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『平静を装っていましたが、随分と心乱れているようでした。』
「そうですか・・・・・・・・。」
電話口の宗純の言葉に華穂様の姿を思い浮かべる。
まだ邸を出て1日しか経っていないのに会いたくてたまらない。
「伝言ありがとうございます。
このようなことをお願いしてしまい申し訳ありません。」
昨日、流が帰ってきてからすぐに宗純の電話番号を聞き出し、電話をかけた。
事情を説明し、私の状況を華穂様に伝えて欲しいと頼むと宗純は快諾してくれた。
・・・・・・・・声は相変わらず平坦で無感情だったけれど。
『昨晩も言いましたが、貴女が謝る必要はありません。
裕一郎さんにも源一郎様にも花柳家は大変お世話になっています。
そのおふたりの仲違いを治めるために尽力するのは当然のことです。』
「ありがとうございます。」
『三条病院と源一郎様の繋がりについてはこちらでも調査をします。
槙嶋様への報告は貴女にお願いしていいですか?』
「かしこまりました。」
『では、また何かあれば連絡します。』
「よろしくお願いいたします。」
宗純が通話を切ったのを確認してから、こちらも通話をオフにする。
携帯を握りしめたまま、ふっとため息が溢れる。
大丈夫、たぶん・・・・上手くいってる。
華穂様はご自分で秀介の抱える問題に気がつかれた。
ゲームを遊び尽くした私は、なぜ秀介が源一郎様に協力しているのかもちろん知っている。
けれど、それは私が教えることのできないもの。
手助けはもちろんするが、その問題に気づき、解決するのは華穂様や空太たち登場人物でなくてはならない。
華穂様が秀介の問題を解決できれば、きっと空太の居場所もわかるはず。
書きかけの便箋に目を落とす。
これは本田さんに昨日頼んだ私自身の買い物だ。
頭の中を整理するために新しい便箋を出して今の状況を整理していく。
シナリオ通り
・裕一郎様の行方不明
・源一郎様の登場
・取締役会の招集
・華穂様の軟禁
・秀介の協力
シナリオ外
・空太行方不明
・秀介との婚約
・私
書き出した文字をじっと見つめる。
書いた数だけならシナリオ通りに進んでいるように見える。
見えるが・・・・。
「・・・・・・・・この後どうなるんだろう?」
空太の本来のシナリオはちょっと駆け落ち要素を含んだ内容だった。
軟禁された華穂様を怪盗のように邸から攫っていくというものだ。
『贅沢なんてさせてやれない。
もしかしたら、逃げ続けるだけの生活になるかもしれない。
きっとここに残った方が安定した生活をおくれるってわかってる。
それでも・・・・俺はお前を諦めきれない!』
華穂様を抱きしめながら切ない表情で言葉を紡ぐシーンはかなりの美麗スチルだった。
『贅沢なんていらない。
空太がいないなら、なんの意味もない。
だから、お願い。連れってって。
わたしは何があってもずっと空太のそばにいるから。』
そう返事をした華穂様と邸を脱出したあと、華穂様の『お父さんを探したい』という希望を叶えるために流たちの協力を得て裕一郎様を助け出してハッピーエンド。
・・・・・・・・という流れだったのだが、肝心の空太がいない。
空太をこちらで助け出せば、この通りの流れになるのだろうか?
それに秀介が婚約者になるのもおかしい。
ゲームでの華穂様の婚約者はそこでしか出てこない太った成金モブだったはずだ。
秀介ルートですら、源一郎様が結婚を推し進める相手はそいつだったはずなのに・・・・どういうことだ。
秀介か感じた華穂様への好意・・・・。
その結果なのだろうか?
最終局面に入った今、もう秀介のルートは終わっているはずなのに・・・・。
首をひねりつつ、電話がかかってきて中断していた手紙の続きを書く。
簡単に読み返して封筒に入れる。
これが上手くいけば後は結果を待つだけだ。
大変お待たせして申し訳ありません。
ただいま絶賛悩み中です(涙
このまま華穂様救出に向かっていいのか、一弥と流の見せ場がいるのかどうしようかと・・・・。
なんかこのまま華穂助けに行くと物凄い唐突な話の展開な気がするんですよね。
なんかスライム倒してたのに突然ラスボス出てきた・・・・みたいな。
某お方が暴走するので、その前に中ボスくらいワンクッション置けないものかと考えてるんですが・・・・。
話が急展開になったら「思いつかなかったんだな」と笑ってやってください(涙




