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華穂視点。
勉強をしているふりをしながらそっとスマホの画面を見る。
そこには昨日の写真がバッチリ収められている。
頭が真っ白になって押したままになってたシャッターボタンは昨日の流れを全部写しとっていた。
そっと指を動かして写真をめくっていく。
1枚目、腰をグイッと抱き寄せられてびっくりした表情の唯さんと、してやったりみたいな悪い顔をしている一弥
2枚目、ふたりがしっかりキ、キスをしてる写真・・・・・
3枚目、同じくキスしてる写真なんだけど、唯さんの眉間に思いっきりシワが寄ってる
4〜9枚目、流れるような動作で一弥が一本背負いで投げられてるのをコマ送りしたような写真
10枚目、何が起こったのかわかんない様子で呆然と地面に転がっている一弥と投げ終わった態勢のままゴミを見るような目線を向けている唯さん
はぁ・・・・・。
何度見返してもため息が出る。
見事な一本背負い。唯さん、柔道とかやってたんだね・・・・。
颯爽と歩く唯さんに連れられて迎えに来ていた車に乗った帰り道、わたしは唯さんの反応が怖くて話しかけられなかった。
唯さんも口を開くことはなく無言で、家に帰ってわたしの寝る支度を整えたらすぐに退室しちゃった。
朝はいつも通りになってたんだけど、そのせいで逆に話しかけづらい。
・・・・・・・謝らなきゃいけないよね。
わたしが言ったから唯さんは写真撮ることになったんだし。
唯さんは私が言ったことはほとんど断らない。
それがまさかこんなことになるなんて・・・・・・・・
一弥のバカバカバカバカーーーーーーー!!
昨日家に着いた頃に心配した隼人くんからメッセージが来た。
それによるとあのあと一弥は地面に転がったまま笑い転げてたらしい・・・・・・。
お通夜みたいになってる人の気も知らないで!!!
「華穂様、そろそろ休憩のお時間です。」
「!!あっ、うん!わかった。」
慌ててスマホを隠して、お茶が準備されているリビングに向かった。
いつも通り美味しく入れられた紅茶を飲む。
よし・・・・、言うぞ!!
「あ、ああ、あの!唯さん、昨日はその・・・ごめんね。」
「何がですか?」
突然謝られた唯さんはきょとんとしてる。
「いや・・・・その・・・・き、昨日の帰り際の・・・・・。」
うぅ、言いづらい。
「昨日は楽しかったですね。隼人様との写真、あとでメッセージで送っておきますね。」
あ、あれ?なんか唯さんニコニコしてるんだけど・・・・・・。
「そ、そのぉ・・・・もう怒ってない?」
「怒るって何がですか?」
「いや、その、一弥とその・・・・・・」
キスしちゃったことです。
「一弥ですか?あぁ、先日のお見舞いのお礼をまだ言えていませんでしたね。裕一郎様を通して伝えていただきましょう。」
こ、このとぼけ具合はわざと・・・・?
「昨日は隼人様と回られていかがでした?」
「あ、うん、すっごく楽しかったよ!インディアナリバーでは隼人くんがワニを撃ったりして・・・・・・」
昨日、唯さんたちと別れてからのことを話す。
エリア限定のスイーツをふたりでわけて食べたことや、実は隼人くんが高所恐怖症だったってこと。
とっても楽しかったからついつい口が滑って乗って聞いちゃった。
「唯さんの方はどんなだったの?」
しまった!と思ったけど、唯さんの表情は特に変わらない。
「私は・・・・・」
唯さんが昨日のことを話してくれる。
黄色いポンチョをかぶって姿を隠していたことや、各アトラクションに並んでる私たちを見守っていたこと。
渦巻きができるくらい勢いのある水流をエアクッションが着いたボートで他のボートとぶつかりながら回るアトラクションでびしょ濡れになったことを話してくれる。
んだけど・・・・・・
一弥の話が一切出てこない。
たぶん一弥がトラのポンチョだったからくまのポンチョも一弥がお揃いで買ったんだと思うんだけど、そのへんに一切触れられない。
「最後の華穂様と隼人様の写真はよく撮れていました。」
「あぁ、うん・・・・・・」
こ、この流れで一弥との写真のことを・・・・・・
「また、3人でいきましょうね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
唯さんの中で一弥が居なかったことになってる!!昨日の一弥の存在が抹殺されてる!!!
わたしのスマホは一弥はブロックされたままだし、唯さんのももちろんそうなってるはず。
・・・・・・・・・・寝た子は起こすな。
隼人くんにもしばらく唯さんに一弥の話はしないでって言っとこう。
自業自得だよね。
いくら好きでも相手の嫌がることしちゃダメだよ。
わたし、しーらないっ。
長かったWデート終了。一弥と隼人はちょっとおやすみです。




