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プリちゃまはラブラブスィートトランキライザーなの

「とどめなの、よくばりん(ヨクバリン)。」

「うわー、やられたあ。」


 プリ様の、ミラリンミラミラステッキがピコピコと鳴り、魔女っ子プリプリキューティの敵、ヨクバリンに扮した渚ちゃんは、大袈裟に悲鳴を上げた。プリ様の完全勝利であった。


「プリ様ー。お強いです。素敵です。大好きですぅ! 勝利のキスです。プリ様ぁ、好き好き。」

「もう、すばゆは さっき やっつけたでちょ。ねてなきゃ だめなの。」


 倒された筈の昴は、プリ様に抱き付き、盛んに愛撫を繰り返している。


「もう昴は十分に寝てました。五分も、プリ様に、触れてないんですよ。禁断症状ですぅ。」


 一向に止めるつもりはないらしく、仕方なくプリ様は、昴を引っ付けたまま、渚ちゃんと遊び始めた。


 そんな様子を見て、自然と腰を浮かしかけているリリスの肩を、和臣は、しっかりと、押さえつけた。


「おいおい。渚の前で、迂闊な行動は避けてくれよ。」

「あ、あらあら、和臣ちゃんったら。もしかして、私が、プリちゃんに抱き付こうとしていると、思ったの?」


 今まさに、抱き付こうとしていただろ。和臣は、深い、溜息を吐いた。


「そういえば、プリハーレムその三の、裏葉の奴は、今日は居ないの?」


 紅葉の言葉に、リリスはピクンと反応した。


「ちょっと待ってモミンちゃん。その一と、その二は、誰?」

「えっ? うーん、その一は昴で、その二はアンタでしょ? あと、モミンちゃんと呼ぶな。」


 その返事に、リリスが、プルプルと震え出した。


「ど、どうしたのよ?」

「いやだ。いーやーだー。私、その一が良い。正妻の座がほしいのー。」


 駄々を捏ねるリリス。どうしたんだ、可愛いぞ。と、思わず萌えてしまうモミンちゃんと和臣。


「分かったから。正妻で良いから。」

「ほんと?」

「うんうん。リリスは正妻だよな。」


 思わず、適当な事をのたまう二人であった。その二人を、涙が少し浮いた目で、見詰めて来るリリス。もう、胸がキュンキュンである。


『ふ、不覚にも、可愛いと思ってしまったわ。』

『でも、渚と同い年だもんな。良く考えたら、歳相応なのか……。』


 どうも、前世での、歳上のお姉さんというキャラが焼き付いているので、現世の十二歳のリリスとギャップがあった。


 アイラ(紅葉)にとっては、頼れる姉御。イサキオス(和臣)にとっては、大人の女だったのだ。


 現世でも苦労している分、大人びた物腰のリリスだが、それ故に、根っ子の子供の部分との、バランスがとれていない。危うさを感じさせた。


「で、裏葉はどうしたの?」


 暫しリリスに萌えていた紅葉は、やっと態勢を整えて、再度質問をした。


「それがね……。なんか、六連星が、優秀な結界師を貸して欲しいっていうから……。」


 光極天家に出向中らしい。


「光極天には、結界師は居ないの?」

「あらあら。そんな事ないわ。光極天は御三家一、人材をプールしているのよ。ただ……。」

「ただ?」

「神にも等しい結界の力がいるとかで……。性格と服装はともかく、裏葉さんは、当代一の結界師と見做されているから……。」


 なんで、そんなに過剰な力が必要なんだ? 三人が疑問に思っていると、リビングの扉が開いて、噂の藤裏葉が駆け込んで来た。


「プリちゃまー。」


 チアガール? と思ってしまう服装をしている藤裏葉。短過ぎるスカートから伸びる脚に、和臣は密かに鼻血を垂らしていた。


「プリちゃま。プリちゃまぁぁぁ。」


 声が少し泣き声だ。藤裏葉は、昴からプリ様を取り上げて、必死に頬ずりをしていた。


「うらば、どしたの?」

「酷いんです。酷いんですー。六連星様がー。」

「むつらぼしに いじめられたの?」

「違うんですー。六連星様ったら、私を部品として、クラウドフォートレスに埋め込んでしまおうかなんて、話をしているんです。」


 藤裏葉を部品に?


「良いんです。それ自体は良いんです。部品として、物として扱われるなんて、考えただけで、身体の芯が熱くなって来るっていうか……。」

「なにが いやなの?」

「作戦遂行中は、エンジンルームから出られないっていうんですよー。あっ、それは、それで良いんですよ。物扱いされて、監禁されるなんて、考えただけで、もう……。」


 結局、何が嫌なんだよ。話を聞いている全員が、イラっとした。


「その間、プリちゃまに会えないって言うんです。そんなのイヤイヤ。プリちゃまは、私のラブラブスィートトランキライザーだもん。」


 プリ様に、ヒシと抱き付いて離れない藤裏葉。そこに、また、乱暴にリビングの扉を開けて入って来た二人組がいた。六連星と乱橋だ。


「あっー、やっぱり此処にいた。来なさい、藤裏葉。実験の続きよ。」

「イヤイヤ。もう、プリちゃまから離れないの。」

「あっー、もう。じゃあ、そのガキ連れて行って良いから。」

「あらあら。勝手にそんな決定しちゃダメよ、六連星。」


 口を挟んだリリスを見て、乱橋が、涙を、ボタボタ落とし始めた。


「ちょっと、乱橋さん。どうしたの?」

「リ、リリスちゃん。幼女神聖同盟の盟主と、デートするって、ホントなんか? それって、前にリリスちゃんを陵辱した奴だろうもん。やっぱり、その、良くなっちまったんか?」

「何がですか。」

「つまりよ。力尽くで捩じ伏せられたり、屈辱的命令に従うのが、クセになったとか……。」

「なってません。」

「うううっ、俺のリリスちゃんの純潔が……。」

「だから、誰が貴方の純潔なんですか。」


 六連星は藤裏葉を連れて行こうとする。乱橋は、泣きながら、リリスに抱き付こうとして、アッパーカットを食らっている。


 とんだ地獄絵図だな。と、皆んなが思い始めた時……。


「いいかげんに すゆの!」


 プリ様の、鶴の一声である。


「すばゆ、むじ(無地)の おふだ。あと、すみ ようい(用意)ちて。」


 言われた昴は、いそいそと、準備をした。墨を擦り、精神統一したプリ様は、一気にお札を書き上げた。


『何? このお札。見たことも無い術式だわ。』


 リリスが、それを、驚いて見ている間に、プリ様は藤裏葉に言った。


「うらば、けっかいを つくゆの。この おふだの なかに。できゆ?」


 はーい、と受け取った藤裏葉は、お札に向かって集中した。


「出来た、と思います。プリちゃま。」


 うむ。プリ様は重々しく頷いた。


「むつらぼし。あとは、おふだを つかうの。うらばの けっかい でゆの。」

「ああっ……、うん?」


 首を捻る六連星。


「ええっとね、普通に、お札を使う要領で、力を解放してやれば、裏葉さんの結界の力が使えると、プリちゃんは言っているのよ。」


 解説しながら、リリスも驚嘆していた。個人の力を、お札に封じ込めるなんて、聞いた覚えが無い。


「つまり、このお札は、ジェット燃料みたいな物で、いっぱいあれば、藤裏葉の結界が、いつでも使えるというのね?」

「そうなの。」


 プリ様の返事に、六連星は小躍りした。


「やったー。これで、クラウドフォートレス実用化の目処がついたわ。」

「私も、エンジンルームに、閉じ込められないで済むんですね。」


 ウィンウィンであった。


「よし、ガキ。お札を書きなさい。昼夜問わず、血反吐を吐くまで書き続けるのよ。」

「止めて下さい、お姉様。プリ様が死んじゃいますぅ。」


 昴は、六連星から庇う様に、プリ様を抱き締めた。


「ぷり ひとりじゃ こうりつ わゆい(悪い)の。これを おてほんに かかせゆの。こうぎょくてん(光極天)ふだし(札師)に。なぞる だけなら そんなに むずかしく ないの。」


 そう六連星に言った後、今度は藤裏葉に向かった。


ふうじゆ(封じる) けっかいの ちから、きんいつ(均一)に すゆの。こうりょく(効力)じぞくじかん(持続時間)が けいそく しやすく なゆの。」


 此方にも、テキパキと指示を出している。皆は、おおっ、と感嘆した。一件落着である。


「さて、つぎ、らんばし。」

「おおお、俺にも、何かアドバイスを頂けるんですかい? 符璃叢嬢様。」

「うむ。りりすの こと……。」

「はい。」

「あきらめゆの。みのらぬ こい なの。」

「は……はあ。」

とし()が ちがい すぎゆの。」

「そ、そっすか……。」


 ガックリと、肩を落とす乱橋。これで、全てが丸く収まった。快刀乱麻のプリ様であった。

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