ただもう、ひたすら、分解、組立、分解、組立。
「分かった。言います。確かに、オフィエルに、クラウドフォートレスの建造を、手伝ってもらってます。」
美味しそうな六連星のオッパイに、紅葉が手を伸ばすのと同時に、アッサリとゲロった。
「えっ……。」
意外な展開に戸惑う紅葉。
「ちょっ、ちょっとアンタ。何で、簡単に白状しちゃうの? 誇り高き光極天でしょ。もうちょっと、粘りなさいよ。」
せめて、私が一揉みするくらいの間は……。と言い掛けて、紅葉は口を噤んだ。
「よく考えたら、別に隠す程の事ではないわ。むしろ、幼女でも、能力の有る者は、積極的に登用する私偉い、みたいな?」
信長気取りか。リリス、和臣、紅葉は、同時に心中で突っ込んだ。
しかし、どうしたものか? リリスは、暫し、悩んだ。オフィエルの身の上を、ちゃんと、話しておくべきなのか……。
「うん。あの子は凄いわ。光極天の専門家達の描いた設計図の不備を、ガンガン添削していくし。」
調子に乗った六連星は、出来る部下を持った上司の様な、口振りになっているし……。
「そんなの あたりまえ なの。くらうどふぉーとれす、おふぃえゆが つくったの。」
プリ様の、何気無い一言に、神王院家のリビングの空気が、凍りついた。
「オ、オフィエルが造った? それ、どういう意味よ? ガキ。」
声を震わせて訊く六連星に、プリ様は、無情にも、トドメの言葉を放った。
「おふぃえゆは ようじょしんせいどうめい、ななだいてんし なの。」
つ、つまり、対幼女神聖同盟用の要塞を、幼女神聖同盟の幹部が造っている……。
「うーそーでーしょー!!」
思わず奇声を上げる六連星に、リリスは頭を抱えた。
「ななな、何で、幼女神聖同盟が、この家に遊びに来ているの?」
「友達になっちゃったのよ、プリちゃんと……。」
あっー、やっぱり、六連星とオフィエルを会わせるんじゃなかった。最高に、ややこしい事態に、リリスも困惑していた。
「どどど、どうしよ? 殺される。私、お父様に殺されるぅぅぅ。」
六連星はパニック状態である。
「だいじょぶなの、むつらぼし。」
「何が『だいじょぶ』なのよ、ガキ。」
「おふぃえゆは、ただ、つくる のが すきなの。こざいく とか しないの。」
「そうですよ、お姉様。オフィエルちゃんは、ただもう、ひたすら、分解、組立、分解、組立、を繰り返していれば、それだけで幸せなのです。」
「ぶぶぶ、分解されちゃうのー?」
昴の言葉に、過剰反応する六連星。
「落ち着きなさい、六連星。あの子、クラウドフォートレスの動くのを見たがっていたから、多分、造り上げてしまえば、満足するわ。」
「で、でも、それで、自分達が攻撃されるのよ?」
そんな事までは、オフィエルは考えていないだろうな……。と、皆んなは思った。それに、それなら、それで、クラウドフォートレスを攻撃する武器を造って、楽しみそうだ。
「そもそも、むつらぼしの けいかく むりなの。」
「何が無理よ、ガキ。移動要塞で、敵の本拠地に、殴り込みかければ、手取り早いでしょうが。」
神経を逆撫でされた六連星は、大人気なく、プリ様の頰を両手で伸ばし、慌てた昴が、プリ様を回収した。
「六連星……。AT THE BACK OF THE NORTH WINDの所在地は、恐らく異空間。突入したくても、出来ないのよ……。」
リリスに、溜息を吐かれながら言われ、六連星は押し黙った。
「まあ、移動要塞自体は、あっても良いと思う。ただし、オフィエルに、自爆装置だけは付けさせないで。」
「自爆装置?! そんなの、組み込まれたら分からないじゃない。」
ただでさえ、オフィエル以外は、誰もクラウドフォートレスの全容を把握してないのに……。と、白状しそうになったが、何とか言葉を飲み込んだ。
「だいじょぶ なの。『くみこまないで。』って おねがいすゆの。おふぃえゆ、くみこまないの。」
「そうね。そう言われると、不満そうな顔はするでしょうけど、オーダーには従うと思うわ。」
プリ様とリリスからの助言に、六連星が言い返そうとした時、リリスのスマホが鳴った。
「あらあら? 裏葉さん?」
「リリス様ー。敵襲です。敵襲を受けてますー。」
「敵? 何者?」
「侵入者が幼女なので、幼女神聖同盟ではないかと……。情報が錯綜していて、ハッキリ分からないんですが……。」
救援要請を手短に済ませると、藤裏葉も、現場へと向かった。
「リリス、行くぞ。」
「あらあら。何をそんなに張り切っているの? 和臣ちゃん。」
すぐにでも飛び出そうとする和臣を、リリスは、やんわりと、制した。
「すばゆ、とうしゅだいこうけんげん なの。じんのういんはちぶしゅうを、むかわせゆの。」
「イエッサーです。プリ様。」
「かずおみと もみじは、ここで たいき。しゅつどうようせいが くゆかも しれないの。」
「いや、俺はリリスと行く。裏葉さんは、パーティの仲間だ。仲間の危機を、放ってはおけない。」
それって、本当に、ただの仲間意識なの? プリ様、紅葉、リリスは、ジトッと、和臣を見た。昴は、和臣の心意気に、感動していた。
「和臣ちゃんの厚意は有り難いけど、美柱庵の本拠地に、要請の無い部外者は入れられないわ。」
「かずおみ、あんしん すゆの。うらばは ぷりが きっと たすけゆの。」
二人に言い切られても、和臣は譲らなかった。
「なら、入り口で待機する。こんな所で、ノホホンと待ってはいられない。」
普段の和臣からは、考えられない頑固さに、リリスも折れた。
「あらあら、しょうがないわね。敵が、幼女神聖同盟と確認が取れれば、私達プリちゃんパーティの管轄。それまでは、入り口で待機してて。それで良い?」
リリスの妥協案に、和臣も首肯した。その会話が終わると、今度は、六連星が口を開いた。
「アマリちゃん。私も、光極天家に、援軍要請をしておくわ。」
リリスとプリ様は頷き、出陣の準備に入った。
その様子を、昴の目と耳を通して、見聞きしていたオク……。
「しつれいね。てきが ようじょ なら、ぜんぶ わたしたち だと、おもって いるの かしら。」
幼女の魔物なんて、いっぱい居るじゃない。座敷童だとか、筋禿だとか……。
ブツブツ言いながら、AT THE BACK OF THE NORTH WIND内に居る、七大天使に、召集命令を出した。
一分、二分……十五分……。
「なんの よう じゃん? まだ ねむいって おもうのよ。」
漸く、寝惚け眼を擦りながら、オフィエルが現れた。
『いつも いちばん さいごに あらわれる おふぃえるちゃんが、いちばん さいしょに あらわれた ということは……。』
他の二人は居ない。
「おおお、おふぃえるちゃん。ふるちゃんと はぎとちゃんは? どこに いったの?」
「んふぁ……。ねむい じゃん……。」
「ねないで、おふぃえるちゃん。きょう、ふたりに あわなかった?」
「んんっ……。きのうは、しんがたすまほの ぶんかいと くみたてで てつや だったじゃん、って えつらく。あさがた ねたじゃん。」
幼女が徹夜しないで。焦りながらも、心中で突っ込むオク。
「あっ、そういえば……じゃん。」
「なに? なに? なにか、しってる?」
「ねむるまえに といれ いったって かんじ? はぎとと あったじゃん。び……ちゅうあん? に いくって いってた、いたこ。」
美柱庵!!!
何で? 何やっているの? あの子達。じゃあ、美柱庵の本拠地で暴れているのは、ハギトちゃんと、フルちゃん?
「こうしちゃ いられない。いくわよ、おふぃえるちゃん。」
「ね、ねむい……じゃん……。」
「ああっ、もう。びちゅうあんけの へり とか せんとうき とか、ぶんかいして いいから。」
「! い、いくじゃん。ぶんかい! ぶんかい! ひゃっほーい じゃん。」
……連れて行かない方が良いかも。余計、話がややこしくなるかも……。オクは、自分の軽率な一言を後悔していた。