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華穂視点。


まずは施設にクッキーを届ける。

子供たちはみんなまだ学校から帰ってきてなかったけど、山中先生職員のみんながあたたかくむかえてくれた。


子供たちといるのももちろん楽しいけど、大人だけであーだこーだと愚痴を言うのもとても楽しい。

特に最近は土日しか来ていなかったので、大人だけで過ごすのは久しぶり。

話が盛り上がって、気がつくと16時過ぎてた。


やばい!!空太との約束の時間すぎてる!!!


慌てて施設を出て空太のうちにいく。

今日は空太早番だったから、16時には帰ってくるって言ってた。

だからその頃にうちにいくって言ってあったんだけど、このままじゃ着くの17時前になりそう。

怒られる〜!!


車の中から遅れるって連絡したらやっぱり怒られた・・・・・。

『社会人としての自覚が足りない!!』って。

空太、ああ見えてかなりきっちりしてるんだよね。

几帳面っていうか・・・・・。


そんなことを考えてたら、空太のうちについた。




ピンポーン


チャイムを鳴らす。


インターホンから返事は聞こえないけど、中から扉に向かって人が近づいてくるのがわかる。

な、なんか緊張してきた。

よく考えたらわたし、空太のうちに来たのって初めて!

いっつもお店に遊びに来てたし、食べ歩きの時は施設に空太が迎えに来てくれてたから、住所は知ってたけど来たことなかった。


がちゃっという音でドアが開く。


出てきた空太は半袖短パンの黒いスウェット姿だった。

袖やフードにモスグリーンで模様が書いてあってなんかおしゃれに見える。


「よく来たな。入れよ。」


「お、お邪魔します!!」


スウェット姿の空太なんて、見たのは施設にいたとき以来。ちょっと懐かしい。


体格は昔と変わってないと思ってたけど、昔見た格好に近い姿だと変わったのがよくわかる。

あの頃と違って今の方が腕も胸板も足も・・・・・全体的に大きくなってがっしりしたみたい。


部屋に入ったら緊張ほぐれるかと思ったのに、ますますドキドキしてる。わたし変かも。



部屋の中央に置いてあるローテーブルに案内されて、そこに敷いてあったラグの上に座る。

空太の家はワンルームのアパートで小さいけどよく整理整頓されてて綺麗な感じだった。

つい珍しくてきょろきょろしちゃう。


「そんなに見てもなんもねーぞ。」


「一人暮らしの人の家に来たのって初めてだからなんか珍しくって。」


友達はみんな実家住まいだし、施設を先に出て行った先輩たちは遊びに来てくれる方だから、わたしはワンルームの家に来たことがない。


「なんかひとつの部屋に全部そろってるのってすごいね。」


何歩か歩けばすぐに欲しいものに手が届く。便利そう。


「・・・・・お前、それ素でいってんのはわかってるけど、下手したら嫌味に聞こえるぞ。」


「えぇ!?なんで!!!???思ったこと言っただけなのに!!!」


「普通の人間は広い家の方が嬉しいんだよ。俺らだって施設にいた頃は自分の部屋欲しかっただろ。」


施設は基本的に2段ベット2台の4人部屋だった。

職員になって小さいけど自室がもらえた時はとても嬉しかったのを覚えてる。


「そりゃそうだけど、一人部屋だったらこれで十分だよぉ。わたし、施設職員の部屋で十分満足だったもん。」


逆に今の家は慣れるまでかなり時間がかかった。

あんなに部屋数いらない。


空太がお茶を持ってきてくれたので持ってきたクッキーを渡す。


「お、くるみの砂糖がけもあるじゃん!」


瓶を見た空太はとっても嬉しそう。それ好きだもんね。


「山中先生たちには渡してないから特別だよ。大事に食べてよね。」


「ん、さっそくひとつ。」


カリッと空太の口から音が聞こえてくる。


「そうそうこれこれ。やっぱ華穂の作るお菓子はうまいな。」


「空太の方が料理うまいんだから、空太だって簡単にできるよ。」


わたしに発言に空太は大きくため息をついた。


「・・・・・・おまえ、マジでわかってねーよな。華穂がつくったやつじゃないと意味ねーんだよ。もちろん普通に美味いけど、華穂がつくってくれたから特別美味くなるんだよ。俺にとっては。」


わたしがつくったから特別・・・・・・???


じわじわ頬に熱が集まってくるのがわかる。


「こないだ言っただろ。

俺は中学からお前のこと好きだったから、俺の料理を喜んでくれるのが嬉しかったし、それに張り合ってお菓子をお前が作るのが嬉しかった。

これは俺にとってお前が俺のそばに来てくれる大切な思い出の味なんだよ。」


愛おしそうに男らしい手が瓶を撫でる。

そこにたくさんの空太の思い出が詰まってるのがわかった。

むず痒いような恥ずかしいような、瓶が羨ましいような・・・・・・変な気持ち。


「本当は『俺のためだけに作ってくれ』って言いたいとこだけどなー。まあ、それはおいおい。」


おいおい!?


「飯、食ってけよ。」


そう言って立ち上がった空太は瓶を手放す前に、軽く瓶にキスをした。

わたしはそれを真っ赤になって見つめることしかできなかった。


遅刻したけどなんとかUP。

もう少し空太続きます。


ブクマありがとうございます。

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