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さきに つかおうと おもっていたのに〜。

「プーリ様♫ プーリ様♫ プリプリプリプリプーリ様♫ 強いぞプリ様♫ 凄いぞプリ様♫」

「……昴ちゃん。その珍妙な歌は何かしら。」


 島の管理センター横の広場で、プリ様を中心にして、手を上げ下げしながら回っている昴を見て、堪え切れずにリリスが突っ込んだ。


「あと、その古代ケルト人がルゴス神に生贄を捧げる時の様な、奇怪な踊り……。」

「酷いですぅ。これは、今、昴が考案した『プリ様を褒め称える舞』ですぅ。」


 運動神経皆無なんだから、創作ダンスなんて無理よ。

 そう言い掛けて、リリスは口を噤んだ。


「ああっ、プリ様。なんて、賢くてお強いのかしら。昴は信じておりましたよ。いざとなったら、プリ様が『プリプリキューティ レモネード サンダー』で敵を追い払って下さると。」


 ついさっきプリ様が思い付いた技であろう「プリプリキューティ レモネード サンダー」を、前から知っていたみたいに言うのだな……。

 リリスは、無表情のプリ様に頬擦りや愛撫を繰り返す昴を、眺めながら思っていた。


「昴ちゃん? 一応、敵をやっつけたのは私の『ゴールデンアロー』なんだけど……。」

「……? そうでしたっけ?」


 見てないのか……。本当にプリちゃんしか見てないんだ……。


 リリスは頭を抱えた。


「やっぱり、プリちゃんから一時間隔離する特訓やった方が良いのかな?」


 ボソッと言った独り言を、昴は聞き逃さなかった。慌ててプリ様にヒシとしがみ付き、目を潤ませていた。


「嫌です。嫌ですぅ。しないって言ったじゃないですか。リリス様は嘘吐きですぅ。啄木鳥ですぅ。狐憑きですぅ。」


 えらい言われようだわ……。

 リリスは密かに傷付いた。


「やっぱりやろう。この戦いが片付いて、異世界化を食い止めたら、昴ちゃんは三十分プリちゃんと隔離される刑ね。」


 刑と言ってしまっているし……。


「いやぁぁぁ。お許し下さい。何でもします。舐めろというなら、靴でも舐めますからぁ。」

「すばゆ、おちつくの。りりすは さんじゅっぷんに へらして くれてゆの。」


 さり気無いリリスの優しさだったが、プリ様から引き離される恐怖に怯える昴には、一時間が三十分だろと、関係ないのであった。


 その時、上空に再び不穏な影が……。空飛ぶ魔物達の第二波がやって来た。


「懲りないわね。今度も私達で力を合わせてやっつけましょう、プリちゃん。私とプリちゃん二人の力で。」


 リリスは矢鱈と「私達」や「二人で」を強調した。


「わ、私だってプリ様のお役に立ってますぅ。」

「あら、どんな?」


 行き掛かり上、ちょっと意地悪な受け答えをしてしまうリリス。


「ええっと……。汗を拭いて上げたり、後ろで応援したり……。」


 指折り数える昴の言葉は、プリ様の「来た。」という一言で止まった。


「ぷりぷりきゅーてぃ れもねーど さんだー。」


 プリ様がレモネードサンダーを放った。しかし、それは上空から落ちて来た、もっと大きな雷に掻き消された。


「きさまが 『ぷり』か!」


 魔物供を従え、その先頭を、翼を生やした幼女が一人飛んでいた。可愛らしいというよりも、凛々しい顔立ちの女の子だった。


 プリ様よりも一回りほど大きな身体つきだが、太っている訳ではない。単に体格が良いのだ。成長したあかつきには、背の高い麗人となって、クラスメートの少女達からキャーキャーと言われそうなタイプだ。


「おれは ようじょしんせいどうめいを たばねる ななだいてんしの ひとり。なは べとーる!」


 カッコいい、とプリ様は思った。ベトールがではない。彼女の付けている翼がであった。


 ベトールの翼は、他の者が付けている物よりも数が多く、大小の四枚羽になっていた。オフィエルが指揮官用にと作った特別品だ。


「ベトール、貴女が舞姫ちゃんを拐ったの?」


 見上げて叫ぶリリスに、ベトールは冷笑を返した。


「まいき? おれの かちくの ことを しっているのか?」


 家畜?! こいつら、本当に自分達以外は家畜にするんだ。怖くなった昴が、プリ様にしがみ付いた。そのプリ様は、怒りで身体をプルプルと震わせていた。


「舞姫ちゃんは無事なの? 今、どうしてるの?」

「ぶたごやで かっている。もちろん はだかだ。かちく だからな。まいにち まものたちに いじめられて ぶーぶー ないているぜ。」


 完全に嘘なのだが、プリ様やリリスが怒っているのを見たベトールは、彼女達の平静さを失わせる為に挑発した。


「べとーゆ!!」


 怒りにまかせて、反重力パンチアンチグラビティパンチを繰り出そうとするプリ様の肩をリリスが掴み、その行動を制した。


「ダメよ。避けられたら宇宙に落ちちゃうわよ。」

「りりすは おこらないの?」


 激情に息を荒くしながら、プリ様は聞いた。


「冷静さを失ってはいけない。それは敵の思う壺だから。」

「! ……。」

「前世で貴女が言っていた言葉よ。忘れちゃった?」


 プリ様は三歳の女の子だ。

 どれだけ老成した戦士であった前世の記憶があっても、それはあくまで知識として存在しているのだ。己の感情のコントロールまでは、その頃の様にはいかない。


 それでも、リリスに窘められて、プリ様は大きく深呼吸した。

 もう、大丈夫。


「ぷりは べとーゆを あいてに すゆ。りりす、ざこを やっつけてくれゆ?」

「雑魚じゃ不満だけど……。良いわ。今回は譲って上げる。」


 二人は顔を見合わせて、微笑み合った。


『いいなぁ。プリ様とリリス様は戦士の絆で結ばれているんだ。』


 羨ましい……。

 と昴は思った。


『ようし、昴も頑張るぞ。私だって元魔族だし、手からビームくらい出せるかも。』


 張り切った昴がグッと腕に力を込めた時、ベトールが結界を抜けて侵入して来た。


「こ、怖い〜。プリ様、プリ様ぁー。」


 頭の上を飛び回るベトールに、昴は恐慌状態に落ち入った。


「すばゆ、いわかげに かくれて いゆの。」


 はいぃぃ、と返事をしながら、昴は這って岩陰に逃れた。腰が抜けて立ち上がれなかった。


「ぷりぷりきゅーてぃ ぜぶら さんだー!」

「なにぃ?!」


 大きい方の羽でゼブラサンダーを防いだベトールが驚愕に目を見開いた。


「おまえ、ぜぶらさんだーを つかえるのか。」

「そうなの。」


 プリ様は威張って胸を突き出した。

 勝手に名前を使っているだけなのにな……、と思いながら、リリスは飛び上がり、上空の敵に向かった。


「むっ、まて、いかせるか。」

「ぷりぷりきゅーてぃ おーるてんねんしょく さんだー!」


 リリスの行く手を阻もうとするベトールに、プリ様は再び攻撃を仕掛けた。

 リリスは無事に行けたが、オール天然色サンダーも大きな羽に弾かれてしまった。


「なんと、おーるてんねんしょく さんだーまで つかえるのか。」

「つかえゆの。」


 ベトールの再度の驚きの声に、プリ様は鼻高々であった。


「ならば おれも つかわずば なるまい。」


 ベトールはケラウノスを振るった。


「ぷりぷりきゅーてぃ ぜぶらさんだー まっくす!」


 今度はプリ様が驚愕する番だった。なんと、切り札としてとっておいた「プリプリキューティゼブラサンダーマックス」を、ベトールに使われてしまったのだ。


「ずゆいの。それは ぷりのなの。さきに つかおうと おもっていたの。」


 プリ様は原子核の大量投入によって、稲妻を無効化しながら抗議した。


「ずるいも くそもあるか。はやいものがちだ。」


 ベトールは小馬鹿にする言い方で返した。


「それなら、えーと、ぷりは……。」

「ぷりぷりきゅーてぃ どりーむ さんだー。」

「ああっ。ずゆい、ずゆい。ぷりが いおうと おもっていたのにー。」


 またも放たれたベトールの攻撃を防ぎながら、プリ様は癇癪を起こしていた。


「おのれ、べとーゆ。ぜったいに ゆゆさない(許さない)のぉ。」


 プリ様の全身から、紅い怒りのオーラが立ち昇った。

 フフンと、嘲笑いながら、その怒りを受け止めるベトール。二人の間に飛び散る火花。


 見上げるプリ様、見下ろすベトール。対峙する二人の幼女。

 今、宿命の対決の幕が、切って落とされようとしていた。







タイトルを変えようかなと、ちょっと思っています。


当初は、雑魚はリリス、和臣、紅葉が蹴散らして、中ボスや大ボスは、奴隷の契約によってプリ様が昴の身体を操り、最強の剣、ゲキリンとトラノオで倒す、という予定でした。


つまりプリ様は全然表に出ず、皆んなもプリ様が強い事を認識していない、という設定だったのです。


ところが、その、昴ちゃんが予想外に弱過ぎて、武器を持つのさえ怖がるキャラクターになってしまった為、プリ様がガンガン最前線に出て行くようになったのです。


完全にタイトル詐欺です。でもこのタイトルに愛着もあるので悩んでいます。

ある日、いきなりタイトルが変わるかもしれませんが、驚かないで下さいね。

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