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「華穂、再来週の日曜はお父さんとサッカーを観に行かないか?」


「え!ほんと!!??最終節観にいけるの!?」


再来週の日曜日はサッカーリーグ戦の最終節だ。

隼人の所属する東京ウィンズは現在3位。

残り2試合。優勝争い真っ只中だ。


「あぁ、なんとか仕事の都合がついた。」


「やった!!行きたかったの!」


初めて試合を観に行って以降、華穂様はすっかりサッカーファン、東京ウィンズサポーターになっていた。

裕一郎様が観戦に行くときは必ずついていくし、スタジアムに行かない日は必ずテレビの前に陣取り、翌日はグループトークで隼人へ試合の感想を送る。

見てると微笑ましくなるくらい夢中だ。


「優勝が掛かった大事な試合だからな。

本当は来週の試合も見に行ければよかったんだが・・・・。」


来週の試合はアウェイで九州で行われる。

勝利の神様と渾名される裕一郎様がいけば戦意高揚につながるのだろうが、残念ながら裕一郎様も多忙である。

重要な試合なのわかっているがさすがに九州までいっている暇はない。


「最終節だけでもきっと隼人くん喜んでくれるよ。」


「そうだな。声は届かないが来週の試合はテレビの前でしっかり応援しよう。」


「うん!」







華穂様がグループトークで隼人に観戦に行くことを伝えたらとても喜んでくれた。

今度の試合はテレビの前で応援すると伝えると、『今度こそ勝って帰ってきます。』という返事もきた。


・・・・・・・・ここ最近、ウィンズは調子が悪い。

今まで優勝争いをするような強豪ではなかったせいか、初優勝のプレッシャーにチーム全体が硬くなっているように見える。

負けこそほとんどないものの、下位のチーム相手に辛勝だったり、上位相手だと引き分けになったりする場面が多々ある。

4節前の試合で1位チームに負けたのは痛かった。

あそこで勝てていれば今頃はギリギリだが1位にいたはずだ。

最終節を盛り上げるためにも是非勝って帰ってきてもらわねばならない。





80インチのテレビ前に置かれた広いソファーの上に華穂様と裕一郎様が座っている。

ふたりは無言でテレビを見ている。

画面上にはマンオブザマッチのインタビューを受ける選手の姿が映っていた。

・・・・・・・・・・ウィンズの対戦相手の選手だったが。


ボロボロな試合だった。


けっして強い相手ではなかったのにパスは通らないし球際で競り負けるしと、試合中ずっとハラハラし通しだった。

すぐに相手側にボールが渡るので、ゴール前から離れることができず全員守備に追われていた。

唯一、隼人にボールが渡った時だけ、足の速さを活かしてカウンターに出るのだが、ついてくる選手がおらず複数人に囲まれて、ボールを奪われ押し戻される。

何度もそんな場面があった。

正直スコアが1ー0の負けで済んだことが素晴らしく感じる試合だった。

結果が10-0で負けていても誰も疑問に思わないくらいやり込められた。

相手のせいではなく自滅負けだ。


今室内はお通夜状態。

裕一郎様も華穂様も何も言わず、どんよりとした空気が漂っている。

優勝争いをしている他の2チームの結果も出ている。

今日の結果でウィンズの自力優勝はなくなった。


ウィンズが優勝するには


1位のチームが負ける

2位のチームが引き分けか負ける

ウィンズが勝つ。


これが最低条件だ。

これでも必ず優勝できるわけではない。

あとは得失点差で結果が変わる。

いかに大量得点をして勝つか。

上位に負けてもらう運と大量得点できる実力が揃ってやっと優勝できる。

正直かなり厳しい条件だ。



「どうしよう・・・・・。」


携帯の画面を見て華穂様がぽつりと呟く。

おそらく隼人とのグループトーク見ているのだろう。


華穂様にも隼人にもかける言葉が見つからない。


下手な慰めは言えないし、かといっていつも感想を送っているのに今日だけ送らないのも変に気を使わせてると思われるかもしれない。

どっちに転んでも悪くなりそうで動けない。

来週の試合が憂鬱なものになった。

明日は小噺を別枠にて投稿予定ですので、こちらの更新はお休みします。

小噺は別小説としての投稿になりますので、ブックマークいただいてる方は表示されませんのでご注意ください。

小噺には目次のシリーズ名から読むことができます。

小噺もお読みいただけると嬉しいです。


【7/7 追記】すみません、七夕話が延びました。

七夕話が終了するまで本編はお休みさせていただきます。

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