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「・・・・・・・一弥、扉から離れなさい。」



さっき扉を叩いた感触は木だった。

これなら・・・・いける。


扉から距離を取り、軽く息を吐く。

チャンスは一度きり・・・・

失敗は許されない。


向こう側にいる一弥にバレないように気合を入れて・・・・




ハッ!!!!



まずは扉が吹っ飛ばない程度に左足で軽く一撃。

これで一弥は驚いて扉から離れただろう。

続けざまに右足で本気の一撃!!!



ハアァァァァァァァアアアアァッ!!!



狙い通りの位置にクリーンヒット。

バリッと言う音を立てて蝶番が弾け飛ぶと同時に、扉はその形を残したまま廊下の壁に倒れかかった。



「ふぅ・・・・。」



上手くいってよかった。

扉が割れて破片が飛んだりもしなかったし、蹴った感じ、一弥が扉に張り付いたりはしていなかったようだから怪我はないだろう。



「一弥?」



外した扉をどけると、一弥はその後ろで壁にもたれかかるようにして座っていた。

俯いていて表情は見えない。



「・・・・・・・・・・・・また・・・・いなくなるの?」



覇気のない、諦めきったような、絶望しきったような声。



「一弥、顔上げて。」



のろのろとあげられた顔。

その目は虚ろで、私の姿はちゃんとうつっているのだろうか。



バンッ!!



挟み込むように顔を両手で叩けば、けっこういい音がした。

額がくっつくんじゃないかというくらいの至近距離で一弥の瞳を見つめる。



「あのねぇ。

あんた私のどこを好きになったの?

このわ・た・し・が、華穂様救出を失敗するとでも?

一弥はいつも私のこと見くびってるのよねぇ。」



強気でいけ。

嘘八百でもなんでも並べ立てて一弥を引き上げろ。安心させろ。

私は大丈夫。



「私が華穂様が泣くようなことするわけないでしょう?

華穂様を助け出して、裕一郎様も戻ってきて、私は今まで通り華穂様にお仕えしてハッピーエンド。

これで決まり。これ以外ないの。

私に何かあって華穂様が泣くような下手は打たない。

主人を泣かせるなんて執事失格だからね。」



自信満々な笑顔を浮かべる。

・・・・・・・・本当は自信なんてないからつくり笑いだけど。



「私、完璧主義なの。

やると決めたからには絶対にやり遂げる。

たとえどんな障壁があろうとも。

こんな風にブチ破ってね。


協力の件は忘れていい。

見てて不安になるなら、ただ待ってなさい。

全部終わったら、また会いにくるから。


そうね・・・・。

その時は、前にいったお店で奢ってもらおうかしら。

今回の件のお詫びってことで。

監禁は犯罪なのよ?

黙っといてあげるから、私にたっぷり食べさせなさい。」



ふふふっと笑って顔から手を離し一弥から離れる。

一弥は動かない。



「約束ね。

そんなにぼーっとしてたら、勝手におごり増やすからね。

後から“聞いてませんでした”は通用しないから。

あー、来年のライブのチケット欲しいなー。

私と華穂様と隼人様の分。

あとは遊園地にも行きたいなー。今度は大阪でもいいな。」



どんどんおごりを並べていくが、一弥はぼんやりしたまま返事をしない。

・・・・・・・・このあたりが限界かな。


一度、拳を握りしめてから、意識してにっこりと笑顔を浮かべる。

そのままギュッと一弥の首に抱きついた。


自分でも心臓がものすごいはやさで鳴っているのがわかる。

苦しいくらい。

恥ずかしくて顔があげられない。

でも、声だけは意識して穏やかに伝える。



「大人しく待てたらご褒美をあげる。

だから、いい子で待ってなさい。」



言葉だけじゃ足りないなら。

少しでも一弥の不安がやわらぐように。

一弥の望む強くて偉そうな私でいよう。

心穏やかに一弥が待っていられますように。

ちょっと仕事の棚卸しとかでバタバタしております。

次回は拍手お礼更新です。

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