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華穂視点。

心臓が飛び出そうなくらい緊張でバクバクしてる。

でも、ここで怯んだり弱音を見せたりはできない。

わたしが会話の主導権を握ってるうちに畳み掛ける!



「お祖父様の意志もおっしゃられていることの理屈もわかります。

ただ・・・・それは今の時代に合っているとは思えません。

もし、わたくしに子供が出来たとしても、

その子が優秀な経営者になるかどうかはわかりません。

お祖父様もお父様もたまたま優秀だっただけで、おふたりの血を引いているわたくしは自分を優秀だと思ったことはありません。

お祖父様もわたくしにグループを任せるなど不安でしょう?

秀介様が上手くグループを成長させても、次代でダメになるかもしれない。

それではダメなのです。

大企業には従業員と株主、そしてお客様に対する責任があると学びました。

その大きな責任を負わせるのに必要なものが血筋だというのは、危険すぎるのではないでしょうか。

人には向き不向きがあります。

たとえ経営者に向いていなくても、料理の才能があるかもしれない。

料理の才能がなくても、子供が好きで幼稚園の先生に向いてるかもしれない。

血筋で全てを決めるのは子供の可能性を摘むことです。

逆に経営者の血筋でなくても経営者に向いている方もいます。

血筋だけでその方々を排除することは会社にとって不利益にしかなりません。

・・・・・ お祖父様のご先祖様から受け継いだものを次の世代へ受け継いでいきたいという思いは尊いものだと思います。

けれど、それで会社へ不利益を与えたり、子供達に不自由を強いるのは間違っています。」



お母さんは『幸せだった』って笑ってくれた。

けど、お父さんはきっと後悔してる。

わたしたちを手放したこと。

何があってもお父さんは諦めるなって言った。

わたしは、わたしのためにも、お父さんにためにも、そして生まれてくるかもしれない子供達のためにも絶対に諦めない。



「一族の繁栄はお金があることですか?

美味しいものを食べて、綺麗な服を着て、運転手付きの高級車に乗って・・・・。

お祖父様やお父様の築いてくださったお金で、わたくしはそういう生活をさせてもらっています。

お父様に会えなくなってからも、それはずっと変わりません。

でも、今のわたくしは不幸です。

どんなに素敵なものに囲まれていても、自由な外出も好きな人に会うことも許されず、自分の意思と関係なく決まった方に進むしかない。

・・・・・・・・お父様に閉じ込められていた間、お祖父様は幸せでしたか?

お祖父様を閉じ込めるしかなかったお父様も不幸です。

お母様との結婚が認められていれば、ここまでお祖父様との仲が拗れることはなかったかもしれません。

お父様がいてお母様がいて、お祖父様とわたくしが笑いながら食卓を囲む・・・・そんな未来があったかもしれないのに。

子孫を不幸にしてまで財産を築くことは、繁栄と言えますか?

ご先祖様がそんなことを望んでいると?

・・・・・・・・わたくしだったら、子供達がいつも笑っていてくれることを願います。

お母様とふたりで暮らしていた時や、園での生活は物質的には恵まれてなかったけど、とても幸せでした。

物より心が満たされることの方が大事だと、わたくしは思います。」



全部、言い切った。

お祖父様の考えとは全く相容れないのはわかってる。

でも、譲れない。

お祖父様がどこまで折れてくれるか・・・・ここからが戦いだ。



「わたくしはこの考えにより、お祖父様の隠居及びお父様の復帰を要求します。」



お祖父様がニヤリと笑う。

・・・・・・・・こういう顔はお父さんそっくりで、親子なんだって感じる。



「・・・・・・・・ただの躾のなってない小娘かと思うておったが、いやはや。

腐っても我が孫娘といったところか。」



お祖父様の言葉に目を丸くする。

我が孫娘って・・・・・・・・わたしのことを認めてくれたってこと?



「お前の意見はよくわかった。

お前の意志もな。

確かにお前はわし譲りで頑固なようだ。

わしの若い頃によう似ておる。

わしも若い頃は自分の意見が正論だと信じて、それを並べ立てて相手を屈服させておったわ。」



・・・・・・・・なんだかそう言われると、わたしの性格がすっごく悪いみたいな・・・。



「さて、お前の切れるカードは全部切ったか?

それではわしも一枚重要なカードを出すとしよう。」



お祖父様の切れる重要なカード・・・。

ごくりと唾を飲む。



「お前の恋人はわしの手の内にある。

それでもお前はまだわしを脅すなどという強硬手段にでるか?」




なかなか華穂のターンが終わらない・・・。

唯の出番は233くらいですかねぇ・・・・・・・。

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