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華穂視点。

コンコンッ



「はーいっ!」



返事をしてから『あれっ?』っと思う。

今は夜の12時。


こんな時間に誰だろう?

お祖父ちゃんとは昼間話したし、秀介さんがくるには非常識な時間・・・・。

お祖父ちゃんになってからはよくわかんないけど、前だったら当番のお手伝いさん以外みんな帰っちゃってる時間だし・・・・。


なんだかいろいろ疑問があるけど、ドアの前にいる警備(という名の見張り)の人が止めないんだからあやしい人じゃないよね。



ガチャッ



ドアを開けて首をかしげる。



「えーっと、こんばんは?」



そこに立ってたのはいつもお祖父ちゃんの後ろにいる女の人だった。







とりあえずソファーを勧めてお茶を入れる。

警備の人がいるからあんまり話聞かれたくない。

淹れたてのお茶を『ありがとうございます』と受け取ってから女の人はぺこりと頭を下げた。



「夜遅くにすみません。

どうしても源一郎様に知られずにお話したかったので・・・・。」


「あ、いえ。

まだ寝てなかったので全然大丈夫なんですけど、あの・・・・お名前をお伺いしても?」



失礼かなと思ったけど、さすがに名前も知らずに深刻そうな話を聞くのはダメだと思う。


わたしの言葉に女の人もハッとしたような顔をする。



「あっ、失礼しました。

私は源一郎様のお世話をさせていただいている看護師の里美といいます。」



看護師さん・・・・、そっかだからいつもお祖父ちゃんのそばにいたんだ。



「里美さんですね。よろしくお願いします。

それで、お話って??」


「その・・・・っ、私がお願いできることじゃないんですけど・・・・秀介先生を助けてください!」



頑張って言いきった!って感じの里美さんはそのまま俯いちゃった。

助けってって言われても・・・・・・・・。



「あの・・・・助けるってお祖父ちゃんからですか?」



お祖父ちゃんとわたしの板挟みになって秀介さんが苦しんできたのはわかる。

わたしも今の状況をなんとかして、秀介さんにはお医者さんとして頑張って欲しいと思う。

わたしの問題が全部ひっくるめて解決すれば秀介さんも解放されるはずだから、今お祖父ちゃんから返事を待ってるところなんだけど・・・・。



「秀介先生は・・・ずっと悩んでました。

わたしも少しでも協力していけば、秀介先生は楽になってくれるのかなって思ってずっと源一郎様をサポートしてきました。

でも、ますます秀介先生は苦しそうで・・・・っ」



絞り出すような、泣きそうな声で気がつく。

そっか、この人秀介さんのことを・・・・・・・・。



「昼間、源一郎様にはっきり意見する華穂様を見て気がつきました。

わたしも言われるまま従うんじゃなくて、もっと自分で動かなきゃいけないんだって。

秀介先生がほんとはこんなこと望んでないってわかってたのに、それをすすめるようなことしかできなくって・・・・。

今からでもなんとかしたいんです。

でも、わたしなんかができることなんてほとんどなくて・・・・・・・・。

華穂様ならなんとかできると思ったんですっ!」



必死な目にちょっと仰け反る。

すっごくすがられてるけど、わたしにすがってもらえるほどできることがあるわけじゃない。

昼間だってただ必死だっただけだし。

がっかりさせるのは心苦しい。

けど、ここでできないことを安請け合いするべきじゃない。



「ごめんなさい。

わたしも秀介さんを助けたいと思ってます。

でも、わたしも出来ることなんてないんです。

3日後のお祖父ちゃんの決定を待つしか・・・・」



あぁぁ、やっぱりしゅんとしちゃった・・・・っ

でも本当のことだし・・・・。


3日後・・・・待つのは長い。

せめてそれまでにもう少しお祖父ちゃんの考えを変えさせる何かがあれば・・・・。



沈黙が重い。

なんて言っていいかわからない。



「あの・・・・、里美さんは秀介さんに頼まれてお祖父ちゃんの世話をしてるんですか?」


「はい。

私はもともと三条病院で看護師として働いてました。

5年前、人間関係が上手くいかなくて病院をやめようか悩んでた時に、秀介先生に声をかけていただいて出向という形で住み込みで看護をするようになりました。」


「5年っていうとお祖父ちゃんが病気になってすぐですか?」


「はい。

今でこそ歩行以外はほとんど支障がありませんが、倒れられてしばらくは意識不明で、意識が戻ってからもずっと寝たきりの状態が続いていました。」



里美さんはお祖父ちゃんのことをずっと見てきてるんだ。

話を聞いてたら、何かヒントになることがあるかも。


そう考えたわたしは里美さんから色々聞き出すことに決めた。

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