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俺の部屋のベッドの下にある数冊の書物

 プリ様達が、本陣に、ひた走っていたら、前方の廊下を、藤裏葉以下数名が、何処かへ向かっているのが見えた。


「プリちゃま〜!」


 視界の端にプリ様が見えた途端、藤裏葉は、直角に曲がり、凄い勢いでプリ様に近付くと、手を繋いでいる昴から奪い取り、抱き上げた。


「プリちゃま〜。プリちゃま、プリちゃま。私のピンチに、私だけを助ける為に、来てくれたんですね。」

「ちがうの。ごさんけ ごじょぼうえい(互助防衛) しゅつどう なの。ぎむ なの。」

「もう、プリちゃまったら、照れて、イケズを言うなんて。そんな悪い子は、こうだ。えい。」


 そろそろ、風も冷たくなる季節だというのに、何時もの如く、チューブトップを着用している藤裏葉は、半分放り出しているオッパイに、プリ様の顔を埋めた。


「何をしているんですかぁ。プリ様を返して下さーい。」

「いやいや。やっと、プリちゃまに会えたんだもん。あと、五分は、こうしてるの。」


 昴と藤裏葉が、プリ様の奪い合いをしていると、以下数名の人達が、やっと、藤裏葉に追いついて来た。


「遊んでいる場合か、藤裏葉。格納庫はコッチだ。」


 ほとんど忍者という格好をした、四十代くらいの男性が、声を掛けた。


「いえ、翔綺様達を見付けたので、保護しようと……。」


 嘘だよね。プリ様目掛けて、真っしぐらに飛んで来たよね。

 昴と翔綺は、ジトッと、藤裏葉を見た。(兎笠は寝ています。)


「かくのうこ、どうかしたの? うらば」

「何だか、格納庫のヘリや車輌を、分解しては組み立て、分解しては組み立てしている、怪しい幼女がいるとかで……。様子を見に行くところです。」


 そんなの、オフィエルしか居ないだろう。行かなくても分かるんじゃ……。と思う、プリ様と昴。


 しかし、まあ、ほっとくわけにも、いかないだろうと、プリ様は、スマホで、連絡をした。


「かずおみ。あさがお おばたまは、もみじに……もみんちゃんに まかせゆの。かずおみは かくのうこに いくの。」

「おっー、和君が来てくれるのですか。百人力ですね。」


 プリ様の手配に、喜ぶ藤裏葉。どうせ、俺達は頼りないよ。と、以下数名の人達が、いじけた。


 その後「プリちゃまと離れたくないー。」と、泣き喚く藤裏葉を引き放し、プリ様達は、再び、本陣へと向かった。


 その本陣前は……。


 ほぼ、ほぼ、壊滅状態であった。なにせ、ハギトの超音波カッターに、為す術が無いのだ。得物も、防具も切り裂かれ、タイミング良く、崩落して来た天井に、本陣守備隊は埋め尽くされてしまっていた。


「ひであきぃぃぃ。どこぉぉぉ。」


 ハギトが大きく口を開け、頭を振ると、廊下の突き当たりにある、本陣へ入る鋼鉄製の防御扉に、斜めの裂け目が入った。


「最早、これまで。奴の狙いは俺だ。俺が出て行けば、お前達は助かるだろう。」

「兄様!」

「若!」


 英明の言葉に、弟の克実と、身辺警護をしていた兵達が、悲痛な声を上げた。


「俺亡き後、次期当主はお前だ、克実。翔綺と兎笠を守ってやってくれ。」

「に、兄様ぁぁぁ。」

「後、悪いが、俺の部屋のベッドの下にある、数冊の書物は、誰の目にも触れないように、処分してくれ。」

「な、何の本ですか? 兄様。」

「ええっと……。女性の身体を、医学的見地から解説した、学術書というか……。」

「どうして、兄様が、その様な本を……。」

「ええっと……。保健体育の授業の参考書というか……。」

「なるほど……。しかし、どうして、ベッドの下に?」

「ええっと……。寝ながら勉強していたというか……。」


 克実坊ちゃん、それ以上突っ込んじゃ、ダメです。

 兵達は、止めた方が良いだろうかと、逡巡していた。


 本陣の中が、妙な緊迫感に包まれている時……、追い付いたプリ様が、決然として、ハギトと対峙していた。


「もう、やめゆの。はぎと。」

「ぷーりー。とんで ひにいる なつの むしね。」


 頭に血が上っているハギトは、問答無用で、超音波カッターを放って来た。それを、魔法障壁で、弾き返すプリ様。


『やむを えないの……。』


 プリ様も、戦闘を決意した。




 リリスは、仰向けに寝転んでいて、動けないでいる彼女の腹部に、フルは跨がった。


「さっきの りゅうじん(龍人)の すがたも よかったけど、やっぱり、にんげんの おんなのこ(女の子)の すがたの ほうが すてきよ。ほら、こんなに やわらかい。」


 フルの小さな手で、胸をキュッと押されて、リリスは、嫌そうに、顔を顰めた。


「ざ、残念だけど、私とオクは、貴女の思う様な事は、一切してないのよ。殺すなら、早く殺しなさい。」

「してない……? そんな はずは ないでしょ。あの おんなずきの いろごのみ(色好み)が、こんな おいしそうな からだに、てを ださないなんて。」


 出鱈目を言うな! と、叫びながら、リリスに往復ビンタをするフル。


「うっ……、くっ。」

「いたい? あんしんして、これからは きもちよく させて あげる。ぜっちょう(絶頂)の うちに、のどを かききって あげるわ。」

「や、止め……。」


 フルが、リリスの身体に、手を這わせようとした、その時……。


「うちの姪を、それ以上虐めるのは、止めてくれませんか? 月読さん。」


 突然、昔の名前で呼ばれ、驚いて、声のした方向を見た。


『叔父様……?!』


 リリスも、そこに居る人物を目視した。


「はん。だれかと おもえば、じんのういんけ(神王院家)の できのわるい とうしゅさま ですか。」

「手厳しいなあ〜。」


 頭を掻く照彦に、リリスは、精一杯の声で叫んだ。


「逃げて、叔父様。コイツは危険よ。」

「おやおや、天莉凜翠。大丈夫ですよ。僕と月読さんは、顔見知りですから。」


 顔見知りなら、コイツのヤバさくらい、分かるでしょ〜。

 リリスは、心中で突っ込んだ。


「おまえなど、へかてのぱぴるす(ヘカテのパピルス)を つかう までも ない。」


 野分! と叫びと、凄まじい烈風が巻き起こった。が、照彦の背中に張り付いていたピッケちゃんが「うにゃーん!」と鳴くと、背中から、大きな翼を出して、彼の身体を包み込んだ。


「ピッケちゃんバリアー!」


 完全にピッケちゃんに依存していながら、自分の手柄みたいに、高らかに声を上げる照彦。野分は逆流し、フルは吹き飛ばされた。




 ほとんど、ピッケちゃんの力で、野分を躱したのに、何故か、余裕の表情で、頷く照彦。おもむろに、着物の袂から、何かを取り出した。


「これを忘れていましたよ。肌身離さず、付けていなさい。」


 そう言って取り出したのは、あの不思議な力を持ったネックレスだった。


「…………。このネックレスの、有用性は認めますけど……。」

「けど?」

「やっぱり、付けていると、妊娠しそうで……。」

「…………。付けてなさい。きっと、君を守ってくれるから。」


 助けてもらった手前、邪険にも出来ず、渋々、リリスは、ネックレスを付けた。


まんざい(漫才)は おわった かしら。」


 そこに、起き上がってくるフル。


「まさか、ぴっけちゃんに あんな ちからが あるなんてね。」

「そうね。私も、ピッケちゃんの秘めた力には、吃驚した。」

「いや、あの、僕の能力(ちから)は……。」


 照彦の主張は封殺され、リリスとフルは、仕切り直しとばかりに、睨み合い、火花を散らした。

今回の言い訳


登場当初は、藤裏葉の誘惑にも屈しない、硬派な英明さんでしたが、その後、恋を知り、女性に興味を持ち、ベッドの下に数冊の書物を、隠すようになってしまった。と、こういう訳です。決して、キャラがブレたのではありません。多分……。

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