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高機能神様ブロック!

 エレベーターを降り、白山祝田田町線という都道に出たところ「あれ、リリスちゃんじゃない。」と声を掛けられ、全員で振り返った。プリ様は、どこかで聞いた覚えのある声だ、と思っていた。

 其処にはリリスと同じ制服を着た、恐らく同級生であろう少女が立っていた。(ちなみに、リリスはイギリスの学校から転校して、初登場時と制服が変わっています。)

 三人は、何か話し掛けて来るのを待っていたが、彼女は昴の顔を見て固まっていた。


「嘘でしょ? これ、本物?」


 少女は近寄って、昴の顔を撫でた。


「あ、あのぉ、止めて下さい……。」

「いや、だって、信じられない……。本当に生きてる人間なの? 作り物じゃなくて? 嘘でしょ。綺麗過ぎるでしょ。」

「だ、だから……、ペタペタ触らないで……。ああ、頰っぺた引っ張らないで……。」

「凄い、凄ーい! 生物(なまもの)なんだ。見て、リリスちゃん。息してるよ、この子。こんな美人さん、見た事ない。」


 その刹那、プリ様の頭に火花が走った。


「なぎさしゃん!」


 前に電話で話した和臣の妹、渚ちゃんの声だと思い至った。


「んんっ? その声は、貴女、もしかしてプリちゃん?」

「あらあら、二人はお知り合いだったの?」

「でんわで はなしたの。かずおみと もみじが とまったとき。」

「渚さんとリリス様は、どの様な関係なんですか?」


 昴がそう言うと、また渚ちゃんは彼女の顔を凝視した。


「様って何? 何でリリスちゃん、様付けなの?」

「あらあらー、私、偉いのよ。じゃあね、曽我さん。」


 リリスはさり気なく離れようとしたが、空気を全く読まない渚ちゃんは、そのままついて来た。


「私とリリスちゃんはねえ、同級生なの。リリスちゃんが、うちのクラスに転校してきたのよ。イギリス帰りだって。凄いねえ。」


 プリ様と昴を相手に一人で喋っていた。


「曽我さん、私達買い物に行くのよ……。」

「買い物? 何買いに行くの? 良いよ、付き合うよ。」


 暖簾に腕押しである。


「ところで、プリちゃんと知り合いなら、もしかして、リリスちゃんと昴ちゃんも、お兄ちゃんを知っているんじゃない?」


 特に自己紹介をしたわけでもないのに、もう「ちゃん」付けで呼ばれているなあ。と昴は思った。


「和臣ちゃんは……。」


 言いかけて、おっと、と口を押さえるリリス。だが、渚ちゃんは見逃してはくれなかった。


「和臣"ちゃん"? 酷い、リリスちゃん。私の事はよそよそしく『曽我さん』なんて呼ぶくせに、お兄ちゃんは"和臣ちゃん"って呼ぶんだ。」


 渚ちゃんは、恨みがましい目つきで、リリスを見た。リリスは『あらあら、仕方ないわねぇ。』と、少し妥協した。


「な、渚ちゃん?」

「何? 何?」


 初めてリリスに名前で呼んでもらえて、嬉しさに瞳が超新星並みに輝いた。

 どれだけ人懐っこいのかしら、この子。と苦笑いしながら、リリスは話を続けた。


「私とプリちゃんと、昴ちゃん、和臣ちゃん、紅葉ちゃんは、前世でパーティを組んでいた冒険者仲間なの。だから、今世でも親しくしているのよ。」


 ズバッと言った。

 なんて、大胆な奴。とプリ様は感心した。

 昴は、電波ちゃんだと思われるかもしれない、と怯えた。

 渚ちゃんは暫く驚きに口を開いていたが、やがて、手をポンと一つ打った。


「つまりあれだね。ゲームだね。オンラインゲームでパーティ組んでて、オフ会やったら、意外と皆近くに住んでて、つるむようになったって感じだね?」

「そういうような感じかしら〜。おほほほ。」


 恐ろしい奴。渚ちゃんの反応まで見越した上で、一切嘘を吐かずに、複雑な関係を説明してしまった。しかも、これなら、渚ちゃんの前でうっかり前世の話をしても、ゲームの事だと思ってくれる。

 美柱庵天莉凜翠は策士です。


「ねえ、職業は? お兄ちゃん、何の職業やっているの? 」

「魔法使いかしら〜。」

「アハハ、魔法使いなんだ。ねえねえ、貴女達は何なの?」

「私は騎士かしら〜。」

「ぷりね、ぷりは ゆうしゃ。」


 ああ、なるほどね。勇者より魔法使いの方が下っ端っぽいもんね。だから、前にプリちゃんは、お兄ちゃんを家来と言ったのか。

 渚ちゃんは、魔法使いの人達が聞いたら、気を悪くするような理解の仕方をしていた。


「昴ちゃんは?」

「わ、私は……奴隷です……。」

「えっ?」

「も、もう、ゲームのお話はいいんじゃないかしら。」

「でも、今、昴ちゃん確かに奴隷だって……。いくらゲームでもそんなの酷いじゃない。皆で昴ちゃんを奴隷扱いしているの?」

「ち、違いますぅ。私はプリ様の奴隷です。お優しくて、賢くて、可愛いらしい、天使そのもののプリ様だけの奴隷なんですぅ。ああ、プリ様、プリ様〜。」


 発作が始まったか。

 リリスは溜息を吐いた。

 昴はプリ様を抱き締め、頬ずりをしている。プリ様は例によって、無表情で為すがままだ。

 渚ちゃんは、突然始まった昴のプリ様ラッシュを、吃驚して見ていた。


「美人さんなのに、ちょっと変わっているのね。」


 リリスにソッと耳打ちして来た。


「プリちゃんを好き過ぎてて……。それ以外は普通なんだけど……。」


 幼女の奴隷を自認している時点で普通ではないか、と思ったが、何となく渚ちゃんが納得しているので良しとした。


「それより、大切な人を聞き忘れていたよ。紅葉ちゃん。紅葉ちゃんは何の職業なの?」

「彼女はプリーステスなのよ〜。」

「プリーステス! ああ、何かピッタリだね。清楚でお淑やかな紅葉ちゃんらしい職業選択だよ。」


 その言葉を聞いて、昴のプリ様ラッシュがピタリと止んだ。プリ様も驚愕に目を見開いている。リリスに至っては、驚きのあまり、時間が静止したみたいに固まっていた。


「あ、あらあら、ごめんなさい。まあ、ものの見方は人それぞれよね。」

「そ、そうですよ。斜め上辺りから見れば、そう見えるかもしれませんよ。ねっ、プリ様。」


 プリ様は言葉も無く「う、うん。」と頷くだけだった。


「ところでさ、お兄ちゃんと紅葉ちゃんがプリちゃんちに泊まった時の話を聞かせてよ。一緒の部屋だったんでしょ?」

「プリちゃんから聞いたの?」


 リリスは少し咎める目でプリ様を見た。ごめんなちゃい、とプリ様も目で謝った。


「私も一緒の部屋で寝たのよ。」


 今度は平然と嘘を吐いた。


「えっ、だって、プリちゃんが『あのねぇ、おふとんの うえで じゃれてた。もみじ、すこし はだかだった。』って……。」

「あらあら、私がお風呂に入っていた時ね。部屋に戻ったら、二人が枕投げをして、はしゃぎ回ってたわ。」


 それを聞いて、ホッとしたような、ガッカリしたような表情を浮かべた。


「なあんだ。そうだったんだ。私、てっきり……。」

「二人がセックスしていたと思った?」


 リリスの発言に、渚ちゃんと昴が凍りついた。プリ様はキョトンとしていた。


「プ、プリ様、聞いちゃダメです。」

「リ、リ、リリスちゃん、大胆過ぎだから。」

「あらあら、イギリスじゃ、このくらい普通よ。」


 嘘だ。絶対、嘘だ。

 と二人は思った。プリ様はキョトンとしていた。


 ここで、疑問に感じる人もいるかもしれない。プリ様は、幼女といえども、二十歳を越した青年だった前世を思い出しているのだ。当然、男女間の営みについては知っているのではないか、と。

 実は前世の記憶が蘇っても、十八歳未満の場合は、その辺に関してはボカシが入るのだ。これは、輪廻転生を司る神様の教育的配慮であって、業界用語で「神様ブロック」と呼ばれるものである。


「すばゆ〜、せっくすって なぁに?」

「そ、そ、そ、それはー、えっーと、昴も、実は良く知らないのですけど……。」


 昴は何となくエッチな言葉という認識だ。


「プリちゃん、セックスっていうのはね……。」

「せ、説明しないでー。」


 昴と渚ちゃんは同時に叫んだ。


「リ、リリスちゃん、意外と要注意人物だね。」


 渚ちゃんは、プリ様の手を引いて、リリスから遠ざけた。

 リリスは、真っ赤になっている、昴と渚ちゃんの顔を見ながら『あらあら、けっこう楽しい道中になりそうだわ。』と、内心ほくそ笑んでいた。







エロイーズ時代の記憶が蘇ってから、昴ちゃんはプリ様の奴隷という立場に、トキメキを覚えるようになってます。

出来ればプリ様のネームの入った首輪を付けて欲しいな、などと危険な考えも抱いています。

所有物であれば、プリ様が幼稚園に通うようになっても、持ち物の一つとして連れて行ってもらえるかもしれないと、淡い期待をしているのです。

本当に先が思いやられます。

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