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華穂視点。
揺るぎない瞳。
・・・・そっか、そうだよね。
あんなに悩んでいた秀介さんが、それを考えてないわけがない。
考えて考えて悩み抜いて下した結論。
だから、秀介さんは非情になれる。
その覚悟は揺らがない。
きっとお祖父ちゃんもそう。
みんなそれぞれいろんなことを覚悟して行動してる。
だったらわたしは・・・・・・・・
「秀介さん、お祖父様のところに一緒に行ってもらえませんか?」
「いいけれど、源一郎様になんの用が?」
唯さん仕込みの笑顔でニッコリ笑う。
「先日、お祖父様から伺った話のお返事をしようと思って。」
先日も案内されたソファーに今度は秀介さんとふたりで並んで座る。
向かいにはこれまた同じようにソファーに座ったお祖父ちゃんとその後ろに控える女の人。
「いつもお前の訪問は突然だな。」
「思い立ったが吉日と申しますから。」
にっこりと笑顔は崩さない。
「それで、秀介まで連れて今日はどうした。
わしは忙しい。くだらん用など聞く暇はないぞ。」
「とても大切なお話なので秀介さんにも聞いていただこうと思いまして。」
「して、どんな話だ。」
「わたくし、お祖父様とお話をしてから色々考えました。
その答えを聞いていただきたいのです。」
「ほぅ。」
お祖父様の眉がちょっと興味を持ってくれたみたいで、少し上がる。
「結論から申し上げます。
わたくしは秀介さんとは結婚しません。
それに高良田グループもお祖父様には渡しません。」
お祖父様の視線が一瞬で鋭くなる。
隣で秀介さんが心配そうにわたしを見ているのがわかる。
笑顔、笑顔。
「お前は、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「もちろんです。
何も考えずにこのようなことを申したりいたしません。
これもお祖父様の願いを叶えるためです。」
お祖父様の眉間にシワがよる。
「説明してもらおうか。」
・・・・ちゃんと話を聞いてくれる気はあるみたい。
バレないようにこっそり深呼吸をする。
ここからが正念場だ。
「お祖父様の願いは高良田家と高良田グループを大きく繁栄させること。
これで間違いありませんか?」
「・・・・・・・・まあ、そうだな。」
「その願いは今のお祖父様のやり方では叶いません。
お祖父様は流を・・・・槙嶋様を甘く見ています。」
お祖父様は面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「甘くなど見ておらん。
だから、こうしてTOBを仕掛けて槙嶋コーポレーションに意表をつく形で損害を与えて、責任を取って槙嶋の坊主がCEOの座から降りるようにしておる。」
「それが甘いのです。
あの方相手に、このようなことが上手くいくとは思えません。
万が一、上手くいったとしても倍返し・・・・下手をすれば10倍返しで返ってきます。」
「・・・・・・・・随分と槙嶋を買っておるな。」
「はい。
槙嶋様とは親しくさせていただいております。
あの方は実力もあり、信頼できる、一流の方です。」
なんたってわたしの大切な執事にふさわしい相手なんだから。
「性格は少し難ありですが、カリスマ性もあって多くの方に・・・・尊敬されています。
お父様よりきっとお祖父様に近いタイプですね。」
お父さんみたいに親しみやすくはないけれど、なんとなく王様みたいな雰囲気が漂ってるのがお祖父様っぽい。
「わたしは槙嶋様を経営者として尊敬していますし、彼は日本経済の重要人物だと思っています。
そんな方と手を結ぶことも考えず、失脚させようと企むなど、状況が見えていないとしか思えません。
そんなお祖父様に大事な高良田グループは渡せません。」
じっとお祖父ちゃんの目を見つめる。
わたしと同じ強さで跳ね返される視線。
でも、不思議と前みたいに震えは起こらない。
なんだかどんどん言葉が溢れてくる。
"わたしは間違っていない”
その自信がわたしを強くしてくれる気がした。
せ、せめて週一は更新したい・・・・orz




