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空太視点。

「はぁ・・・・。今何日だろうなぁ・・・・。」



ベッドにごろんと転がって考える。

窓のない小さな部屋。

風呂やトイレとか必要最低限のものはあるけど、テレビやカレンダーとか日付のわかるものは何もない。ついでに言えば、時計も無い。

窓もないから今が昼なのか夜なのかもわからない。



「ここが華穂んだってのはわかんだけどなぁ・・・・。」



仕事終わり、いつも華穂の送迎をしている車が店の裏口に止まってたんで運転手に声をかけた。

そしたら助手席から見たことのない男が降りてきて、華穂が心配するから送迎させてくれと言ってきた。

来てもらったのを追い返すのも微妙だから、車に乗り込んだらそのまま身体が痺れるような衝撃が走ってそのまま気を失っちまった。


で、気がついたらこの部屋のベッドに寝てた。


スマホもバッグも無くなって、有るのは自分が着てた服だけ。

慌てて出ようと思ってドアを開けたら、がっちり鉄格子が嵌ってて驚いた。

駄目元で押したり引いたりしてみたけど、そんなんで外れるわけもなくそれからずっとこの部屋にいる。



「華穂・・・・」



頭に浮かぶのは、泣いていた華穂の姿。

親父さんがいなくなって、俺もいなくなって、どうしてるんだろう。

最後に会った時もでかいクマができてた。

下手したら寝込んでるかもな・・・・。



近くにいるはずなのに、何度呟いてもどんなに叫んでも届かない。

ただ毎日運ばれてくる食事。料理長の味だけが、俺が今華穂の近くにいることを教えてくれる。



「何とかしてここから出ねぇと・・・・・・。」



初日はここに来る人間相手に交渉してみた。


ここに来る人間は2人。


ひとりはこの間、華穂から紹介された三条秀介。

三条は俺の目が覚めた日に、今何が起きてるのか説明してくれた。

そして言った。



『空太くん。

華穂さんがどれほど大きなものを背負っているかわかっただろう?

君では華穂さん重荷を一緒に背負えない。

だから、華穂さんを諦めてくれないかな。

これは君のためでもあるんだ。』


『ふざっけんな!!!

あんたらが勝手に華穂に背負わせたんだろう!!??

華穂の両親引き離して、あいつをひとりにして!!

自分の都合であいつを捨てておいて、今になってしゃしゃり出てきて重荷を背負え!!??

いい加減にしろっっっっっ!!!』



あ〜〜〜〜〜〜〜!今思い出しても腹がたつ!!!

鉄格子さえなければぶん殴ってやったのにっ!


そう言って追い返したのに、三条はちょくちょくやってきて華穂を諦めるように説得しにくる。

俺がそれを了承さえすれば、ここから出られるって言って。


十年・・・・やっと、やっと、届いたんだ。

わけわかんない横槍で諦めてたまるか!!




もうひとりは初めて会う女。名前は知らない。

その女は俺に食事を持ってくるだけ。

鉄格子の下に開いている小窓の前に食事を置き、

『食事です』って言葉をかけて去っていくだけ。

初日は何度か話しかけたけど、全然反応なし。



話し合いは早々に諦めて2日目は死んだふりをしてみた。

鉄格子が開けば儲けもんだと思ったけど、外からあっさり見破られて『僕はこれでも医者だからそんなことをしても無駄だからね』と笑顔で言われた。


そこからは部屋の中を荒らしてみたり、叫んでみたり、壁を叩いてみたり、抜け穴がないか探ってみたり・・・・思いつく限りやってみたけど収穫なし。

最近ではあまり良くない手段が頭に浮かぶ。


ほっとけないくらいの怪我をすれば・・・・・・・・。


浮かんできた考えに首を振る。

ダメだ。確実にここからは出られるけど、隙をついて逃げ切れる保証はない。

捕まれば怪我をして動きづらくなったあげく、監禁場所が病院にかわるだけだ。

華穂から距離も離れちまう。



諦める気は無い。

でも、正直万策尽きた。



コンコンッ



ドアがノックされる。

食事の時間か。

ドアを開ける。

いつも通り、鉄格子の前に女が立っていた。


だが、女の言葉はいつもと違った。



「あなたにはここから出ていただきます。」


「はっ!?」



驚くほど大きな声が出た。

女が顔をしかめて、シーっというポーズをする。



「お静かに!ここで見つかったら出られなくなります。」



慌てて口に手を当てる。


俺が黙ったのを確認して女は錠に鍵を差し込んだ。

ガチャンという音と、金属特有のキーっという音を立てて扉が開く。

それと同時に女は室内に滑り込んできた。



「時間がないので手短に説明します。

今から華穂様のところに案内します。

指示に従ってください。」



女の言葉に一気に警戒心が上がる。



「・・・・そんなこと、信じられるとおもってんのか?」



今まで散々無視して監禁しておいて、今さら華穂にあわせるだなんて何かあると思うのが普通だ。

今なら鍵は開いてる。

だったら、女を拘束して俺だけ逃げた方が・・・・・・・・。


俺の言葉に女が嫌そうな顔をする。



「事情が変わったんです。

ここであなたと話してる時間はありません。

華穂様に会いたいか、会いたくないか、それだけです。

今来ないと、もう二度と華穂様に会えないかもしれません。

警戒されるのも仕方ありません。

けど、ここで私について来なきゃ悲しむのは華穂様ですよ。」



じっと女に目を見つめる。

その目が嘘をついているようには見えない。



この女以外に人のいる感じはしない。

ヤバい感じがしたら、逃げればいい。

女ひとり相手なら、なんとかなる。



「わかった。あんたについていく。」



華穂に会えるんだったら、どんなことでもやってやる。

監禁されてた空太視点。

ヒーロー視点なので、拍手でもいいかなぁと思ったんですが、今の拍手お礼がいつ終わるかわからないので本編に組み込んでみました。

次回ついに華穂と再会。

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