表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/252

221

ハムとチーズとレタス、トマトの挟まったクロワッサンサンドにパクリとかぶりつく。


あー、おいしい。


食べ物を口に入れたのも昨晩ぶりだ。

疲労からあまり空腹は感じていなかったが、こうして口に入れると体がカロリーを要求しているのを感じる。



「話を聞こう。」



私と同じようにクロワッサンサンドを手にしていた流が、それを置いて促す。

その眼差しは真剣で、すでに何か知っているのではないかと思わせる。


私もクロワッサンサンドを置いて、立ち上がり、誠心誠意気持ちを込めて頭を下げる。



「どうか、華穂様と空太様を救ってください。

私だけではどうにもなりません。

流様のお力をお貸しください。」



沈黙が落ちる。



「頭を上げろ。」



その言葉に顔を上げると、流は困惑したような顔をしていた。



「どういうことだ。華穂と桜井何があった?

お前のその格好もそのせいか??」



流に源一郎様が戻ってこられてからの出来事を説明する。

ゲームの知識ではなく、平岡唯わたしとして見てきた範囲で。



「おそらく、空太様は源一郎様により誘拐されたのではないかと・・・・。

裕一郎様、空太様ともに安否は不明です。

華穂様は高良田家唯一の直系として身の安全は確実でしょうが、このままでは・・・・」



私の説明を聞き終えた流は大きくため息をつくと両手を組んで考えこんだ。



「高良田源一郎氏か・・・・・・・・。」


「はい。流様は面識が?」


「まだ未成年の頃何度かパーティーでな。

もっとも話していたのは俺ではなく父だったから、俺は直接話をしたことはない。

ただ・・・・・・・・それでもすごい人だというのは感じたな。

その場にいるだけで肌がピリピリするような存在感で、名実ともに偉大な方だ。

経営手腕も申し分ない。俺が経営を学ぶのにも何度もその名を目にしたな。」



一流の経営者である流の口から語られる源一郎様の存在に、改めて敵の大きさを知る。

それでも、どんなに相手が強大でも負けるわけにはいかない。



「ここ最近で何か高良田グループに変わった動きありましたか?」


「いや、少なくとも対外的には特にいつもと変わりないな。」



・・・・・・・・ん?



「流様はなにか情報を掴んでいらっしゃったから、紫乃様の電話であんなに急いで戻って来てくださったのでは・・・??」



不思議に思って問いかけると、今度は流の方がキョトンとした顔をする。



「いや?源一郎氏の件は初めて聞いた。」



え?じゃあどうして・・・・・・・??



「俺はお前が相談に来ていると聞いたから帰ってきただけだ。

礼儀正しいお前が事前に連絡もなく家で待っているという状況ならば、よほどのことがあったと思うのが当然だろう。」



さも当然といった風に言われて一気に顔が熱くなる。

『相談がある』たったそれだけのことで、そこまで急いで帰ってきてくれる。

状況を推察して仕事を置いて駆けつけてくれる。

流が私のことをとても大切に想ってくれているのかわかって、心臓の音がうるさく感じるくらいにドキドキし始める。

席から立った流がこちらに近寄り頬や肩に触れる。

そっと壊れ物に触れるような優しい手つきに、ますます鼓動が速くなる。



「服はあちこち擦れているが、お前自身に怪我はないようだな。」


「は、はい。ちょっと屋敷を出るときにロープで擦ってしまっただけなので・・・・」



“心底ホッとした”という安堵の眼差しにドギマギしてしまい、余計な口を滑らせる。



「ロープ?」


「あ・・・・・・・」



流の眉がピクリと動く。

心配をかけると思いどうやって屋敷から脱出したかは説明していなかった。



「先ほどの話の中にロープなど出てこなかったが?」


「いや・・・・その・・っ」



りゅ、流の顔がこわいっ!



「お前、まさか縛られてたんじゃ・・・・っ!!」


「してませんしてません!!縛られたりなんて全くしてません!!!」



変な方向に想像を暴走させる流を慌てて止め、しぶしぶ脱出した時のことを話す。


話を聞き終えた流はため息をつくとそのまま強く私を抱きしめた。



「心臓に悪い。

あまり無茶をするな。

華穂を助けたい気持ちはわかるが、お前に何かあったら俺が平静でいられない。」


「・・・・・・・・申し訳ありません。」



心底心配してくれているのを感じて素直に謝ってしまう。

背中に回されていた手が外れ、その手で頭を撫でられる。



「1人でよく頑張ったな。

よく俺のところまでたどり着いた。

あとは俺に任せろ。

華穂も桜井も高良田社長も俺が救い出してやる。

だから、お前はここで吉報を待っていろ。

すぐにお前が笑っていられるようにしてやろう。」


「ありがとう・・・・ございます。」



流の言葉に、暖かい手に、目頭が熱くなる。

滲む涙を見られないように、額を流の胸に押し付ける。

そんな私の頭を、流はいつまでも撫で続けてくれた。

ちょ、ちょっとは甘さ復活できたでしょうか・・・・。

あまり更新できずに申し訳ありません。

次回は拍手お礼交換の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ