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「しゅしゅしゅしゅしゅしゅ秀介さんっ!?」



なななななななななんでお姫様抱っこっ!?!?


わたわたするわたしを抱えたまま秀介さんはスタスタと歩いていく。

どうしようかと秀介さんのいく先を見てホッとする。

あ、ソファーに座らせてくれるんだ。



予想通り、秀介さんはソファーに座った。

わたしを膝に乗せたまま。



「あ、あのっ!?おおおおおお下ろしてくれればわたしひとりですわれますからっ!!」



な、なんでわたし膝に乗せたまま!?

ちっ、近い!!

いつもそうだけど、秀介さん距離が近いよっ!!



腕に感じる胸の暖かさ、肩に感じる手のひらの力強さにドキドキが止まらない。

ど、ドキドキし過ぎて息が苦しい・・・・っ


膝裏から外された腕が、キュッと腰に巻きつく。

一層強く心臓が跳ねるのと同時に眉間にシワがよる。


ドキドキする。

ドキドキするけど、嬉しいドキドキじゃない。

やっぱり、空太以外には触られたくない。



「離して、ください。」



秀介さんの胸を強めに押す。

すると、離れるどころか逆に強く抱き込まれた。



「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」



“イヤッ!!”っと秀介さんから逃れようとする直前、耳に小さな声が届く。



「ごめん、少しだけ・・・・ほんの少しでいいから・・・・」



耳元で聞こえる、か細く沈痛な響きに思わず抵抗を止める。

まるで迷子の子供のような声にどうしていいかわからなくなる。



「これで、最後だから・・・・。

ちゃんと、諦めるから・・・・・・・・。」



秀介さんの呟きに、すとんと今の状況を理解する。



あぁ、そっか。

わたし、お祖父ちゃんにいろんなこと言いながら、おもいっきり秀介さんのことフッちゃったんだ。

お医者さんという仕事を諦めてまで、わたしを守ろうとしてくれたのに。

秀介さんと結婚する気はないけど、こんな返事の仕方は不誠実だったと思う。

お祖父ちゃんのとこに行く前に、きちんと秀介さんに話さなきゃいけなかったんだ。


ふっと体の力を抜く。

秀介さんが落ち着いたら謝ろう。

今はまだ・・・・。

涙を流さずに泣いてる秀介さんをそっとしておこう。






10分くらいで秀介さんはわたしをソファーに下ろしてくれた。



「あの・・・・秀介さん、ごめんなさい。」


「謝らないで。

華穂さんには桜井くんがいるってわかってたのに、強引に進めたのは僕なんだから。」



わたしをソファーに下ろした後、反対側のソファーに座った秀介さんが困ったように笑う。



「華穂さんと結婚できないのはすごく残念だけど・・・・、でも、スッキリした。


"これしか華穂さんを守る方法はない”


って、思いながら覚悟も決めたはずなのに、ずっと苦しかった。

それを見事に華穂さんは取り払ってくれた。

状況が良くなったわけじゃない。

けど、なんだかすごく楽になった。


・・・・・・・・華穂さんを好きになってよかったよ。ありがとう。」



「・・・・・・・・っっ!!」



晴れやかな笑顔に胸がドクンと音を立てる。

それと同時にあたたかいものが広がる。



「わたしの方こそ、今まで守ってくださってありがとうございました。」



深々とお辞儀をすると、秀介さんは柔らかく笑った。



「桜井くんのことは心配しなくていいよ。

居場所は言えないけど、元気にしてる。

ずっと『誰になんと言われても華穂とは別れません』って言い続けてるよ。」



空太・・・・・・・・。



「おそらく3日後・・・・約束の期日までには桜井くんは解放されると思う。

会わせてもらえるかどうかは、源一郎様が華穂さんと桜井くんの交際を認めるかどうかによるけれど。」


「もし、今回会えなくても、お祖父様を説得して遠くないうちに会いにいきます。」


「うん、それでこそ華穂さんだね。

病院のこともあるから表立っては手助けできないけど、応援してる。

桜井くんに伝言があるなら伝えておくよ。」



わたしは少しだけ考えて、空太への伝言を頼んだ。



秀介さんはわたしの伝言を聞いて『必ず伝えるね』と言って、また柔らかく笑ってくれた。

ここで一旦華穂ターン終わり。

長かったー!!

次回やっと唯でてきます。

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