表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/303

イウンマ太陽系から来たウンモ星人です

 何だか精彩さを欠いた表情の昴に、プリ様が頬ずりをされている最中、曽我さんが、これ以上ないという驚きを顔に貼り付けて、近寄って来た。


「リ、リリスちゃん? 空飛んでなかった?」


 しまった。よりによって、曽我さんに見られていたなんて……。プリ様と昴の身体が、緊張で強張った。


「飛んでたわよ、渚ちゃん。」

「リ、リリスちゃん?! 今なんて?」

「な・ぎ・さ・ちゃん。」


 名前で呼んでもらえた。

 その事実に渚ちゃんの涙腺は崩壊状態。ヒシッとリリスに抱き付いて泣いた。リリスは左手で背中をさすりながら、右手で頭を、よしよしと、摩った。


「良かったですね、渚さん。」

「なぎさしゃん、おめでとうなの。」

「貴女達も……。ありがとう、ありがとう。私は三国一の幸せ者だよう。」


 感激のあまり、飛行行為に関しては、頭から抜け落ちてしまったみたいだ。


 チョロいわぁ。


 と、リリスは紅い舌をペロリと出していた。


「プリちゃんは、あの子とお友達になれた?」

「うん! なれたの。」

「良かったねぇ。」


 渚ちゃんはプリ様のホッペタを両手で摩った。プリ様もキャッキャッと喜んでいる。いつもならヤキモチをやいた昴が、プリ様を抱き寄せに行く展開なのだが、チラッと見ただけで大人しくしている。

 プリ様と渚ちゃんは手を繋ぎ、信号が青になった日比谷通りを横断し始めた。昴はリリスと並んで、その後をついて行った。


「あらあら、しょぼくれちゃって。どうしたの?」

「リリス様、私……。」

「なあに? プリちゃんと喧嘩でもしたの?」

「私、もしかして、プリ様のお世話係じゃなくて、お世話され係なんでしょうか?」


 あっー。自分の存在意義に疑問を持ってしまったか……。あらあら、困ったわね。とリリスは思った。


「でも、プリちゃん、まだ歯磨きやお着替えを一人じゃ出来ないんでしょ? 昴ちゃんが面倒みて上げないと……。」

「……! そっか。なあんだ、プリ様ったら生意気言って。昴がついてないと、てんでダメですね。」

「そ、そうね。そうそう。」


 復活した昴は、道路を渡り切ったプリ様に駆け寄り、渚ちゃんの手から奪い取って抱き付いた。そして、そのまま、歩道の真ん中でプリ様ラッシュを始めた。

 それを見ながら、リリスは少し溜息を吐いた。


『エロちゃんの時は、トールに依存して頼り切って生きている事に、何の疑問も持ってなかったのに。昴ちゃんになってから、面倒臭さがグレードアップしたわね〜。』


 今回はいつもより長い時間(五分程)プリ様との接触をしていなかったので、その分、愛撫の仕方も半端じゃなかった。道行く人はなるべく視線を向けないように歩き、渚ちゃんはドン引きしていて、プリ様は無表情で為すがままだった。


「は〜い、その辺にしましょうね。ただでさえ、昴ちゃんは目立つんだから。」

「も、もうちょっとだけです。後、二、三回、サラサラのお髪に指が通せれば……。」


 ダメだ。禁欲期間が長かった(五分)から、抑えが効かなくなっている。リリスは攻め方を変えた。


「まあ、プリちゃん、偉いわねぇ。駄々っ子の昴ちゃんの相手をして上げて。」


 それを聞いて、昴の動きが止まった。


「ほらほら、うんと甘えなきゃ。昴ちゃんは、プリちゃんよりも、赤ちゃんなんだから。」


 昴は照れた顔で立ち上がり、ご迷惑をお掛けしました、とばかりに、周りの人達にペコリと頭を下げた。その愛らしい姿に、周囲の人達は男女問わず相好を崩した。


 可愛いは正義。


 渚ちゃんは妙な納得をして、頷いていた。


「じゃあ、行きましょうか。なんだか、ちっとも進んでないわよ。」


 リリスが号令すると、全員が「はーい。」と同意した。

 その二分後……。


「リ、リリス……様、少し休みませんか……。」


 息も絶え絶えの昴の提案に、他三人は驚愕した。


「す、昴ちゃん? まだ、家から五百メートルも離れてないわよ?」

「な……なんだか色々……あったせいで……疲れちゃいました。」


 あらあら、エロちゃんも確かに体力は皆無だったけど、皆から脱落したりはしなかったわよね……。

 そこまで考えて、リリスは気が付いた。

 そうか、あの()はトールの肩に乗っかって移動していたから、そもそも歩いてないわ。


 リリスは、お饅頭屋さんまで七百メートルくらいしかないのに、往復で二時間かかるという昴の計算を不思議に思っていた。だが、こんな調子だと、半日かけても帰れないかもしれない。


「あら〜、思った以上に大変な任務だわ。」

「って、何でリリスちゃん楽しそうなの?」

「ノンビリ行きましょうよ。渚ちゃんはお急ぎなのかしら?」

「別に急いではないけど……。」


 名前で呼ばれる度、渚ちゃんの胸はときめいた。


『あれ、おかしいな? 知佳達に呼ばれたって、こんなにはならないのに。きっと、リリスちゃんの名前呼びはレアだからだな。』


 渚ちゃんは無理に自分を納得させた。


「りりす。あそこに しおかまじんじゃが あるの。やすめるの。」


 プリ様の指差す方向には、確かに潮鎌(しおかま)神社という小さな社があって、境内が公園になっていた。


「昴ちゃん、あそこまで頑張れる?」

「ハァハァ……、大丈夫です……。すみません……、体力なくて……。」

「あらあら、そんなに恐縮しないで。体力も、持久力も、運動神経もないのは、前世から知っているわよ。」


 前世って、ゲームの話だな。昴ちゃん鈍そうだから、きっとゲームでも弱いんだろうな。それをリリスちゃんやお兄ちゃん達がフォローして上げているのか。お姫様みたいだな。滅茶苦茶綺麗だし……。


 昴とリリスの会話を聞きながら、渚ちゃんは考えていた。


 綺麗……過ぎるよね……。触った感触は肌の質感といい確かに生身だったけど……。これ程体力がないというのも何か怪しいし……。


「ちょっ、ちょっと、渚さん。何してるんですか!? 止めてー。スカートめくり上げるのを止めてー。」

「曽我さん、変態なのかしら?」

「そがしゃん、へんなたいなの。」


 あっ、ヤバイ。リリスちゃんが曽我さん呼びになっている。

 渚ちゃんは我に返った。


「ご、ごめんなさい。昴ちゃんの内部構造が知りたくて……。」

「どうして皆、私の内部構造を知りたがるの。っていうか、人間です。中身は渚さんと同じです。」


 それが信じられないから中身がみたいのよ。自分と同じ人間と言われるよりは、イウンマ太陽系から来たウンモ星人です、って言われた方が、まだ納得出来るよ。

 腑に落ちないという表情の渚ちゃんを見て、リリスは溜息を吐いた。


「明日はお休みだし、渚ちゃん、今夜は私とプリちゃんちに泊まってみる?」


 えっ、リリスちゃんとお泊り! 渚ちゃんのテンションは一気に跳ね上がった。


「一緒にお風呂に入れば信じるでしょ。昴ちゃんが人間だって。」


 言いながら、あまりにもバカバカしい証明だわ、と思っていた。


「えっ、一緒にお風呂に入るんですか……。」

「大丈夫よ。紅葉ちゃんじゃないんだから。いきなり襲いかかって来たりはしないでしょ。」

「何々? 紅葉ちゃんがどうしたの?」


 会話に割り込んで来た渚ちゃんに、二人は苦笑いで手を振った。


「きいたじゃ〜ん。その おふろに わたしも まぜるじゃ〜ん。」


 突然、頭上から声が響いた。見上げると、街灯の上にオフィエルが立っていた。


「何者?」


 リリスがこっそりプリ様と昴に尋ねた。


「さっき すばゆを いぢめたの。わるいやつ なの。」

「幼女神聖同盟七大天使の一人、オフィエルちゃんです。変態幼女です。」


 慈愛医科大学病院の前で、プリ様と戦っていた相手だろうと察しはついていたが、二人の簡潔な説明で大体の経緯もわかった。


「わたしも いっしょに おふろに はいって、おにんぎょうのからだを すみずみまで しらべたい よっきゅう。」


 相変わらず、ふざけた物言いをしやがって。言い返してやる、とプリ様が口を開くよりも先に、渚ちゃんが叫んだ。


「きゃあああ。貴女、何やってんの? 早く降りなさい。」

「ふっ、ぐみんは だまれ っておもうのよ。」

「どうしたの? 降りられないの? 錯乱しているの? きゃああ。警察〜、消防署〜!」

「いや、ちょっと まてってかんじ? おりるから けいさつは よぶなって おねがい?」


 二人のやり取りを聞きながら、それが普通の反応だよな、と三人は思っていた。幼女が街灯の上にいたら、そら大騒ぎだよな。


 渚ちゃんだけでなく、大人達も集まって来て、周囲はパニック状態になっていた。






実は昴ちゃんは、地球の文明レベルを調べる為に送り込まれた、宇宙人の子供です。

彼等は遺伝子をいじくりまくって、容姿、知能ともに極限まで完璧に調整されています。

ただ、機械に頼った生活をしているので、体力や運動神経は地球人より劣るのです。

もちろん、昴ちゃん自身はその事を知りません。

その宇宙人の昴ちゃんが、たまたまエロイーズの生まれ変わりだったという非常に複雑な話なのです。

というような設定は、全く有りませんので、安心して下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ