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華穂視点。


「唯さんといっくん遅いね。」


時計を見ると、パレード開始の13時まであと3分を切っている。


「お手洗い混んでるのかなぁ。」


隼人くんと一緒にふたりと別れた方向を見てみるも、待ち人は見つからない。


「俺、ちょっと連絡して」


ピンポーン


隼人くんが取り出したスマホからタイミングよく音がする。

メッセージを読んでいるであろう隼人くんの眉がだんだんちょっと困ったようなへの字になる。


「どうしたの?」


「いっくんから連絡きたんですけど・・・」


困り顔のままスマホを渡してくれたので表示されているメッセージを読む。





『女王様はいただいた。

返して欲しければパレード終了後に出される問題10問に答えよ。

タイムリミットは夜7時。

それまでに答えられなければ女王様は今宵一晩私のものだ。

彼女のスマホは私が預かっている。

もし警察に連絡したり、自分たち以外の第三者の力を借りて私達を見つけ出そうとすれば、その時点でゲームオーバー。

時間を待たずにパークから連れ去るので気をつけるべし。

では、諸君らの検討を祈る。


ー 怪盗 いっくん ー 』





わたしの『はぁ?』という疑問の声はパレード開始の音に掻き消された。


パレードの音が鳴り響く。

一弥からのメッセージについて話したいけど、ステージから距離が近いから音が大きくて話し声が伝わりづらい。


「とりあえずパレード終わったらまたメッセージくるみたいだから、それまで待ってよう。」


隼人くんに聞こえるように耳元まで顔を近づけて言う。


「はっはい!!!!」


裏返った隼人くんの声は大音量の中でもよく聞こえた。


パレードはとっても楽しかった。

昔、お母さんと遊びに来た時は小学3年生にもなってお母さんに抱っこしてもらうという恥ずかしい思いまでして視線を高くしても、人垣の間からチラッとキャラクター達が見えただけだった。

それがこんなに真正面でキャラクター達を見れる日が来るなんて・・・・・。

そもそも隣に座ってるのもプロサッカー選手だし。

ここ数ヶ月での境遇の変化を実感してしまう。


園内の行進から帰ってきたキャラクター達がステージで踊って、最後に色付き煙が上がってパレード終了。


ピンポーン


隼人くんのスマホにメッセージが来た。


『第1問 ミシェルズキッチンの人気メニューTOP3は?』


「パレード終了直後にメッセージきたってことは、近くでパレード見てたのかも!この辺探してみよう。」


「はい!」


急いで周りを見回す。

パレードが終わったことで広場から大勢の人が離れていくのが見えるが、目当ての人物は見つけることができない。


「ダメだ。見つからないっス」


「こっちもダメ。」


隼人くんは人混みの間を縫って探しに行ってくれたけど、結局見つからなかった。


「クイズに答えるしかないみたいですね。」


「・・・・・・隼人くん、答えわかる?」


「わかんないです・・・・。これはそこまで行って確かめてこいってことスかね。」


隼人くんが地図を広げて見せてくれる。


「えぇっと、今ここだから・・・・、あ、こっちです。行きましょう。」


隼人くんに先導されて10分ほど歩くと目的の場所についた。


「ん〜、外から見てもわかんないね。」


パーク内にあるにしてはこじんまりしたレストラン。その外観からは問題の答えを見つけることはできない。


「せっかくここまで来たし、ちょうどお昼時なんでここで飯食べましょう。俺、腹減りました。」


「そうだね。中入ったらわかるかもしれないし。」


中に入るとすぐに問題の答えはわかった。メニューに大きく『当店人気TOP3』と書いてある。


「あったね、答え。」


「はい。いっくんに送ります。」


「あ、その前に最初の文章ちょっと見せて。」


2人でもう一度先ほどの文章を読み直す。


「いっくん、何考えてるんだろ。」


「うーん・・・、いっくんもそうなんですけど、唯さんはなんで一緒に行っちゃったんスかね。

子供じゃないし、お菓子につられてなんてことはないと思うんですけど。」


あの責任感の強い唯さんがわたしに断りもなく勝手に側を離れるだろうか。

唯さんは唯さんで何か考えがあって行動してる?

それとも一弥の口車か何かに乗せられてる??

はっ、まさか一弥に弱みを握られて無理矢理・・・・!!


「いっくんのことだから唯さんを閉じ込めたりとかはしてないはずですけど・・・・。」


まさか隙をついて手足を縛られて・・・・。

いも虫状態に縛られた唯さんがクローゼットにポイっと放り込まれる図を想像してしまう。


「そ、それにひっ一晩って・・・・そういうことっスよね。」


赤くなりながら言いにくそうに話す隼人くん。


「いっくんは唯さんのこと気に入ってたみたいですし、唯さんも嫌がってなかったみたいだし、トイレに行った時に意気投合してふたりっきりでデートすることにしたんじゃぁ・・・・。」


確かにパーク内を一緒に回る姿は付き合ってると勘違いするくらい仲が良さそうだった。

唯さんから大人な回答ももらった。

でも・・・・・・


「絶対違う!!!」


思わず大きな声が出てしまった。


「唯さんは立派な執事だもん!

自分の仕事に誇りを持ってすぐそばでいっつもわたしを支えてくれる。

唯さんが自分の楽しみのために勝手に仕事放棄したりするなんてありえない!」


きっと唯さんがいないのには理由があるはずだ。

でなきゃ、唯さんがいなくなったりするはずない。

なんか気が高ぶりすぎたのか涙が滲んできた。


「え?あっ・・・えぇっと・・・」


突然泣き出したりするから隼人くん困ってる。

泣き止まなきゃと思うのに、そう思えば思うほど涙がこぼれてくる。


「あの・・・これ使ってください。」


そう言って差し出された手には白いタオルハンカチが乗っている。

なんだか全身真っ黒な隼人くんが持っているのが妙に可笑しく思える。


「ありがと・・・。」


「ごめんなさい。

唯さんが華穂さんに黙っていなくなるはずないですよね。

俺、唯さんに対して酷いこと言いました。」


そう言われて、自分がなんで泣いていたのか気づく。

唯さんが侮辱されたみたいで悔しかったんだ。

思わず反論したけど、実際に今唯さんはそばにいなくて。


「クイズを早く解いて、唯さんを助け出しましょう。」


「うん。」


早く見つけ出して、唯さんに直接理由を聞かなくっちゃ!



華穂は危険な場面に遭遇したことがないため、唯が成人男性投げとばすくらい強いことを知りません。

唯と華穂は相思相愛のようです。(ガールズラブではありません)

メンズふたり頑張れ。


いつもブックマークありがとうございます。

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