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「裕一郎様っっ!」



よかった、よかった、ご無事だった!!


あまりの驚きと大きな安堵でそれ以上言葉が出てこない。

目が潤んで視界までボヤけてきた。

そんな私をびっくりした表情で一弥が目を丸くしてみている。



「あー・・・・すいません、高良田社長。

なんか唯ちゃん、嬉しすぎて何も言えなくなっちゃてて。」



一弥が私の代わりにやり取りをしてくれる。



『あぁ、皇くんか。

すまないね、うちの子達が迷惑をかけて。』


「いーえ、唯ちゃんから行方不明だって聞いてたんで、見つかってよかったです。

おかげでこっちでやらなきゃならないことが減りました。」


『ははははっ、なかなか手厳しいな。

・・・・・・・・唯くん、心配をかけたね。』


「いいえ・・・・よくご無事で・・・・っ」



みっともないくらい涙声だ。

電話の相手は主人なのに、情けない。



裕一郎様は捕まった時のことを教えてくれた。

同行していた秘書に薬を盛られて拉致されたらしい。

監禁されていた場所から逃げ出した後、徒歩やヒッチハイクをしてなんとか隼人のところまでたどり着いた。

歌を歌って日銭を稼いでいたというのだから驚きだ。

『日本の歌だからみんな珍しがっておひねりをくれてねぇ。おかげで助かったよ。ハハハッ』

なぁんて笑っているからツワモノだ。

やはりこれくらい肝が座ってないと大会社を背負ってはいけないのか。




『隼人くんから大体の状況は聞いたよ。

よく頑張ってくれた。』



見えるはずもないのに電話の前でふるふると首をふる。

確かにいろいろ調べていたが、まだ何も結果は出せていない。

褒められるようなことはできていない。



『私が油断していたせいで、華穂にも君にも苦労をかけたね。

ありがとう、君のおかげで状況がわかってよかったよ。』



ますます涙がこみ上げてくる。

あまり喜ばせないでほしい。

また話せなくなってしまう。



『まさか秀介くんが父の方に付いていたとは・・・・。

全く予想していなかった。

会社の方は心配しなくていい。

信頼できる者に状況報告をもらっている。

根回しも終わっているから、取締役会で父が復帰することも、秀介くんが後を継ぐこともない。』



・・・さすが裕一郎様。

遠くにいらっしゃっても仕事が早い。



『問題は邸の方だ。

さすがにプライベートの問題を部下に調べてもらうわけにはいかないからね。

中の状況を詳しく教えてもらえるかな。』


「はい。」



隼人には話していなかった細かい部分の説明をする。


里美さんのこと。

邸に三条家の使用人が入ってきていること。

警備がかなり厳重になっていること。



「それと・・・・、あくまで進一様と源一郎様との会話からの推測でしかないのですが、おそらく今回の件、高良田家の親族に源一郎様の協力者がいると思われます。

ただ、先ほど一弥から聞いた情報なのですが、進一様が邸の前で門前払いをされていたということなので、今現在も協力しているのかはわかりません。」


『そうか・・・・。

取締役をしている親族の数人が父に協力していることはわかっている。

その線から他に協力者がいるのかどうか探らせてみよう。』


「よろしくお願いいたします。」


『これからどう動くつもりだった?』


「・・・・・・・・空太様の発見と救出を最優先で行おうと思っています。

ただ、どこにいらっしゃるのか全く見当が・・・・。」



っと、これも言っておかなきゃいけなかった。



「槙嶋様と花柳様に調査の協力をお願いしていますが、現在槙嶋コーポレーションの関連会社の一つに高良田側が買収を仕掛けており、槙嶋様はその対応に追われて身動きが取れないようです。」


『わかった。その件もこちらからどうにかできないか手を回してみよう。』


「お願いいたします。」



会話が途切れ、沈黙が訪れる。

こちらから報告できることは終わった。

あとは・・・・



「・・・・やはり裕一郎様がこちらにお戻りいただくのは難しそうですか?」


『・・・・私もどうにかできないかといろいろ考えてるんだが、こちらではどうしても人手が足りない。

領事館、空港、鉄道は父の手が回っている可能性がある。

安全を確認しようにも私が出ていって捕まるわけにはいかないし、隼人くんが私と懇意にしているのは周知の事実だから、彼がいっても私の居場所が知られる危険性があるから下手に動けない。

父が完全に諦めるまで、帰国は難しいだろう。

・・・・・・・・すまないが、唯くんたちに頼るしかない。』



あの裕一郎様がここまで言い切るということは、やはり手はないのだろう。

もともと裕一郎様も救出する予定だったのだ。

帰国できなくとも無事が確認できて、捜索の必要がなくなったのは大きい。

国内は私たちでかたをつける。



「かしこまりました。

必ず、華穂様も空太様も救出して、裕一郎様の帰国を全員でお迎えにあがります。」



必ず、泣いて喜ぶであろう華穂様の顔を見るのだ。



『あぁ、頼んだよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・一つだけ、空太くんのいる可能性のある場所に心当たりがある。

あそこは・・・・・・・・・・・・』




裕一郎様から告げられた場所に、私は大きく目を見開いた。

ユーロ圏の移動ってパスポートいるんですかねぇ・・・・?

パスポート必要でしたら裕一郎様は密入国してることにしといてください。


9/5追記→

読者様から90日以内の旅行者であれば国境の細かいチェックなく移動出来ると教えていただきました。

ビジネスの場合はまた違うかもしれないとのことですが、とりあえず裕一郎は旅行でビザとってることにしておきます(笑


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