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私は私を手放さない

今回、プリ様と昴ちゃんの出番が、ほとんど有りません。

ごめんなさい。

 バンバンバンと扉を叩く音で、オクは眠りを破られた。


「おくさま〜。どうして かぎを しめてらっしゃるの〜。あけて くださいな〜。」


 オフィエルちゃんだ、マズイわ。

 オクはチラリとリリスを見た。


「お友達が来たんじゃないの? 行ったら?」


 それにしても、聞き覚えのある声ね。

 と、リリスは考えていた。


「いや、でも、りりすちゃんと うわきして いるのが ばれたら……。」

「私と貴女は浮気なんてしてませんから。」


 などと躊躇している間に、ドアがバーンとこじ開けられた。


「もおぉぉ。ひどいですわ。おくさまと ふれあえる きちょうな きゅうけいたいむ ですのよ。」


 文句を言いながら入って来たオフィエルと、ベッドに繋がれているリリスの目が合った。


「あらあら、オフィエルちゃんじゃない。貴女、そんな口調でも喋れるのね。」

「…………? だれですの、あなた。なれなれしい くち きかないで くださる。」


 マズイ。と、オクは焦った。

 洗脳を施した際に、幼女神聖同盟以外の記憶は消してしまっているのだ。


「…………。オクちゃん、どういう事? もしかして、オフィエルちゃん洗脳されて……。」


 リリスちゃん無駄に鋭い。これ以上、二人を接触させているのはマズイ。マズ過ぎる。

 オクは慌ててオフィエルの背中を押し、部屋の外に追い出した。


「おくさまぁ、なんですの? あのかた。ひょっとして、うわきを なさっているんじゃ……。」

「ち、ちちち、ちがうわよ。お、おふぃえるちゃんは わたしが しんよう できないの?」


 私を信用出来ないの?

 浮気をする人間の常套句である。


「じゃあ、あのおんなと べっどの うえで、なにを していたんですの?」


 拗ねて上目遣いで睨んで来るオフィエルちゃんは、尋常ではない可愛さね。

 思わず見惚れてしまうオクだったが『そんな ばあい では ないわ。』と、気をとりなおした。


「あのこは とらえた おんなきし(女騎士)よ。てきの どうこうを じんもん していたの。」

「べっどの うえで ですか?」

「だ、だから。なかなか くちを わらないから、ばつとして はずかしめを あたえようと……。」


 それって結局浮気なんじゃ……。

 と、オフィエルが思うより先に、オクは彼女に抱き付いた。


「あーん、かわいいわ。おふぃえるちゃんったら、やきもちやいて。だいじょうぶよ。わたしが あいしているのは おふぃえるちゃんだけよ。」

「あっ、だめです、おくさま。こんな ろうかで、うなじを すりすり しないで……。」

「これが すきなんでしょ。ほおら、すりすり。」

「ああん、いやいや。はしたない こえが でちゃうぅ。」


 一頻りうなじをスリスリしてやると、オフィエルは満足し、顔を赤らめながら、作業へと戻って行った。


「ふう。なんとか ごまかせたわ。」


 独り言を言いながら、部屋に戻ったオクを待っていたのは、リリスの冷ややかな視線だった。


「貴女、最低ね。」

「な、なんのこと かしら。お、おほほほほほ。」

「誤魔化し方が、ヒモの男そのものって、感じだったわよ。」


 そう言っても、オクは引き攣った笑いを繰り返すばかりだった。


「さてと、じゃあ、りょうじょくを さいかい しましょうか。」

「もう、寝なさいよ。オフィエルちゃんに叱られるわよ。」


 リリスの言葉に、オクはキッと目を剥いた。


「りりすちゃんの りょうじょくを たのしみに いろいろ けいかくを ねったのよ。いまさら あとには ひけないわ。」


 無茶苦茶迷惑な話だなー。

 リリスは頭を抱えた。


「それに りりすちゃん あした ころされちゃう かもしれないし。こんや、たのしんで おかないと。」


 事も無げに言われて、リリスはギクリと身を縮めた。


「やっぱり処刑するというのね?」

「わたしは もっと りりすちゃんで あそびたいから はんたい なんだけど……。」


 オクはベッドに上がり、鎧の腰当てを外しながら、喋っていた。


「ふくじゅうの むちうちを するって、べとーるちゃんが きかないの。」

「何なの、それ?」

「あのこの すきな あそびよ。じゅっかい むちうたれるのに たえられたら じゆうのみ。たえられなければ かちくに なる。」


 オクは両手に腰当てを抱え「とれた。」と満足気に言った。


「まいきちゃんは にかいしか たえられなかったわ。」


 微笑みながらオクは話し続けた。


「りりすちゃんは ぜったいに ふくじゅうしない でしょ? でも、じゅっかい むちうたれれば しんじゃうと おもうの。」


 こいつ等、やっぱり屑だ。

 リリスは嫌悪に顔を背けた。


「おこった かおも すてきよ。」

「触らないで。」


 頰をスルリと撫でられて、反射的に言った。


「さっき、りょうじょくの いみを しっているのかって、きいたわよね?」


 両手で顔を掴まれて、強制的にオクの方に向けられた。顔が間近だ。


「わたしが おしえて あげる。」


 オクの左手が、リリスの胸に当てられた。


「りょうじょくって いうのはね、がーどの かたい こころを はくじつの もとに さらして やることよ。」

「や……めて、何を……するの?」


 左手はリリスの体内にまで侵入した。そして胸腺の辺りにある賢者の石に触れた。


「おかしいと おもっていた。くれおは とーるたちと ちがって かみがみの かごを うけていない。どうして あなたが いせかいで まものと ならないのか。」

「止めて、止めて、言わないでぇ。」


 いつも冷静沈着なリリスが、髪を振り乱して狼狽していた。


「この けんじゃのいし(賢者の石)は あなたの ちからの みなもと なんかじゃ ない。ぎゃくよ。」

「許して。もう、許して。」


 泣き叫ぶリリスの顔を、オクは面白そうに見詰めていた。


「やっぱり あなたは りりす(化物) なのよ。まおうの はなよめ だわ。」

「違うわ。違うわ。私は汚れてなんかいない。私は穢れた血なんかじゃない。」


 子供の様に泣きじゃくるリリスの髪を、オクが優しく撫でた。その涙を舐め、唇にキスをした。


「わかっているわ。わたしは わかっているわよ。りりすちゃんの こと。」


 悪魔の甘美な囁き。


「わたしなら うけいれて あげられる。だれにも りかいして もらえない あなたを。」


 リリスは天井を見上げたまま、涙を零し続けた。

 最後に手甲が外されて、もう身に着けている物は、下着以外、何もない状態になった。


「とても きれいよ。りりすちゃん。」


 オクは、彼女の身体の稜線を撫でつつ、言った。


「わたしもね、あなたと おなじ。この せかいに うけいれられず、いせかいに かくれすむ いぎょうの そんざい……。」


 リリスの腕の縛が解かれた。


「さあ、たって。」


 二人はベッドから降りた。


「わたしの しはいを うけいれなさい。えいえんの あんねいが えられるわ。」


 もう呪文は始まっていた。これは、かつてトールがエロイーズに施した奴隷の契約を結ぶ儀式だ。

 リリスの足元に呪縛の魔法陣が現れた。


「わたしに れいぞく(隷属) しなさい。そうすれば、しぬかもしれない むちうちも されなくてすむわ。それに……。」


 オクの口元が愉悦に歪んだ。


「だれにも きがねなく、ぞんぶんに あなたじしんの ちからを ふるえるわよ。」


 触れない様に、触れられない様に、心の奥底に封じていた想いを、赤裸々にされて、打ちのめされていたリリスは、オクの甘言を迷い無く受け入れていた。


 全ては、奴隷となる事をリリスに受け入れさせる、オクの狡猾な策略だった。


 リリスはオクの足元に跪いた。


「さあ、わたしの てを とりなさい。じぶんの むねに おしあてるの。そうすれば、わたしの もんしょうが からだに きざまれる。わたしの ものに なった しるしよ。」


 オクの物になる……。

 リリスは彼女の手を取った。それを自分の胸に導いて……。




「だめなの! りりす。」


 管理センターの休憩室で仮眠を取っていたプリ様が、突如目を覚まして叫んだ。


「どうしたんですか? プリ様ぁ。」


 側でウトウトしていた昴が、眠そうに声をかけた。


「りりす、わすれちゃ だめなの。りりすには ぷりが いゆの。すばゆが いゆの。かずおみだって、もみじだって いっしょなのー。」




 リリスはオクの手を振り払った。


「私は、私を手放さない。どんなに、この世界が私にとって残酷でも、決して目を背けたりはしない。」


 その言葉に、オクは溜息を吐いた。

 リリスは床に蹲って、泣きながら「手放さない。手放さない。」と、叫んでいた。

オクちゃんって……、何か最低……。

と、自分で書いていて思いました。

まあ、悪の首領だし、仕方ないかな……。

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