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電撃侵攻作戦

 ポ・カマムは、神獣などといっても、特に運動神経が発達している訳ではない。容姿からして、人間だと、小学校五、六年生というところだが、その年代の女の子達と比べても、明らかに、身体能力は劣っていた。


 プリ様パーティには、人類最弱と目されている昴が居るせいで、その影に隠れてしまっているが、例えば、その辺の公立小学校に通っていれば、クラスの中でも「鈍臭い」子に、分類されるのは、避けられないであろう。


 その代わりに、力が強いかというと、そんな事もない。母親のお手伝いをしようと、薪を持ち上げて、重みを支え切れずに、ひっくり返り、泣いている姿を、よく目撃されていた。


 なので、神王院家内では、ポ・カマムは、可愛いペットの子猫ちゃん(熊なのに)、の位置付けであった。


 そのポ・カマムの肉体を使っていても、神社の拝殿ほどの建物を、一瞬で原子の塵に変えたのだ。シタとミトゥムの恐ろしさが、分かろうというものである。


「どどど、どうしよう。プリちゃん。」

「怖い〜、プリちゃま。」

「プリ様〜! 好き好き。」


 リリスと藤裏葉、昴は、どさくさ紛れに、プリ様に抱き付き、和臣は、腕を組んで、考え込んでしまう、パニック状態だ。その中で、一人、プリ様だけは、不敵な笑みを浮かべていた。


「はじめて みたとき から おもってたの。ぷりの しんき(神器)したとみとぅむ(シタとミトゥム)。どっちが つよい かなって、なの。」


 戦闘狂だ。戦闘狂が居る。皆んなは「たのしみ なの。」と、呟くプリ様を、頼もしい様な、末恐ろしい様な気持ちで見ていた。


「阿保か〜! 妾のシタとミトゥムに、お主などが、敵う訳なかろうが。」


 そう叫ぶイシュタル神から、頭を叩かれるプリ様。プリ様は「すばゆ〜。かみさまが ぶったのぉ〜。」と、嘘泣きしながら、昴に抱き付いた。そのプリ様を「おおっ、よしよし。酷い神様ですねぇ。」と、昴は甘やかしまくった。


「と、兎に角じゃ。もう、準備は整ったのであろう? いつ、AT THE BACK OF THE NORTH WINDとやらに、攻め込むのじゃ? 今日中か? 一時間後か? 今すぐか?」

「お、おちつくの、かみさま。くらうどふぉーとれす(クラウドフォートレス) とかの じゅんびも あゆの。きょうは むり なの。」

「むううう。まどろっこしいのぉぉぉ。明日か? 明日なら良いのか? はい、決まり。明日じゃな。」

「落ち着きなさい!」


 プリ様に詰め寄るイシュタルを、リリスが、軽く、ど突いた。


「ど、ど突いたなぁぁぁ。神である妾を。」

「あ、あらあら。つい。ごめんなさい。」


 などとやっていると、ブリーフィングルームの扉が、バタンと開き、六連星主従が、ドヤドヤと、入って来た。


「クラウドフォートレスの支度は整ったわ。いつでも、行けるわよ、アマリちゃん、ガキ。」


 また、ややこしい事になるぅぅぅ。全員が思ったその時、イシュタルは、素早い動きで、六連星に抱き付いた。


「おおおっ。居る(おる)ではないか。居る(おる)ではないか。妾好みの女子(おなご)が、他にも。」

「ななな、何? ポ・カマム。どうしたの?」

「抱いても良いの? お預けばかりで、もう、我慢の限界なのじゃー!」


 状況が分からず、泣きながら狼狽えている六連星。ハッと気付いて、イシュタルを引き剥がしにかかるプリ様パーティ(ー紅葉)。大混乱であった。


「ヒック。だからあ、クラウドフォートレスの支度がぁ。ヒック。ヒック。」

「ほ、ほら、お姉様。泣かないで下さい。もう、大丈夫ですから。」

「ウッグ。だあってぇ。ごわがったぁぁぁ。」


 子供の様に泣き噦る六連星をあやす昴。珍しい光景であった。


「何じゃ。何なんじゃあああ、お主等はあああ。邪魔ばっかりしおって。」


 一方、イシュタルは、縛り上げられて、部屋の隅に転がされていた。


「解け。放せ。妾に、エッチな事を、させろぉぉぉ。」

「貴女、本当に言動がオクそっくりね。神様って、こんなのばっかりなの? 子供も居るんだから、下品な事言わないで。」


 頭を拳で、グリグリしながら、リリスは、イシュタルに注意した。それを見ながら『段々、扱いが粗雑になっていくなぁ。』と、照彦は思っていた。


「りりすぅ。ちがうの。かみさま、みんな こんなのじゃ ないの。にぎはやひのみこと(饒速日命)は やさしかったの。」


 神様全体の名誉の為に、プリ様は、擁護をした。イシュタル神は、さりげなく「こんなの」扱いされていた。


「支度は全部整ったから、今から進発する?」

「うむ なの。もう、おく(オク)には ばれてゆの。なら、でんげきてき(電撃的)に せめゆの。」


 オクは、どうせ、昴の目と耳を通して、計画を察知しているだろう。そうであれば、可及的速やかに、攻撃を開始した方が良い。リリスの提案に答えるプリ様の考えは、しかし、意外にも、外れていた。何故ならば……。




 オクは、レヴィアタンとエッチな事をしようとしていたのだ。それも、ネアンデルタール人の方の身体を使って。


 昴と同じ姿形をした、幼女の方の肉体でなければ、視覚や聴覚を、共有出来ない。つまり、クラウドフォートレスによる、AT THE BACK OF THE NORTH WIND襲撃計画は、一ミリも、幼女神聖同盟側には、漏れていなかったのだ。


「ああっ、レヴィアタン。レヴィアターン!」


 レヴィアタンの華奢な身体に、抱き付くオク。その時……。


 突然、凄い振動が、オクの居城を揺るがした。


 何かを察知したレヴィアタンは、サッと、オクを退かすと、部屋から飛び出して行った。


「えええええ〜?! ちょっと、待ってよ。」


 またもや、行為を邪魔されたオクは、不満タラタラ、レヴィアタンの後を追った。そして、城を出た彼女が見た物は……。


 巨大な移動要塞。クラウドフォートレスの威容であった。



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