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ようするに、ちわげんか なの。

 渚ちゃん達避難客は、パーティも開ける大広間に集られていた。此処は、船体の中央部にあるので、外で暴れられても、比較的被害を受け難い場所だった。


「元気を出して、渚ちゃん。バイキング方式で、ディナーを提供してくれるって。食べて待ってましょうよ。」

「そうよ。何か飲み物持って来て上げましょうか?」


 宮路さんや、尚子が気を遣って話掛けても、上の空状態だった。


『リリスも戦っているって、そう言ってた。もしかして、一番最初の爆発はリリスが……。』


 こんな状況で、リリスが自分達の様子を見に来ないのは、凄く不自然な気がしていた。でも、動きたくても動けない状態だったとしたら。例えば、重傷を負っていたりして……。


 そう思い至ると、いてもたってもいられなくなった。そっ〜と、皆の輪から外れ、部屋から出ようと……。


「ダメですよ。一度出ると、入れなくなるって、言われたじゃないですか。」


 操達の食べ物を集めていた舞姫に、扉の所で呼び止められた。


「行かせて。リリスが心配なの。」

「ダメです。足手纏いになるだけです。」


 舞姫の胸中には、自分を人質に取られてオクに屈した時の、リリスの姿が甦っていた。


「私は行く。きっと、リリスは助けを必要としている。」


 渚ちゃんはドアノブに手を掛けると、駆け出して行ってしまった。食糧や飲み物が満載されたお盆を両手で持っていた舞姫は、それを引き止める事が出来なかった。


 本当は舞姫とて、リリスを心配する気持ちは、渚ちゃんと変わりはしなかった。今すぐにも、彼女の元に駆け付けたいのも同じだった。だが……。


「まいきおねえちゃん……。」


 小さなお手手に、舞姫のスカートの裾が握られた。舞姫が中々戻って来ないので、不安になった操が、彼女を呼びに来たのだ。


「なあに? 操ちゃん。私は何処にも行かないよ。」


 そう言うと、操は安心した表情を見せた。


『リリスさん、どうかご無事で……。』


 舞姫は心中の煩悶を押し隠して、操に微笑み掛けていた。




 甲板上のプリ様に向かって、推進コイルが敷かれ、強化スーツは時速五百キロアタックを仕掛けて来た。

 プリ様は避けようともせず、真正面からミョルニルを横殴りに叩き付けた。


 プリ様のお立ちになっている床が、メリッと沈み込み、ミョルニルが当たっているヒヒイロカネの装甲に火花が散った。


「うごかない! ぷりめ〜、じじゅう(自重)を おもくして たえて いるのか。」


 重さだけではない。メギンギョルズを巻いたプリ様は、どんな力持ちの相手でも、その倍の力が出せるのだ。パーフェクトモードプリ様の能力の一つ「向こう倍力」だ。


「だけど、こうげきが ばかしょうじき すぎる。」


 強化スーツ背中のポッドが開き、プリ様目掛けて、小型ミサイルが発射された。危うし、プリ様!


 しかし、ミサイルは着弾する前に、プリ様の周囲で爆発した。プリ様はミョルニルで強化スーツをガンと叩き、その反動で後ろに飛び、距離をとった。


「おく?」


 ミサイルが当たらなかったのは、プリ様の周囲に、オクがバリアーを張ったからだ。


「どうして、たすけて くれゆの?」


 そう聞いてから、プリ様は不信感をありありと顔に出した。


「なにを たくらんで いゆの?」


 何て疑り深い子なのかしら。

 オクは内心、舌打ちをしていた。


 でも、それは間違っていた。プリ様は鷹揚な性格なのだ。頭から他人(ひと)を疑ったりはしない。単に、オク自身に、全く信用が無いだけなのだ


「わたし、はんせい したの。りりすちゃんの かっちゅうを はぎとったり、えっちな みずぎを きせたり、その やわはだを おさわり しまくったり……。」


 ああっ、楽しかった。あんなに、陵辱しがいのある子もいないわあ。

 言いながら、オクは一瞬、恍惚とした表情になった。


 だが、頭上にミョルニルが降って来て、慌てて後ろに退がった。


「ひどすぎゆの。やっぱり、こよすの。」

「だ、だから、はんせい したのよ。その つぐないとして、あの あくまの ような きどうへいき(機動兵器)を こわす おてつだいを しようと……。」


 プリ様が敗れれば、次は自分に総攻撃が始まるのは自明の理だ。一番良いのは、プリ様とオフィエルの相打ち。最悪でも、強化スーツは破壊しておかなければ。


「りりすに あやまゆ?」

「もちろんよ。どげざして ゆるしを こうわ。」


 そこまで言っても、プリ様は胡散臭そうな視線を投げ掛けていた。


 一方、集音装置で、外部の音を拾っていたオフィエルは、オクの台詞に激怒していた。


「おーくーさーまー。だれが あくま ですってぇぇぇ。」


 推進コイルが、今度はオクに向かって敷き詰められた。

 やばっ、時速五百キロアタックが来る。とオクが思ったと同時に、ヒヒイロカネで堅められた機体が突っ込んで来た。

 オクは、張ったバリアーごと吹き飛ばされた。


「いたい。いたいわ。おふぃえるちゃん。」

「その いたみは、うらぎられた わたしの、こころの いたみです。」


 側で二人の会話を聞いていたプリ様は、ふと、根本的な疑問に突き当たった。


「ねえ? ふたりは なんで けんかしてゆの?」

「あなたも こいを すれば わかりますわ。じぇらしーよ。とめられない じぇらしー なのよ。」


 ふーん。と、オフィエルの返事を、今一煮え切らない態度で聞くプリ様。


「ようすゆに、ちわげんか(痴話喧嘩)なの。」


 賢いプリ様は知っていた。痴話喧嘩とは、犬も食わない下らないものであると。


「ものすごい めいわくなの。よそで やって ほしいの。」


 どうして、こんなにドライなの、この子。

 温厚篤実、親切丁寧な筈のプリ様の、冷たい一言に、オクは慄然とした。

 せっかく巻き込んだのに、全くやる気が無く、今にも帰って行ってしまいそうなのだ。


「ぷりさまぁ。」


 オクはやおら仮面を外し、プリ様の方に向き直った。


「すばるを みすて ないで。ぷりさまぁ。」

「だだだ、だまされないの。おく、やめゆの。」


 おっ、珍しく動揺している……。

 オクはほくそ笑んだ。


「なにを あそんで いるのですか、おくさま!」


 レーザー発射!

 プリ様は、つい、反射的に昴と同じ顔のオクを庇って、魔法障壁を展開した。


「じゃま するなら、あなた からです。ぷり。」


 今度はプリ様にレーザーが射出されたのを見て、オクは再び仮面を嵌めた。


「あなたも、てきにんてい(敵認定) されたわね。ぷりちゃん。」


 口元に堪え切れない笑みが浮かんでいた。


「おーくー、ひきょう なの。」

「そんなに おこらないで。いっしょに たたかい ましょ。」


 まずは、あの厄介な時速五百キロアタックを、何とかしなければ。


『そういえば、すいしんこいるを つくって いるのは、せいたいのうこんぴゅーたに された ぴっけちゃん だったわ。』


「ぷりちゃん。なにか、おかし もってない?」

「こんなときに おかし たべゆの?」

「ちがうわ。あの きょうかすーつの ぶひんに された ねこさんを めざめさせるのよ。」


 ピッケちゃんは甘いお菓子が大好き。魔界野良猫なので、人間と同じ物を食べても、全然平気だ。


「ねこさん!」


 プリ様の目が輝いた。


「かわいいの?」

「かわいいわよぉ。」

「はやく、だきたいの。」

「あ、あそびじゃないのよ。」


 言ってから、これはさっきのリリスちゃんの台詞だったな、と思い出していた。


 プリ様は浴衣の袂の中を(まさぐ)っていた。


「あったの。しゅしょうさん から もらった おかし。」

「それは、このよで いちばん おいしいと いわれている『くろいいなづま』じゃない。」

「そうなの。」


 自慢気に言う、プリ様。


「は、はんぶん たべちゃ だめかしら?」

「だめなの! ねこさんに あげゆの。」


 もう、融通が利かないわね。と、オクは少し口を尖らせた。


 まあ、良いわ。これで、時速五百キロアタックは封じられる。

 オクは不敵な笑いを洩らした。











忙しくて死にそうです。

世の中は、そろそろ連休が始まろうというのに、私の周囲は「ゴールデンウィーク? 何それ、おいしいの?」状態です。


いつも読んで下っている皆さん、ありがとうございます。

更新ペースが、遅くなってて、すみません。

この場を借りて、お礼とお詫びを申し上げます。


何か死ぬみたいな雰囲気ですが、死にません。

最後まで書き上げて、死ぬつもりです。


その後は、周り中からチヤホヤされて、甘やかされる、異世界の王国のお姫様に転生しようと思います。

仕事なんかせず「パンが食べられないなら、お菓子を食べれば良いのよ。」などと言いながら、暮らしていきたいです。

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