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理想的なお椀型

『つかれたの……。』


 完成形のグラヴィティウォールを、七枚も作成したのは初めてだったので、プリ様は、ちょっとした、疲労感を覚えていた。


『こんな とき、すばゆが いてくれたら……。』


 ふと、思い出し、そして、身震いした。


『そういえば、すばゆ、だいじょぶ かな。ぷり いなくて、ぱにっく なってゆんじゃ(なっているんじゃ)……。』


 一見、昴を心配しているみたいだが、その実、彼女の暴走で、事態がややこしくなるのを、危惧しているのだ。




 そして、その危惧は現実のモノに、なろうとしていた。


「プププ、プリ様。プリ様が呼んでるんですぅぅぅ。」


 と、いきなり、昴が、覚醒してしまったのだ。


「裏葉ちゃん。結界から出して下さい。プリ様が……。」


 紅葉と和臣の(痴話)喧嘩が、シャレにならない規模の破壊を、もたらしているので、とりあえず、再び、エンジンルームに結界を張って、籠っていたのである。


「ななな、何を言っているのかなあ、スバルンは。ちゃんと、プリちゃま、抱いているよ。」


 韜晦しようとしている、藤裏葉。彼女も、また、追い詰められていた。リリスに、翔綺とポ・カマム、昴の事を託されたのに、いつのまにやら、翔綺が居なくなっていたからだ。この上、昴にまで、何かあれば、無能の誹りは免れない。


「これは、ポッカマちゃんですぅ。プリ様が、昴を呼んでいるんですぅ。」


 私の幻術を見破るとは。スバルン、恐るべし……。藤裏葉は、小さな小さな目を、驚愕に見開いていた。


「で、でも、翔綺様も、居なくなっちゃったし……。」

「何言ってるんですぅ。翔綺ちゃんなら、そこに寝てますぅ。」


 へっ? と、昴の指差す方向に飛んで行く、藤裏葉。そこには、確かに、翔綺が横たわっていた。


『あ、あれ? さっきまで、居なかったような、気がしたけど……。』


 五秒ほど考えて『まっ、いいか。』と、藤裏葉は、思考停止した。いつもならともかく、妖精となっている今、あまり難しい事は、考えなくなっているのだ。(妖精さんが、バカだと言っているわけではありません。読んでいらっしゃる、妖精の方が居ましたら、お気を悪くしないで下さい。)


 と、その時、床下で激しい振動が……。そして、突き出てくる、氷と炎。


『しまった〜。床下にまで、結界は張ってなかったや。』


 藤裏葉、テヘペロ。


「おおお、落ちるんですぅぅぅ。」

「がっ、がうぉぉぉん!」


 和臣と紅葉の(痴話)喧嘩に巻き込まれて、落下して行く昴達であった。




 プリ様は、最初に撃った、結界ミサイルの所に来ていた。食糧や医薬品が、あるからだ。


「ぷりん、いれといて よかったの。」


 大好物を見付け、狂喜乱舞のプリ様。そのプルプルのプリンを、暫し見詰めた。


『それにしても、れゔぃあたん(レヴィアたん)の おむね、ぷるぷる だったの。』


 リリスや、藤裏葉に比べれば、大きくはなかった。しかし、その暴力的な質量が無い分、理想的なお椀型をしていた。正に美乳。一級オッパイ鑑定士の、プリ様の眼からすると、形の美しさを加味すれば、二人に勝るとも劣らない、と言えた。


『きもちよかったの〜。』


 レヴィアタンのオッパイの感触を思い出し、顔をニヤケさせるプリ様。ちょうど、そのタイミングで、頭上の構造物が破壊され、昴達が降って来た。


「す、すばゆ?」

「プリ様ぁぁぁ!」


 驚きつつも、その場の重力を緩やかにして、プリ様は、昴、ポ・カマム、寝ている翔綺の三人を、軟着陸させた。


「あああ〜ん。プリ様、プリ様、プリ様。プリ様ぁぁぁ!」


 思いの丈を叫び、プリ様に抱き付き、頬擦りする昴。


「プリ様……。プリ様、プリ様、プーリーさーまぁぁぁぁぁぁ。」


 もはや、感情が言語化出来ない模様である。そうやって、暫く、スリスリ、頬擦りをしていたが……。


「んっ?! プリ様ぁ、頬から、知らない女の匂いがしますぅ。」


 と、不満気に呟き出した。プリ様は、内心、ギクッギクッギクッゥゥゥ、となっていた。


「誰ですか?」

「し、しらないの。だれにも ほおずり なんか、されてないの。」


 さっきまで、レヴィアタンの胸の余韻を楽しんでいたクセに、すっとぼけるプリ様。


「乳臭い……。誰かのオッパイに、顔を埋めませんでした?」

「し、しらないのぉ。そんなこと してないのぉ。」

「…………。プリ様、昴の目を見て下さい。」


 プリ様、スッと、目を逸らす。


「そういえば、さっき、落下中に見たプリ様。なんか、ニヤケてましたぁ。」

「…………。」

「まるで、誰かの、オッパイの感触を、思い出している時みたいにぃぃぃ。」


 鋭い。そして、怖過ぎ。


「浮気ですぅ。プリ様、浮気してたんですぅ。」

「ち、ちがうの。あれは れゔぃあたん(レヴィアたん)が むりやり……。」

「よ、よりにもよって、レヴィアたんですかぁ。浮気者。プリ様の浮気者ぉ。」


 と、二人がイチャついている時に、空気を読まずに、パタパタと、羽を羽ばたかせて、近付く藤裏葉。


「プリちゃまぁぁぁ! 会いたかったぁ。」

「よ、ようせい(妖精)さん なの。ほら、みて すばゆ。ようせい(妖精)さん。」


 突如出現した妖精をダシに、話を逸らそうと、必死なプリ様。


「プリちゃま。大好きなオッパイですよ〜。」


 プリ様の頬に、一生懸命、胸を擦り付けるが、悲しい哉、今のサイズでは、豆粒をぶつけられているのと、変わらなかった。だが、その行動で、プリ様は、この妖精が、誰なのかを察した。さすがプリ様。頭脳明晰、才色兼備。


「うらば。うえで、なにが おこって(起こって)ゆの?」

「和君と、モミンちゃんのバトルです。」


 藤裏葉は、今までの経緯を話した。昴は、プリ様に抱き付いて、頰をスリスリしながらも、プンプン、ヤキモチを妬くという、器用な真似をしていた。


けすとす(ケストス) から かいほう されても、けんか してゆの?」


 プリ様は、呆れた様に、溜息を吐いた。


「まあ、ふたりは ほっとくの。」

「放っておくの? プリちゃま。」

「それより、りりすが しんぱい なの。」


 朝顔の言う通りなら、今頃、魔物と化した兎笠と、鉢合わせしているかもしれない。


「いくの。」


 と、号令を掛けてから、ハタと、プリ様は困惑した。昏睡状態の翔綺を、どうしようと思ったのだ。紅葉と和臣が、暴れ回り、破壊の限りを尽くしている状況で、翔綺を置いて行くのは危な過ぎるが、背負って運べる人員も居なかった。


「お困りだね、プリちゃん。」


 突然、ポ・カマムが、流暢に話し始めた。


「僕だよ、プリちゃん。お父様だよ。ポッカマちゃんの身体を借りたんだ。」


 食い入るように、自分を凝視して来るプリ様に、ポ・カマム(中の人、照彦)が説明した。


「おとうたま……。どうやって……。」

「うん。お父様、クラウドフォートレスに、乗っけてもらえなかったから、そのまま、お酒飲みに行って、潰れて寝ちゃってたんだけど……。」


 胡蝶蘭(お母様)の推察通りだな。と、プリ様は思っていた。


「夢の中で、プリちゃんが、困っているのを感じてね。ポッカマちゃんに憑依したんだ。神様だからね。」

「…………。ひょうい できるなんて、おとうたま、きよう(器用)なの。」

「神様だからね。」

「はいはい なの。おとうたま(お父様)きよう(器用)で たすかったの。」

「待って、プリちゃん。器用だからじゃないんだよ。お父様、トール神だから……。」

「はいはい。わかったの。それじゃあ、しゅっぱつ なの。」

「聞いて。僕の話を聞いて。プリちゃーん。」


 喚く照彦に、困った様な、曖昧な笑みを見せながら、歩き始めようとして、プリ様は気付いた。


「あれ? ぴっけちゃんは? ぴっけちゃん どしたの? すばゆ。うらば。」


 二人に尋ねるも、首を振るばかりだ。


「そういえば、知らないうちに、居なくなっていたんですぅ。」

「確か、リリス様達と、合流した時点では、一緒だったんですけど……。」


 どうやら、はぐれたらしい……。




 そのピッケちゃんは、食べ物を求めて、パタパタと、飛んでいた。


「ぴっけ、ぴっけぇ〜。」


 実に呑気である。だが、突然、その小さな身体が、ガッと、鷲掴みにされた。


「ぴぴぴ、ぴっけぇぇぇ。」


 焦りまくるピッケちゃん。掴んだのは、屠龍であった。追いかけていた龍が、途中で消えたので、たまたま、飛んで来たピッケちゃんで、小腹を満たそうと、考えたのである。


 ピンチ、ピッケちゃん。


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