何? アンタ、友達居ないの? うわぁ、可哀想。」
囃し立てる紅葉に『お前が言うなよ。』と和臣は思っていた。
「居るわよ、私だって。アマリちゃんでしょ……。」
「私は親戚みたいなものです。そして、アマリと呼ぶな。」
「リチャードだって……。」
「俺は使用人だ。あと、リチャードは止めろ。」
二人から拒絶された六連星は、昴に泣き付いた。
「うわあああん、お姉様ぁ。皆がいぢめるのぉ。」
「何ですか、何ですか。一体、何なんですかあ?」
パニクる昴は、膝の上に乗せているプリ様を、思わずギュッと抱いた。
「くっ、くゆしいの。」
「こら、ガキ。何で、チャッカリお姉様の膝の上に居るのよ。」
「ここは ぷりの とくとうせきなの。」
「ふざけんな、ガキ。お姉様の膝の上に乗っていいのは私だけよ。」
六連星の発言に全員が静まり返った。
「お嬢〜。お前、その歳で昴お嬢様の膝に乗っかるつもりか?」
馬鹿か? と言いかけて、乱橋は自重した。
「要するにプリにヤキモチを妬いているのね。」
「六連星……、貴女……。」
紅葉とリリスの呆れ顔に耐えられなくなった六連星は、やにわにプリ様を抱え上げて、昴の膝から奪い取った。
「むつらぼしー。たかい、たかい。」
「ガキ、遊んでやっているんじゃないわよ。」
と言いつつも、リクエストに応えて、高い高いをしてやる六連星。
「プ、プリ様……。」
やばい。発作が起きる。
「お、落ち着いて、昴ちゃん。」
「プリ様。プーリーさーまー。」
リリスの説得も虚しく、昴は半狂乱でプリ様に手を伸ばした。
「返してー。返して下さい。プリ様を返してー。」
あまりに鬼気迫る様子に、六連星も素直にプリ様を手渡した。
「えへへ、ぷりさまっ。ぷりさま、ぷりさま。」
「すばゆ〜、くすぐったいの。」
ペタンと座り込んだまま、正面からプリ様を抱き締めて、昴は頬ずりを繰り返した。
「お、お姉様。そんなに、そのガキの事を……。」
「わかった? 六連星。今の昴ちゃんにはプリちゃんが必要不可欠なのよ。」
リリスに言われて、ガックリ肩を下ろす六連星。と思いきや、昴の前に正座して、その肩を掴んだ。
「わかりました、お姉様。神王院から、そのガキ買いましょう。一億でも、二億でも……。」
「プ、プリ様はペットじゃありません。」
「じゃあ、ガキのクローンを作りましょう。百人でも、二百人でも……。」
「そんなにいっぱいプリ様は要りません。」
「では、どうすれば帰って来てくれるんですか?」
「わ、私は光極天には帰りません。」
昴は取り上げられないよう、プリ様をきつく抱き締めて言った。
「私はプリ様のお嫁さんになったのです。嫁いだからには神王院家の人間も同然です。」
再び、全員が静まり返った。
なんて皆を静かにさせるのが上手い姉妹なんだろう、とプリ様は妙な感心をしていた。
「まあ、それは それとして……。」
「だから、それとしないで。プリ様。」
「な、何? どういう事なの? お姉様がガキの嫁?」
胡乱な発言に、今度は六連星がパニクっていた。
見兼ねたリリスは、彼女の手を引っ張って、部屋の外に連れ出した。乱橋も二人を追って行った。
「とにかく、貴女は私の部屋に泊まるのよ。おいで、六連星。」
「ちょっと待ちなさい。どういう事なの? まさか、神王院はお姉様に変な洗脳を施しているのじゃないでしょうね。」
「馬鹿言わないで。お人形みたいだった昴ちゃんを社会復帰させる為に、胡蝶蘭叔母様が、どれだけ苦心していると思っているの?」
そこで六連星はリリスの手を振り払った。
「やけに神王院の肩を持つのね。」
「…………。」
「そうよね。貴女は美柱庵と言っても、神王院の血しか流れてないものね。」
リリスの頰が紅潮し、右手が上がった。
「痛ぁぁい。何するの、リチャード。」
リリスの平手打ちよりも早く、乱橋のゲンコツが六連星の頭にヒットした。
「乱橋さん、貴方、さすがにお嬢は殴れないって……。」
「そ、そうよ。私の使用人なのに、アマリの味方をするの?」
「うるせえよ。使用人もクソもあるもんか。人として間違った事を子供が言ったら、大人として殴ってでも正す。リリスちゃんに謝れ、お嬢。」
六連星は瞳をウルウルとさせて、乱橋を睨んでいたが「私、悪くないもん。本当の事だもん。」と言って駆けて行った。
「すまねぇ、リリスちゃん。あの馬鹿には後できつく叱っておく。」
頭を下げる乱橋に、リリスは慌てて手を振った。
「貴方が謝らなくても良いわ。」
「俺は……、俺は光極天の奴等が、昴お嬢様にした仕打ちを、忘れられねぇんだ。六連星お嬢には、あんな奴等と、おんなじになって欲しくないんだよ。」
昴にした仕打ち……。
それはリリスもチラリと聞いていた。まだ、拐われる前の話だ。それがあったから、昴の失踪を聞いた時、神王院も美柱庵も、光極天の狂言じゃないかと疑ったのだ。
ふと、袖を引かれる感触を覚えて、リリスは振り返った。いつの間に戻って来たのか、六連星が立っていた。
「……部屋に案内して……、アマリ……。」
消え入りそうな弱々しい声だった。それを聞くと、乱橋ももう何も言えず、俯いた。
リリスも黙って歩き始めた。
「ごめんね、アマリちゃん……。」
暫く歩くと、六連星がポツリと言った。
リリスは微笑んで、彼女の頭を軽く小突いた。
前にチラッと書きましたが、タイトルを変えようと思います。
今期アニメのラインナップを見るに、今年は幼女が来るな、と思うのです。
乗るしかない。このビッグウェーブに。
という訳で、幼女が主人公であるのを、全面的に押し出すタイトルにします。
題して「勇者転生! 最強幼女プリムラちゃん!! もちろん敵も幼女です」です。
近々、改題予定なので、これからもよろしくお願いします。




