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裕一郎様は華穂様に後を継いで欲しいのか、はたまたできるだけ一緒にいたいからなのかよく仕事関係の場所に華穂様をお連れになる。



今日の行き先は撮影スタジオ。


青い背景を背にマイクスタンドに寄りかかる形で一弥が熱唱していた。

前には大きな扇風機が置かれ、髪や長いジャケットの裾をはためかせている。


フェリシテ看板商品のコーヒーシリーズの新商品CM撮影だ。


「はい、OKです。一弥さん、一旦休憩お願いします。」


撮影中に私たちが来ていることに気がついていたのだろう。一弥はまっすぐこちらに歩いてくる。


「華穂ちゃんと唯ちゃんじゃん。なになにもしかして撮影見にきてくれたの?」


「はい、父の見学についてきました。」


裕一郎様はOKの声とともに監督に挨拶にいっていてこの場には不在だ。


「ふたりが見てくれてるのわかったから、歌にも熱が入っちゃったよ。

やっぱり可愛い子がいると違うよね〜」


相変わらず安定の軽さである。


「しっかし、唯ちゃんはパーティの時と随分イメージが変わるねぇ。

ドレス姿も妖艶でよかったけど、スーツ姿も映画に出てくるエージェントみたいで魅せるねぇ。」


妖艶なんて単語、本で読んだことしかありませんよ。

それがさらっと口から出てくるのが恐ろしい・・・。

なんと答えたらいいかわからないので『ありがとうございます。』とだけ返しておく。


「華穂ちゃんもこの間と違って、今日はセクシーな感じだねぇ。可愛らしいデザインも似合ってるけど、俺は今日の服の方が好きだな。」


華穂様は襟の大きく開いた黒のミニワンピースにニーソックスとショートブーツ。大きめのチャームのついたネックレスとバングルを身につけていた。


たまに華穂様も前世でプレイヤーだったんじゃないかと疑いたくなる。

出かけ先での服装が攻略対象の好みにぴったりなのだ。

屋敷にいてたまたま秀介にあった時でさえ彼好みの服を着ていたのが恐れ入る。

ゲームによる主人公チートでもあるのだろうか。


一弥に褒めちぎられていると『一弥さーん、衣装チェンジお願いします』という声が聞こえてきた。

一弥は『はいはーい』とそれに手を振って答える。


「じゃあ、俺ちょっと着替えてくるから待っててね。」


バッチンとウィンクをして一弥は着替えに行った。




スタジオに戻ってきた一弥の姿に女性スタッフの悲鳴が上がる。

一弥はオフホワイトのモーニングに薄桃色のスカーフ、ベージュの革靴。

いつもツンツンとワックスで跳ねさせた髪は、さらりと自然に流されている。


王子がいる、王子が。


私や華穂様の服装チェンジとは比べ物にならないぐらいの変わりぶりである。


デビュー当時から一弥のイメージは黒。

ロックでヤンチャなイメージを徹底させている。

それこそ先日のパーティのような公の場所でもそのスタイルを崩すことはなかった。


「じゃーん、びっくりした?

俺、実はこういうのもけっこう似合うんだよー。」


周りの反応に一弥はいたずらが成功したかのように自慢気だ。


「どう?かっこいいでしょ??」


にっこり微笑みかけてくる一弥は殺人的な魅力だ。

白一弥の衝撃で主人公バリアが効かなかったのか、華穂様は頬を染めて『かっこいいです・・・・。』呟いている。

私はゲームでこの姿を見たことがあるので周りほど衝撃はなかったが、それでも心臓がバクバクしている。

やはりゲームではなく本物は心臓に悪い。


「唯ちゃんはどおー?」


「大変素敵だと思います。今まで見たことのない皇様のお姿にファンの方はとてもお喜びになるでしょう。あぁ、スタッフの方が呼ばれてますよ。」


「一弥でいーよ。じゃあ頑張ってきますか。」



次の撮影は午後の穏やかなコーヒータイムを演出しているようだ。

白い丸テーブルのセットに腰掛けて優雅にカフェオレを飲む一弥。

背景は青いがあとでバラの咲いた庭やテラスなど服装にあった背景を合成するのだろう。


今回新商品は苦味の強いブラックとカフェオレ2種類出す予定なので、シンプルに白と黒で分けたのだろう。

白い一弥を出すだけでも話題騒然間違いなし。

よく事務所のOKが出たものだ。



撮影が終わって一弥がこちらに戻ってきた。


「お疲れ様。

一弥くんは何を着ても絵になるなぁ。今回のCMもいい出来になりそうだ。」


撮影が再開され華穂様のところに戻ってきていた裕一郎様が一弥を労う。


「ありがとうございます。

フェリシテさんのCMは知り合いにも評判がいいんで、俺も毎回撮影が楽しみなんです。」


目上の方と話す時はしっかり話すらしい。


「もしかしたらうちの社長から話があったかもしれませんが、今度ドームでコンサートをしますんで、よかったらお嬢さんと執事さんと来てください。

チケットは送っておきます。」


「あぁ、ありがとう。楽しみにしているよ。」


「じゃあ華穂ちゃん、唯ちゃん、ふたりのお陰でいつもより更に楽しい撮影だったよ。ありがと。

ライブで会えるの楽しみにしてるから、またね!」


以外とあっさり解放されたなと思っていたら、屋敷に戻った頃にまたメールが来ていた。



『今日はありがとう。

CMオンエア始まったら、流れてる歌はふたりの為に歌った歌だから、それ聞いて俺のこと思い出して。

今日のスーツの唯ちゃんも良かったけど、ライブではおしゃれしてきてね。

また妖艶な唯ちゃんが見たいなぁ ー 一弥 ー』



裕一郎様がいたので控えていただけらしい。

一弥は一弥だった。



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